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「禁断のセリフ『そんな風に育てた覚えはありません』を使う時が来たか?」の話
私と彼の間に流れる時間が断絶されたかの様であった。
(ちょ、待てよ!)
(オィィーーー!!)
(もういいぜ!)
(ライフはゼロよ!)
色んな人の色んなツッコミが頭に浮かんでは消え浮かんでは消えて……
どれも形をなさないまま、彼の時間だけが進んでいくのであった。
つくねの息子は中学一年生。
いつだったかな?
「お母さん、〇〇はオシャレな服が欲しいです」
「やーん、ナニソレ素敵な!任せろ、あたいに!」
私は持てる力を総動員して
安く無難な量産型のええ感じの服を
ネットやリアルで手に入れた。
「こんなんでどうでっしゃろ?」
「おぉー……すげぇイイ!」
フフフフフ……
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こないだFさんとこで宴した時にFさん直々に
「〇〇君、オシャレじゃな!服どこで買っとるん?」
って聞かれたもんねー!
「エヘヘ……SHOPLISTのレディースが息子にちょうどいいサイズなのでそこで買ったんよー」
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ほかにも
「クシ買ってきてくれん?」
と頼まれたり
「ニキビどうやったら治るかなあ?」
と尋ねられたり。
(見た目に気を使うようになった……中学生らしいなぁ……成長したのだね……)
感慨深いものがございます。
ここんとこ急に寒くなって肌が乾燥するのは私だけではなかったようで
「お母さんの化粧品借りるよ〜」
とつくね愛用のオールインワンジェルを顔に塗り塗り。
そして……
「何か手がベタベタする」
「まあ、そういうもんじゃて」
そして……
つくねはそこで目を疑うような光景を目の当たりにする!
息子はローションティッシュを手に取り
手をフキフキすると……
ポイっ。
し……
し……
信じられん!
貴様ァァァ!
道明寺か!?
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(こんなのが公式であったとは!変わらぬ皆が嬉しい!ちなみにつくねは西門さん派だよ!)
ソヌ・ファンか!?
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(最初は箸にも棒にもかからない鼻持ちならない奴だったのに……途中からの巻き返しがすごいぜ!?すごいんだぜ!?)
マリー・アントワネットか!!?
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(パンがなければお菓子を食べれば……って彼女、言ってないって!?マリー、ソーリィーーー!!濡れ衣っ!!)
全く……
てめぇの血はなに色だーーーっ!!
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ソファの隣のごみ箱の縁にファサッとひっかかり
エアコンの風に揺れるローションティッシュ。
(ゴミ箱に完全に入ってはおらぬ……ど……どうする?)
オールインワンジェルを少し吸収した後
ぐしゃぐしゃにされる事もなく
綺麗な形のままにたなびく姿は
さながら
牧野つくし。
コ・ウンソン。
ジャンヌ・ダルク。
つくねは……
どうする事も出来ぬまま立ち尽くす以外術はなく。
「お母さん、今日送って〜」
現実に引き戻される。
「……あっ、うん」
我ながら間の抜けた声……
それも仕方あるまい。
嗚呼、悲しみのローションティッシュ。
小一時間、君の運命を嘆いても?
帰宅すると。
かっちゃんが既にその上からしこたまゴミを投げ入れており、彼の人の影も形もなくなっていた。
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