月夜のたま

映画が好きです。観た映画について書いています。新作も懐かしい作品も。

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最近の記事

京都みなみ会館の思い出

2023年9月30日に京都みなみ会館が閉館した。 旧館時代、映画が観たくて観たくて一生懸命観に行ったミニシアターだ。 京都の映画館では一番の思い出がある。なのに、この数年は近所の映画館に行ってばかりで閉館のニュースを聴いた時は不義理な自分を呪った。とてもさみしい。 娘が小さくて自分の時間が取れなかったとき、映画館に行けない私の映画愛は高まるいっぽうだった。 そんな時、みなみ会館の小さな駐車場に私は救われた。 前夫が娘をみているあいだに、車を飛ばして東寺横の駐車場に停めて

    • 映画『シークレット・サンシャイン』救いを求める魂は

      ずっと観たかった作品です。イ・チャンドン レトロスペクティヴにて鑑賞。 監督脚本:イ・チャンドン、2007年カンヌ国際映画祭女優賞チョン・ドヨン、2007年韓国映画。 シネ(チョン・ドヨン)は「夫を亡くし一人息子を育てるたくましい母親」ではない。土地に投資したい、と少女のような雰囲気で話したり、初対面の店主に頼まれてもいないのにインテリアのアドバイスをしてしまう。魅力的でもあるが、どこかあやうさを感じてしまう。 対するジョンチャン(ソン・ガンホ)は見たまんまの人だ。好意

      • 映画『コンパートメントNo.6』心の声を信じて生きる

        心が自由になるような愛あふれる素敵な作品でした。とても好きだったので2日連続で劇場に足を運びました。 監督脚本:ユホ・クオスマネン 2021年フィンランド・ロシア・エストニア・ドイツ合作 74回カンヌ映画祭グランプリ フィンランド人留学生のラウラ(セイディ・ハーラ)は、恋人の関心がもう自分にないことに気が付いている。大学教授の恋人は仲間に彼女を「友人」としか紹介しない。年上の恋人は知的で美しく、その仲間に自分は溶け込むことはできない。それでも彼女は恋心と憧れを手放すことが

        • 映画『ちひろさん』いま目の前にいるあなたを見る

          NETFLIXで配信されている『ちひろさん』は決してきらびやかな作品では無いけれど心を掴まれる場面がある。今泉力哉監督の作品を観るたびに私も少しだけ優しくなれそうな気がする。 原作:安田弘之「ちひろさん」 フードスタイリスト:飯島奈美 劇伴音楽:くるり岸田繁 主題歌:くるり「愛の太陽」 原作を未読のまま鑑賞した。どこかつかみどころの無いちひろ。映画はちひろをめぐる群像劇と言っていいのかもしれない。小学生のマコトとその母親のエピソードが好きだった。 ☆ 以下ネタバレします

          映画『ボーンズアンドオール』孤独な少女が求めたものは

          久しぶりにnoteを書いています。子供が独立して時間が経ち、私自身も一人の暮らしに慣れてきました。また少しづつですが映画の感想を書きたいと思います。お付き合いいただければ嬉しいです。 本作は『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督。2022年作品。79回ベネチア国際映画祭最優秀監督賞、新人俳優賞テイラー・ラッセル。 自分だけが人と違っている。こんなの世界で自分だけだ。マレン(テイラー・ラッセル)は抑えられない残酷な衝動ゆえずっと孤独だった。やっと出会えたリー(ティ

          映画『ボーンズアンドオール』孤独な少女が求めたものは

          映画『スモーク』ほろ苦くて美しく優しい

          アメリカの作家ポール・オースターの『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』が原作。 ポール・オースター自身が映画化に際し脚本を書き下ろしています。 脚本、演出、俳優たちの演技、音楽と全てが溶けあっていて、映画は総合芸術なんだと感じます。 ウェイン・ワン監督、ポール・オースター原作脚本、1995年製作、アメリカ・日本合作映画。 1990年のニューヨーク・ブルックリン。 タバコ屋を営むオーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル) 彼は毎日同じ時間に同じ場所で写真を撮影して

          映画『スモーク』ほろ苦くて美しく優しい

          映画『パターソン』ジャームッシュ監督が描くさりげない日常

          なにも起こらない日常を描いた作品です。 好きで何度も観ています。 アダム・ドライバーと愛犬マーヴィンの組み合わせがとても微笑ましい。 ジム・ジャームッシュ監督・脚本。2016年製作。アメリカ映画。 ニュージャージー州パターソン市で暮らすパターソン(アダム・ドライバー)はバスの運転手。 彼の朝は早く、妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして、コーンフレークを食べ、バスを走らせます。 帰宅後には愛犬マーヴィンと夜の散歩。 マーヴィンを待たせて、バーで一杯だけビ

          映画『パターソン』ジャームッシュ監督が描くさりげない日常

          映画『ダウン・バイ・ロー』モノクロームの映像美と素敵な音楽と

          ジム・ジャームッシュ監督のこの作品は1986年に公開され、彼の初期作品の中でも多くの人に愛される作品。 公開されてから35年も経って、やっと観ることができました。 どこを切り取っても絵になる映画です。 永遠に古さを感じることはない作品だと思います。 監督・脚本ジム・ジャームッシュ、撮影ロビー・ミューラー、音楽ジョン・ルーリー、1986年製作、アメリカ・西ドイツ合作。 映画のオープニングはロビー・ミューラーの美しいモノクロ映像と主演も務めるトム・ウェイツの「ジョッキー

