永遠の二度寝 -のび太先生から学ぶ、のんびり人生- #038
ある日妻から、真剣な顔で相談された。
「最近二度寝が足りてないって気づいたのよ。人生の楽しみが減ってる」
妻によると二度寝は、何より幸せらしい。
われわれは毎朝早く起きて公園をウォーキングしているのだが、そのためここ最近二度寝が無くなっていて、物足りない、ということらしい。
それからは、寝ている妻の枕元にスマホを届けることが、大抵は早く目を覚ます私の朝のルーティンになった。
寝室にデジタルスクリーンを持ち込むのは、睡眠によくない。
職業上それをよく知っているわれわれは、スマホを寝室とは離れた、外の部屋においている。寝室内にはスマホもないし、時計もないし、目覚ましもない。
なのにどうしてわざわざ届けるのかというと、数分間隔でセットしたスマホのアラームで、妻が何度も二度寝するためだ。
私は妻に、二度寝をデリバリーしているわけである。
「『まだ寝られる〜』、と思いながら寝落ちする時ほど幸せなことはないから」
それが妻の一番の幸せなのか、と考えると、なんだか妻のことがよくわからなってくるのだが、まあそういうことならと、私は毎朝せっせと目覚ましを持っていくのである。
ちなみに、二度寝している時間はほんの数分でいいらしく、何度か二度寝をくりかえしたら、起こしていいようだ。また寝落ちする瞬間が、一番幸せだから、寝ている時間は関係ないという。
「私は寝るのが好きすぎるわけ。ああ、もう起きなきゃと思うと地獄だから」
「うん、それで二度寝は幸せってこと?」
「そう、何度も二度寝して、その幸せを繰り返すことで、起きる苦しみを遠ざけてんの」
「それ…効果あるの?」
「ないよ。むしろ起きる時の苦しみが増幅してるから」
そう、妻はたまにちょっとバカなのである。
妻は昼寝も大好きなようだ。
「のび太好きなんだよね。のび太の歌知ってる?『ひーるはおひるね、よはよるね〜』だよ。最高だよね」
歌の部分だけでなく、前奏から間奏までのいろいろな楽器のメロディーを、妻はひとりノリノリで歌い出す。妻はたまに歌っているから、私も覚えてしまった。
私もベース音などを口ずさんで担当しつつ、歌詞を調べる。
「学校いっても、机がマクラさー」
妻は続けて言う。
「最高の歌だね。人生の応援歌だから」
私は、どら焼きでも食べようかな、と思いつつギロ(打楽器)の部分を口ずさむのである。
(注1)
妻は保健師(看護師)、私は精神科クリニックのリハビリ施設に勤める心理職である。
健康指導をしているわれわれは、スマホ(デジタルスクリーン)も二度寝も、睡眠にはよくない、と知っている。しかし、二度寝の幸せは、何物にも代えがたいのである。
(注2)
のび太君の歌のタイトルは『のんきなのび太くん』(作詞:ばばすすむ/作曲・編曲:菊池俊輔/歌:小原乃梨子)という。
いろいろ失敗したって、くじけず、あせらず、あきらめず、のんびり行こうよ。一生一度の人生さ。そのうちいいことあるもんだ。ってのび太は言っている。本当にそうだよな、と私も思う。
毎日いろいろあっても、のんびり行きましょう。
たまに二度寝でもしながら、たまにつなまよ日記でも読みながら。
(追記)
「みんな苦しい時は、これ聞いたらいいと思うよ。これを流せばいいのに、街頭で。うちの職場の電話の保留音もこれにしてほしい」と妻。
2023年12月19日執筆、2024年1月4日投稿
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