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「氷を作っただけなのに」の話

今日のうちに息子に伝えなければならない……
これだけは、何としても。

「今朝……『こおりばしら』とか言ってたけどさ。アレ……
『つらら』って読むんよ……」

「えっ!お母さん、知らんかったん?」

「くっ……違う!」


忘れてたんだ……
そして、思い出した。


その読み方恐怖を。


この話をするにはまず
我が家の冷蔵庫について語らねばなるまい……

Fujitsu
ER-F34E(H)
製造年月 1999年

つくねはモノ持ちが良いので……
モノから愛されるので……

すごいじゃろ?
世紀末……
前世紀なんよ。

四半世紀、お勤めになっておいでだ。

冷凍庫は上側にあり……
氷は製氷皿に手ずから水を注ぎて作る。

かっちゃんは屋根職人。
暑い中、更に熱い屋根の上でお仕事をしますので、でっかい水筒に氷をたんまりと入れて毎日持って行く訳だ。

氷をたんまり使った後は作らねばならない。


かっちゃんは雑なおおらかな人なので……

製氷皿にすごい勢いで水を

バッシャーっ!

水がしたたりまくる良い製氷皿びっしょびしょ!!

それを何の躊躇もなくセット!


うはぁ!

そんな事したら……
そんな事したら……

あっちもこっちも……
カッチカチのガッチガチに……


なってしまうじゃろうがぁぁぁーーーっ!!


しかし気弱人間つくねは言えなかった。

(まー……言っても仕方なかろうな。仕事以外での繊細な作業とか、かっちゃんには無理に決まってらあ)


果たして冷凍庫内はガッチガチに固まりまくって、その都度

(まー……そりゃそうなるわな。自分以外の人間と暮らすって……こういう事よな、フッ)


と思っていた……


そんなある日の朝。

「何か……冷凍庫がガッチガチに凍っとるよ〜」

と、かっちゃん。


「え……うん」

今更かい?
初お目見えの感じで言うのかい?

「そりゃまあ……あの感じでビッシャーしてたら……こうなるよなあって」

「えぇ〜?気づいてたら言ってよ〜」

「かっちゃんには繊細な作業、無理よなあって」

「えぇ〜?何でそんな、いけずな事言うの〜?」


そしてまたある日の朝。

つららが出来てたんだ……
冷凍庫内に。  

「ふっ……ふっふっふ……豪雪地帯かな?」


そこでつくねは発見したんだ。

伝説の武器……

アイスロッドを。 



すぐさまかっちゃんにラインを送らねば!。


そして、息子に報告。

「見て〜、かっちゃんが……」

「うん」

こおりばしら・・・・・・だって!」

「ふふっ……鬼滅の刃みたいじゃな」


数時間後。

「はっ!こおりばしらじゃねえ……アレは……つららだっ!」

うわあああ!
恥ずかしい!!

何でそんな事を忘れられる?

鬼滅の刃にハマってたせいかな……

あー……
息子が家に帰ったら、正しい読み方教えてあげんとな。

息子とかっちゃんがほぼ同時に帰宅した。

「ただいまー」
「おかえりー。あのさあ……朝、こおりばしらって言ったけど……アレ、つららって読むからな」

「えっ?お母さん、知らんかったん?」

「いや、何か忘れとって!」

「やーい、知らんかったんじゃ〜」
「かっちゃんこそ、絶対知らんかったじゃろ!」

「し……知ってたよ!」
「嘘じゃな!スマホの予測変換で出たんじゃろ!」

「し……知ってたよ〜」

「お母さん、そこまで分かってるなら、かっちゃんが知ってた事にしてあげたら?」


「た……確かに!」

つくねったら、何もかんも間違えて……




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