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写真日記

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2023年4月の記事一覧

風化

風化

慣れは元々の感性を歪めてしまう。特別だと思えた景色も、察知できていた危機も、日に日に落ちる感度に従って風化して見える。捉え方を自ら変えなければ求める刺激に応じて高まる副作用に身を滅ぼすだろう。今の生活が退屈に思えたとき、快楽を得に行く前に一度近辺に散らばった風景を見直すことも大切だ。

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釘付け

釘付け

古くなったら次々と新しいものを建造するのは見映えの悪いものを避ける人が多いからだ。真っ白なガラス張りの建物なら良いと言うなら、それがいつまでそうあり続けるのか、そのためにどれだけの費用が必要なのかを問いたい。少なくとも錆朽ちても原型の分かるそれは我々の目を真っ先に釘付けにする。それを無価値と言い切るには無理がある。

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一服

一服

軽く腰掛けて一服するためだけに高価な椅子は必要ない。束の間を確保するために選り好みし、行程を確定している間はいつまでも期待を超えることができない。自分に枷をかけ、未達で終わるかもしれないと卑下していれば相対的により多くの想定外を感受することができる。そして絶望は金を払わずとも無限に手にすることができる。

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限界

限界

自分の限界を試すという経験は大人になってからは非常に貴重だと感じるようになった。時間、金、健康、仕事、家族や子供といった大事なものや存在が増えるほどそれらの保守を優先してしまうのは一般的であり、未来を見通せない社会が続けばその傾向は益々強くなっていくだろう。今の自分の限界を知らなければ歩みは遅く、想定内の風景しか見ることはない。今無理をしないことは二度と無理をできない体制を構築してしまうのだ。

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核心

核心

前後関係を見誤ると単純なことを理解できなかったり、間違って認識したりする。物事の核心をつくには知識の幅や深さも重要だが、時系列に無頓着であればどれほどの叡智があれど何も成果を得られない。よく多角的視野を以て現象を見極めろと言われるが、四次元的思考が身につけば至高な眼力すら低次元に成り下がる。

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自我

自我

子供の頃は成功を祈願したり、他人に頼ることになんの躊躇いもなかった。能力の有無以前に理想すら曖昧だったからだ。自我が確立していなかったせいか、周囲の動向を見て全てを判断していた。最近は神に祈ることも、他人に救いを求めることもめっきりなくなった。よく言えば自立。悪く言えば絶望。捉え方次第で精神状態に影響がありそうだが、少なくとも今の自分は自己責任であることが楽だと感じている。

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解釈

解釈

分かりやすいものはつまらない。簡単に理解したと錯覚させ得るもの、その解釈こそが至上だとして世に流布する、そして疑いなく受け取ることに価格相応の価値があると思うことは稀だ。だからこそ多様であることに値段がつく環境は貴重だと言える。各々が違う解釈をして、散らばった断片から共通項を見つけ、真理に近い解答を導いていく。社会規模では存在し得ない環境を自然の中では仮想体験できる。

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憧れ

憧れ

憧れているだけでは何も起こらないことはとうの昔に味わっている。経験から学んで積極的になれる場合もあるが、消極的であり続ける場合も確かにある。そんな抱えたままの荷物を見せると、行動あるのみだと励ましを受けるが、別に今まで抱えてきたことが報われることを切に願っているわけではない。終わることを恐怖しているのだ。永遠であることを願っているのだ。永遠を分け合うことができるならそうしたいが、一人で抱えたまま幕

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隙

太陽を追いかけている時は無心でいられる。少しでも隙があると思考が暴走し、勝手に期待して勝手に落ち込んだり、答えの無い問いかけに時間を費やしたりしてしまう。だから無心でいられる時は肉体的には辛くても、常に意気揚々としていられる気がする。逆に太陽に背いている時の感性は鋭敏かつ不安定で、危機に心躍ることもあれば焦燥していることもある。肉体の水準が高くなればなるほどより高く、遠くまで日を追いかけることにな

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敬意

敬意

見えているもの、聴こえている音だけを信じるようにしているが、それらがどのような経緯で今の形を成しているのかは感覚だけでは知り得ないのも事実として無視できない。秘境だと認識した森が実は誰かに護られていたなんてことは当たり前にある。ただ知るだけでは地を踏み荒らすだけの山行になってしまう。守り人への敬意だけを山から持ち帰り、日々の生活、今後の山行に反映させることが目指すべき山歩きであり、醍醐味である。

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虚勢

虚勢

他人と正面から競うことは苦手だ。上手くできないものから逃げ、誰もいない場所を探してまで虚勢を張り続けるのは、自分の弱さを受け入れる心の強度すら持ち合わせていないからだ。自分を騙すことでしか平常心を保つことができないのだから今更競争に割って入ることは自殺行為に等しく思える。成功体験が一つでもあればどれだけ強く在れただろう。

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窒息

窒息

同じ場所に留まり続けていると窒息とも形容できる症状が出現する。だから新規性を生きる糧として日々を過ごしている。真新しさにも程度があり、たまたま目に入ったものや、意識すれば見えるようになるものは自分の価値基準の範疇にある。認識可能なものは増えれば増えるほど開拓の余地は無くなっていくように感じる。一方で、どうでも良く見えるもの、避けているものと向き合った時に測ることができない価値と出会うことが稀にある

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融通

融通

山へ向かって進み出してしまった脚は止まらない。登らない方が良いと捉えることができる条件であれ、あれこれ制約を課し、融通を利かせて自由と言い張る。今の自分にとってはその山域内での自由より、内外を行き交う自由の方が優位と言えるだろう。その代償として尻に火をつけられたような行動を強いられることも、限られた時間内で目に焼き付く景色に対しての期待の前では自己肯定を生む触媒に過ぎない。

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足元

足元

競争に敗れ、思い描いていた進路から外れて以来、限られた選択肢の中で小さく丸まって生きていかなければならないのかと漠然とした絶望感に苛まれてきた。それも自然の摂理なのだと開き直ることができるようになったのは、足元ばかり見て歩いていた過去があったからだ。改めて今いる環境、今の生活、手に入れた愉しみを振り返ると、柔軟で、拡張性があり、自己生産ができるという点でかつて描いた無知の上の理想よりも崇高な領域に

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