          映画『ダウン・バイ・ロー』モノクロームの映像美と素敵な音楽と

          映画『くれなずめ』へらへらしてても。

          男子高校生のノリのまま最後まで走り切る作品なのかと思っていましたが、こんなにも心を持っていかれるなんて。 松居大悟監督が主宰する劇団「ゴジゲン」の舞台「くれなずめ」の映画化です。 「君が君で君だ」の松居大悟監督・脚本。主題歌ウルフルズ。2020年製作。日本映画。 高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集まりました。 余興を披露した後、彼らは披露宴と二次会の間の妙に長い時間を持て余しながら、高校時代の思い出を振り返りま

          映画『くれなずめ』へらへらしてても。

          映画『メランコリック』彼女と別れなくてはならない仕事。

          Amazonプライムビデオで観たい作品を探すとき、この作品が画面に現れても、暗いビジュアルの上に知らない監督の作品なので遠ざけていました。 今回、たかやんさんが「ツイッター」であっさりさっくりと「面白い」とつぶやいておられたのが観るきっかけとなりました。 観て良かったです。予想を超える面白さ。低予算の日本映画、がんばってます。 皆川暢二(プロデューサー・主演)田中征爾(監督・脚本)磯崎義知(俳優・アクションシーンの構成演出)の3名からなる映画製作チームでつくられた作品で

          映画『メランコリック』彼女と別れなくてはならない仕事。

          映画『天然コケッコー』ささいなことが急に輝いて

          娘がTSUTAYAでアルバイトをしていた時にレンタルしてきた作品です。登場する小学校1年生が可愛すぎて、「くるり」の主題歌が優しすぎて、娘も私もこの映画がとても好きでした。 今ではTSUTAYAは閉店して、店舗があったビルの前を通ると、ちょっとさみしい気持ちになります。 ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の三人目の夫、岡田将生が大人でもない子供でもない中学生の役どころ。今回はAmazonプライムビデオで鑑賞しました。 くらもちふさこ原作、「リンダリンダリンダ」の山下敦弘

          映画『天然コケッコー』ささいなことが急に輝いて

          映画『BLUE/ブルー』あきらめられない大好きなもの

          ボクシングを題材にした映画が好きです。もう選手として先がない主人公、日本タイトルを狙う才能ある後輩、ボクシングに喜びを見つけたフリーター。もがきながらも夢を追いかけて行く姿が描かれています。 監督・脚本・殺陣指導、𠮷田恵輔。2021年製作。日本映画。 ボクサーの瓜田(松山ケンイチ)は誰よりもボクシングを愛していますが、どれだけ努力を重ねても試合に勝てずにいます。 一方、瓜田の誘いでボクシングを始めた後輩の小川(東出昌大)は才能とセンスに恵まれ、日本チャンピオン目前です。

          映画『BLUE/ブルー』あきらめられない大好きなもの

          映画『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』ニューヨークで夢を追う家族は

          アイルランドからニューヨークにやってきた家族の物語。温かな気持ちになる作品です。 監督ジム・シェリダン、脚本ジム・シェリダン、ナオミ・シェリダン、カースティン・シェリダン。2002年製作。アイルランド・イギリス映画。 E.T.が公開された年(1982)、ニューヨーク。 幼い息子を亡くしたジョニー(パディ・コンシダイン)とサラ(サマンサ・モートン)は、二人の娘クリスティ(サラ・ボルジャー)とアリエル(エマ・ボルジャー)を連れて、アイルランドからニューヨークへ移り住みます。

          映画『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』ニューヨークで夢を追う家族は

          映画『はちどり』ゆっくり自分を好きになる

          1990年代の韓国の少女の物語。大好きな先生との交流や家族との関係を丁寧に描いています。 キム・ボラ監督・脚本。2018年製作。韓国・アメリカ合作映画。 1994年。韓国ソウル。14歳の少女ウニ(パク・ジフ)は両親と兄と姉の5人家族。集合団地で暮らしています。 餅屋を切り盛りする両親は自分らの生活のことで精一杯。とても子供たちの心に寄り添う余裕はありません。兄はストレスからか両親の目を盗んでウニに暴力を振るっています。 ある日、ウニの通う漢文塾に新任の女性教師ヨンジ(

          映画『はちどり』ゆっくり自分を好きになる

          映画『ニュー・シネマ・パラダイス』映画を愛するすべての人へ

          原田マハの小説「キネマの神様」の中に映画「ニュー・シネマ・パラダイス」が登場します。 この映画は過去に観ているのですが、有名なラストシーンは覚えていても、細部は忘れていました。Amazonプライムで再び観てみることに。 ジュゼッペ・トルナトーレ監督・脚本。エンニオ・モリコーネ音楽。1989年製作。イタリア・フランス合作。 1989年カンヌ国際映画祭審査員グランプリ。1990年アカデミー外国語映画賞受賞。 <ストーリー> 第二次世界大戦後、1950年代のシチリア。映画

          映画『ニュー・シネマ・パラダイス』映画を愛するすべての人へ

          映画『アンモナイトの目覚め』メアリーが選択した大切なこと

          抑えた色調の映像がとても美しい。静かに深く心に染み入る作品です。 フランシス・リー脚本・監督。マイケル・オコナー衣装デザイン。2020年製作。イギリス映画。 実在したイギリスの古生物学者メアリー・アニングが主人公です。 1840年代。イギリス南西部の海辺の町ライム・レジス。 メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は海岸の岩場によじ登り化石の採集を行う毎日です。 メアリーは父親の死後、13歳で魚竜イクチオサウルスの世界初の全身化石を発掘。その化石は大英博物館に展

          映画『アンモナイトの目覚め』メアリーが選択した大切なこと