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『高校生と考える21世紀の突破口』( 安藤宏 他・著)

 5月の成幸読書で届いた『高校生と考える 21世紀の突破口(桐光学園大学訪問授業)』(左右社・刊)です。
 本書は、2004年から桐光学園中学校・高等学校が行っている「大学訪問授業」の講義がまとめられています。桐光学園のホームページには、次の説明があります。

 「大学訪問授業」は、多様な学問分野における第一人者の先生方を招き、大学で実施されているのと同じ授業を体験できるユニークな授業。土曜の4時間目に年間20回実施されます。
 先生方の熱く、真剣な授業から、参加した中学、高校の生徒達は大きな刺激を受け、「もっと勉強がしたくなった」「大学で学びたいことが見つかった」という反応はもちろん、将来就きたい職業を意識し始めたり、大学の学部・学科選択を真剣に考え始めるなど、進路選びに大きな役割を果たしています。

 新型コロナ禍を過ごす生徒達に、それぞれの講師が「今、伝えたいこと」「今、考えたいこと」を語っており、それが読みやすく述べられています。

 一人の講座が十数ページ、最後は生徒との質疑応答から1つ、そして講師への「わたしの思い出の授業、思い出の先生」の3つの質問

Q1 思い出の授業を教えてください
Q2 その授業が記憶に残っている理由はなんですか?
Q3 その授業は人生を変えましたか?

があります。そして「わたしの仕事をもっと知るための3冊」の図書名があります。
 講義は上部4分の3ほどで記され、下部には講義を補足する用語の説明や写真があり、専門的な話が分かりやすくなっていました。

   【危機の時代の必須教養】
 ウクライナ紛争、移民、気候変動等で混乱する世界—— 政治、生物学、法、人類学、文学、各分野の最先端で活躍する講師陣と考える、私たちと世界のこれから
 大学入試問題にも多数採用、論文対策としても好評のシリーズ!

 ウクライナ紛争、移民、気候変動、環境問題、食料危機、AI時代の到来。
 危機と停滞の時代に生きる私たちが身につけるべき視座とは?
 各分野の最先端で活躍する講師陣が、高校生に向けて語った全21回の講義を収録。

 気になる内容(章)、興味のある話題、講師を選んで読むとよいでしょう。
 もし、中高生が読むのなら、最初の田中真知氏の『「わからない」旅にでよう』から読んでほしい。

 そういう経験をすると、本当に「わかる」とはどういうことか、よくわからなくなりました。そう考えるようになったきっかけが「旅」でした。

 どのような旅に出て、どのような経験をし、そして何を考えたのか…。

 さまざまな分野の講師から、最先端の情報を聞き、そしてこれからを考えさせられます。
 若者にお薦めの一冊です。

  目次

はじめに  桐光学園中学高等学校校長 中野浩
第1章 答えのない世界で他者とつながる
  「わからない」旅にでよう  田中真知
  わかりあえなさをつなぐ言葉たち  ドミニク・チェン
  「はみだす」ことを学ぶために  松村圭一郎
第2章 パンデミックと戦争のいま
  ロシアのハイブリッド戦争  廣瀬陽子
  ウイルス克服のための国際協力  詫摩佳代
  公衆衛生という仕事  三砂ちづる
  社会学と移民が教えてくれたこと  髙谷幸
第3章 新しい消費で未来を変える
  キッチンの窓を開けて 食の未来を探しに行こう  枝元なほみ
  ファッションから見る現代社会  米澤泉
  変わるお金、消えるお金、つながるお金  中山智香子
第4章 言葉と想像力を鍛える
  太宰治 文学の魅力  安藤宏
  脳から見る言葉の力 なぜ紙の本が人にとって必要なのか  酒井邦嘉
  批評は楽しむために  北村紗衣
第5章 AIに代替されない思考法
  「本当の自分」なんてどこにもいない  夏目房之介
  「考える」ことのレッスン  重田園江
  まなざしのデザイン モノの見方を変えるとは  ハナムラチカヒロ
  自分という牢獄から脱獄するために  住吉雅美
第6章 自然科学で人間をみつめる
  私たちVS彼らの生物人類学  内田亮子
  コウノトリが帰ってくる田んぼへ 保全生態学と市民科学  鷲谷いづみ
  生物はなぜ死ぬのか  小林武彦
  思春期とは何か ゴリラからの提言  山極壽一

【関連】
  ◇大学訪問授業(桐光学園 中学校・高等学校)
  ◇左右社 SAYUSHA 検索結果「高校生と考える」


 図書と一緒に届いた冊子『清水克衛の成幸読書』の解説にある「読み合わせにおススメの本」は次の本でした。

  ◇『般若 仏教の智慧の核心 』(森政弘・著/佼成出版社・刊)
  ◇『坐らぬ禅』(ひろさちや・著/佼成出版社・刊)
 一冊目は、先月の成幸読書の選定本にした『和するこころ』、朝比奈宗源著『覚悟はよいか』、横田南嶺著『臨済録に学ぶ』を合わせ読んでいく中、最後に、このロポット工学の森政弘先生の最新刊を読んだ時、私、清水の中ですぺてがつながったと感じた本です。相反する二つのものを、一つ上の次元で合わせていく「二元性一原論」の考え方が、ストンと腑に落ちたんですよね。諸行無常のこの世界で、直感から動くことをつかめる一冊です。
 二冊目は修行した禅僧としてではなく、私たちと同じ「禅の素人」として生涯をかけて、禅の素晴らしさをひもといてくださった、ひろ先生の最後のメッセージです。それが「馬鹿になるな、阿呆になれ!」。私たちも、仕事の中で、生活の中で、この「坐らぬ禅」を活かしていきましょう。


【読書のすすめ「成幸読書」】
 ☆最近紹介した本
  ◇『小さき者たちの』(松村圭一郎・著)(2023/03/05)
  ◇『不思議の国 ニッポン』(ヤマザキマリ・豊田有恒・著)(2023/03/29)
 *以前に紹介した本は、カテゴリー「読書のすすめ」から

  ◇成幸読書選定本
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