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映画『アンモナイトの目覚め』メアリーが選択した大切なこと
抑えた色調の映像がとても美しい。静かに深く心に染み入る作品です。
フランシス・リー脚本・監督。マイケル・オコナー衣装デザイン。2020年製作。イギリス映画。
実在したイギリスの古生物学者メアリー・アニングが主人公です。
1840年代。イギリス南西部の海辺の町ライム・レジス。
メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は海岸の岩場によじ登り化石の採集を行う毎日です。
メアリーは父親の死後、13歳で魚竜イクチオサウルスの世界初の全身化石を発掘。その化石は大英博物館に展示されています。
しかし、当時のイギリスでは階級制度が厳しく、なおかつ女性が研究の表舞台に立つことは認められませんでした。
彼女の生活は苦しいままで、化石を採集しては観光客に土産物として売って生計を立てています。
他者との交流を避けて、母親とひっそりと暮らすメアリー。
ある日、ロンドンから来た化石収集家がメアリーが採集したアンモナイトを購入し、流産のため精神不安定となっている妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)を静養のため預かってほしいと頼みます。
シャーロットとの生活に戸惑うメアリーですが、徐々に心は通じ合い、友情と恋情が生まれて...
ケイト・ウィンスレットと「レディ・バード」「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のシアーシャ・ローナンの共演。
メアリーを演じた「タイタニック」「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレットは多作な俳優ですが、この作品ではほとんど笑顔を見せることなく感情を表現しています。
静かな波の音と鳥の声。
1840年代の自由とは程遠い時代。
多くの化石を発見しても評価はされず、毎日泥だらけで土産用の化石を採集するメアリー。
裕福な暮らしは与えられていても、夫からは人形のように扱われるシャーロット。
孤独を抱える二人が出会い、お互いに惹かれあう様子は自然でした。
作り笑いも、気の利いた言葉もない。
本能的に求め合う二人。
幸せな時間は短く、シャーロットはロンドンに帰って行きます。
その後、シャーロットに会いたい一心でメアリーはロンドンを訪れ
ある選択を迫られます。
「仕事」という言葉ではとても足りない、彼女の人生を懸けてきたものを手放すのか。
メアリーの選択は人として、とても尊い。
意志の強さと美しさに溢れた横顔を
忘れることができません。
メアリー・アニング(1799-1847)
独学で地質学や解剖学を学び、多くの化石を発見するが、論文発表や学会入会を認められなかった。
病気で亡くなる直前(47歳)、ロンドン地質学会は彼女を名誉会員に認定した。(映画パンフレット・矢島道子氏コラム欄参照)