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『特攻服少女と1825日』(比嘉健二・著)

 あなたは、“特攻服”をご存じですか。
 そして、どのような印象、思い出をお持ちですか。

 青地の表紙に、雑誌『ティーンズロード』を手にする特攻服を着た少女が描かれた『特攻服少女と1825日』(小学館・刊)が書架にありました。
 懐かしい(?)雑誌、そして特攻服姿が気になって、手に取りました。

  青年漫画や学園ドラマに登場する「ヤンキー少女」として、あるいはドキュメンタリーやニュース映像にモザイクつきで登場する「非行少女」として――
 これまで、「キャラクター」としてデフォルメされて描かれて来たレディースたちの姿をフラットでありのままにとらえた、懐かしいのに新しい、唯一無二のノンフィクション作品です。
(略) 原稿の中には、当時の喧噪だけでなく13歳でで地元のチームに入り2年で総長に登り詰め、テレビや週刊誌でも特集が組まれるほどの知名度を得るもチームを破門させられたたすえこや歴史・規模とともに日本一を誇る『スケ連』を率いたのぶこほか、当時の誌面を飾った人気レディースたちの「その後」も描かれます。
 彼女たちのいまの姿からは、著者が『ティーンズロード』の編集を通して「はみ出した少女」たちに提供した居場所が、またそれを作ろうとする魂が、いまに引き継がれていることが伝わって来ます。
 当時を知る人もそうでない人も、「はみ出た」経験がある人ならば必ず心の柔らかい部分に触れる箇所がある、そんな作品です。

 本書は、第29回小学館ノンフィクション大賞受賞作で、選考委員が大絶賛して受賞に至った作品だそうです。
 著者は、表紙に描かれていた雑誌『ティーンズロード』の初代編集長です。

 雑誌『ティーンズロード』は、1980~90年代に“レディース”という特異な世界を取り上げました。
 本書は、その創刊から人気となり休刊までを回顧した内容となっています。

 こうした読者の肉声への反応やキャッチボールは、今ならインターネットの世界で行われているが、それをパソコンやスマホも普及していなかった時代に、雑誌というアナログの世界で展開できたことがこの『ティーンズロード』の醍醐味かもしれない。

 そして、雑誌に登場したレディース、総長のことを綴っています。

 レディース、女番(スケ番)、ヤンキー、暴走族……
 雑誌『ティーンズロード』が発行されていた1980~90年代、当地の中学生にもいました。
 本書に登場する「三河遠州女番連合(スケ連)」の発足は、隣接の市でした。そこに加わる女生徒もいました。
 その時の中学生、出来事…、思い出しながら読みました。

 まともな忠告なのか恐喝なのかは微妙なところだが、これはある意味「スケ連」が生活指導の教師のような役割であり、受け取り方によれば“正しいこと”をしていると捉えることもできると思った。

 “あの時代”を懐かしがったり、美化したりすることはできないが、彼女達がいた“社会”を知り、その“思い”に触れることは、今の子供達にも大切なことだと思います。

  すえこはあの当時の自分たちと比べて、今の問題のある少年少女はどこか孤立しがちだと警鐘を鳴らしていた。
「私たちの時代のヤンキーはたとえ学校や家庭でうまくいってなくても暴走族やレディースという“居場所”があったんですよ。(略)」


 読みやすいとは言えなかったが、気になる見出しから、その出来事や人について読むとよいでしょう。
 “あの時代”に子供だった保護者が、興味をもって読める一冊だと思います。いかがですか。

   目次

プロローグ
第1章 破門された4代目総長
第2章 『ティーンズロード』は偶然から生まれた
第3章 日本一のレディース「女連」と初代会長のぶこ
第4章 悪書問題とSTOP! ザ・シンナー
第5章 トラブル、ハプニング、忘れられないあの夜
第6章 レディースの歴史 フケ顔から“可愛い”へ
第7章 みんな居場所が欲しかった
第8章 3大総長集結新年号と終焉の時
第9章 すえことの再会
エピローグ
あとがき

【関連】
  ◇小学館ノンフィクション大賞【公式】(NEWSポストセブン)
  ◇第29回『小学館ノンフィクション大賞』選考結果(pdf 小学館)
  ◇「特攻服を着た少女がシャコタンから降りてきて…」“伝説の暴走族雑誌”元編集長が語る、“日本一のレディース総長”との衝撃的な出会い(文春オンライン)

  ◇『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(中村すえこ・著/ミリオン出版・刊 2008/9/2)

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