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「なつやすみのしくだい〜中一息子、読書感想文編」


「そういや中学生は読書感想文あるん?」

数日前、息子に声をかけた。

「あるよ。何をどうしたらいいんか全く分からん」

と言ってオススメ図書やら書き方の指南書的なプリントを見せてくれた。


「おぉー……瀬尾まいこ、東野圭吾、住野よる、辻村深月『ハケンアニメ!』とかもありなんじゃ……」

我が書棚を探す。
瀬尾まいこ、あったよな?
この感じなら
原田マハとか森絵都とか原田ひ香とか……

あー……
文庫は売ったな。

ふと目に留まる一冊の本。


いや……
息子は本は、ほぼ読まないし、大人向け過ぎるか?
まあ、取り敢えず勧めてみよう。

「辞書を作る人々の話なんじゃけど、面白かったよ。君にはちょっと難しいじゃろうか?」

息子はパラパラっと数ページ読んで

「読んでみるわ」

次の日の夜。

「面白いのは面白いんじゃけど、なんか家での話とか始まった」

「あー……そこで繰り広げられる風景やら恋愛模様やら、私はそれも楽しく読んでたけど、あんまり興味ないんじゃな……」


知ってんだぜ?
こないだ暑い中、ウッキウキで帰ってきて

「今日は誰と遊んでたん?」
「へへ……今日はなー……Nちゃん!」

Nちゃんは付き合って4ヶ月の息子の彼女。

「マジでっ!?やるな~!ヒューヒュー!」


自分の恋はよろしくやってんのに。
本の中の恋には興味ありませんてか。

まーそりゃそーか。
ウチの中一男子はそんなもんか。

「100ページ読むの8時間くらいかかった」
「あー……そりゃしんどいな……」


うーむ、路線変更した方が良いかもな。

そこで私は一冊の本をカバンから取り出した。

舟を編むは……
息子には厳しかろうな、と
スキル「図書館」を
再び入手したつくねはコッソリ借りてきたのだ。


「お笑い芸人の田村さんて人が中学生の時にお父さんから『解散!』って告げられてホームレスになるんよ。で色んな事があって周りの優しい人に助けられながら兄弟で家を借りて……って言う話」

「何それ!楽しそう!」
「読みやすいし感想書きやすいかなーと」
「これにする!」

次の日の夜。

「半分くらい読んだよ!」
「どうだった?」
「読みやすい!」

次の日の夜。

「どんなー?」

息子がぴったりくっついてきた。
 
「生きててくれて……ありがとう」

な……泣いとる!

「や……分かる。私も泣いたもん、確か」
「家族が解散せんで良かった……」
「ほんまなぁ……」

しばらくして落ち着いたようで……

「何から書いたらいいんか分からん」
「んー……いきなり書き出すのはなー」
「タイトルも『〇〇を読んで』とかダメなんよー」
「そりゃ厳しいな……心に残った言葉をピックアップして、それについて思った事を書きとめといて……それを組み合わせるとか」
「うーん……」

「例えばテーマとか作るんなら『これからの……新しい家族のカタチ』とか……今まで私は家族とは血のつながりがあって一緒に暮らしている人が家族だと思っていたけど、田村少年を支えた優しい人達ってもう家族なのでは……みたいな」

「何それ!すげぇイイ!」

「あっそう?もしくは『本当の家族とは』とか……今までいるのが当たり前に思っていた家族。実はそれは全く当たり前ではなく、色んな奇跡が集まって出来上がっているモノで……解散して再び兄弟で暮らし始めた時に感動して……とかさ」

「めっっっちゃイイ!すごいなお母さん!」
 
「えへへー」

そんなこんなしてるとかっちゃんが帰ってきた。

「頑張ってるね~。何だっけタイトル……」
「ホー……」

「ビンボー中学生!」



「すごい……すごい違う」
「何か……可哀そう……」
「何だったっけ?」
「ホームレス中学生」
「あ〜惜しい!半分正解〜!」
「惜しくないよ」
「惜しくはないな……」
「えぇ~?50点でしょ?四捨五入したら100点でしょ?」


ズコーッてなった夏の夜。















 

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