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『京都祇園もも吉庵のあまから帖 6・7』(志賀内泰弘・著)

 昨年末に、前作の『京都祇園もも吉庵のあまから帖7』(PHP文芸文庫)と『京都祇園もも吉庵のあまから帖6』(PHP文芸文庫)を手にしていました。
 それぞれ紹介するのがよいでしょうが、最新刊も早く読みたいので、2冊を一緒に紹介します。

 それぞれの図書紹介は、

【第6巻】 京都、祇園の片隅にひっそりと佇む「一見さんお断り」の甘味処「もも吉庵」。
 店を営むのは、元芸妓のもも吉。メニューは「麩もちぜんざい」のみ。この一風変わったお店に、今日も「わけあり」のお客が訪ねてくる――。
(略)
 女将であるもも吉の、辛口ながらも温かな言葉が、悩める人々の心に一条の光をもたらしていく感動の人情物語。

【第7巻】 京都・祇園にある甘味処「もも吉庵」。
 女将のもも吉の人情の機微に通じた言葉は、悩みを抱えた人々の心の傷を癒していく――。
(略)
 花街に暮す者と、訪れる者の人生の交錯を、情趣豊かに描く連作短編集。

とあり、もも吉の“言葉”を早く聴きたくなります。

 そんなもも吉に、しばしば悩める者が相談に訪れる。その助言はやさしいばかりではない。時には耳に痛い苦言もある。だが、打ちひしがれた人々には、その言葉の一つひとつを「金言・至言」と受け止め、明日への希望を見出すという。

 もも吉の言葉は、登場人物(相談者)に向けたものですが、読んでいるあなたにとっての「金言・至言」が隠れています。


 悩める者が相談に訪れる「もも吉庵」、そこで迎える「もも吉」は、

 上がり框を上がって、襖を開ける。
 店内は、L字のカウンターに背もたれのない丸椅子が六つだけ。カウンターの内側は畳敷きだ。もも吉が、
「おこしやす。お待ちしておりました」
 と、畳に手をついてお辞儀をした。
 銀鼠色で笹の葉の柄の着物。帯は金糸を織り込んだベージュ色で唐草の段模様、それにクリーム色の帯締めをしている。

と、季節に合わせた着物、相手の“こころ”を優しく包む着物(姿)で迎えます。

 【第6巻】の第一話では、女子高生 綾子が「冤罪を晴らす神社はありますか?」と訊ねます…。
  女子高生の心に秘められたものは…。
 第二話は、もも吉庵の角の席にいつもいる飼い猫“おジャコちゃん”の過去が…。
 ……
 相談者が抱えていた悩みを聞き終え、もも吉は

 もも吉は一つ溜息をついたかと思うと、裾の乱れを整えて座り直した。背筋がスーッと伸びろ。帯から扇を抜いたかと思うと、小膝をポンッと打った。ほんの小さな動作だったが、まるで歌舞伎役者が見得を切るように見えた。
あんさん、間違うてます

と言い、語り出します。
 その言葉は…。

 常連をはじめ登場人物の言動が、これまでの話、出来事に関わっており、それを知っている(読んでいる)と分かることがあります。
 けれども、一話ずつ完結した内容で、どこから読んでも“悩める人々の行動と心”に触れ、感じることができます。
 第6巻、第7巻はもちろん、これまでの作品どれもがお薦めです。

  第6巻 もくじ

第一話 少年の 痛みを癒し山燃ゆる
第二話 嘘つけば 幸せ来る祇園町
第三話 頑固者 御室桜も苦笑い
第四話 雷も 風も微笑む祇園祭
第五話 炎天に 願いを掛ける稲荷山
巻末特別インタビュー 著者・志賀内泰弘が、もも吉お母さんに祇園のパワースポットを尋ねる

  第7巻 もくじ

第一話 春浅し 焦がれし恋に忍ぶ恋
第二話 頑なな 心も溶かす金平糖
第三話 夢に見る 祇園の舞妓になりたくて
第四話 子育てに 悩む父あり夏燕
第五話 紅葉の賀 想い出滲むオムライス
巻末特別インタビュー 著者・志賀内泰弘が、もも吉お母さんと美都子に京都の老舗和菓子店を教えてもらう


【関連】
  ◇志賀内 泰弘(Facebook)
  ◇志賀内泰弘「京都祇園もも吉庵のあまから帖」シリーズ(PHP研究所)
  ◇『京都祇園もも吉庵のあまから帖』(志賀内泰弘・著)(2019/10/23 集団「Emication」)
  ◇『京都祇園もも吉庵のあまから帖2』(志賀内泰弘・著)(2020/10/04 集団「Emication」)
  ◇『京都祇園もも吉庵のあまから帖 4』(志賀内泰弘・著)(2022/08/24 集団「Emication」)

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