映画『ダウン・バイ・ロー』モノクロームの映像美と素敵な音楽と
ジム・ジャームッシュ監督のこの作品は1986年に公開され、彼の初期作品の中でも多くの人に愛される作品。
公開されてから35年も経って、やっと観ることができました。
どこを切り取っても絵になる映画です。
永遠に古さを感じることはない作品だと思います。
監督・脚本ジム・ジャームッシュ、撮影ロビー・ミューラー、音楽ジョン・ルーリー、1986年製作、アメリカ・西ドイツ合作。
映画のオープニングはロビー・ミューラーの美しいモノクロ映像と主演も務めるトム・ウェイツの「ジョッキー・フル・オブ・バーボン」です。
オープニングに続くのは、なんとも言えない雰囲気の、シンプルなストーリー。
刑務所で同じ房になったDJのザック(トム・ウェイツ)、ジャク(ジョン・ルーリー)、イタリア人のロベルト(ロベルト・ベニーニ)の3人が脱獄して、へろへろになって沼地をさまよった末に、カフェにたどり着く。
それだけなんです。複雑な人間関係も、脱獄のドキドキ感も全くありません。
ああ、人ってそんな感じ。そういうとこあるな。
と思わず見入ってしまい、時にはくすっと笑えるようなエピソードの積み重ねで成り立つ作品でした。
初めは刑務所の房にはザックとジャックの二人しかいません。娯楽もない。イライラして殴り合った後に、イタリア人のロベルトが3人目として入って来ます。
人懐こいロベルトは片言の英語しか話せないのですが、笑顔良しです。いかつい表情の2人におかまいなしに話掛け、そこから映画の雰囲気も変わります。
ロベルト・ベニーニの愛嬌、トム・ウェイツとジョン・ルーリーの存在感と表情がとても良かったです。
この刑務所内の3人のひとつひとつのエピソードは、どれも本当に人間くさくて面白いです。
刑務所を難なく脱出できた3人ですが、道に迷って、ボロボロの空腹状態で道沿いのカフェを発見。
カフェの店主ニコレッタはイタリア出身。ロベルトとあっという間に恋に落ち、朝食の時に2人は音楽をかけて幸せにダンス。
ロベルトは留まりニコレッタとカフェで生活することに。ザックとジャックまだ先に進みます。
そして、ラストシーンへ。
「カッコいい」という表現しか思いつかないラストです。
刑務所で知り合った3人は、人生のとんでもない時期に一緒に行動することに。
詮索しない、余計な事は話さない、時には笑い合う、食べるものは分け合う、時が来たら解散。いつまでもつるまない。
期間限定の人と人の関係。でも、ちょっと相手を好きになっている。
「ダウン・バイ・ロー」とは、
刑務所のスラングで「親しい兄弟のような間柄」
エンドロールに流れるのは同じくトム・ウェイツの「タンゴ」です。
ピアノがチャーミング。