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日記を活用して双極症と上手に向き合う方法
はじめましての方は、はじめまして。こんにちは。森国司(モリクニツカサ)です。
双極症やうつ病の方の励みになることができればと思い、活動しています。
この記事では、日記を活用して双極症と上手く付き合っていく方法について触れたいと思います。
はじめに
双極症(双極性障害)は、気分が大きく高揚する躁(または軽躁)状態と、深い落ち込みを伴う抑うつ状態が交互に現れる精神疾患です。この気分の大きなうねりは、生活リズムや人間関係、学業・仕事の環境へ深刻な影響を及ぼしやすくなります。こうした状況の中で、当事者が必要とするのは、自分の心境や変化を丁寧に観察し、気分の波に合わせたセルフマネジメントを身につけることです。その際、シンプルでありながら効果が期待できる方法として考えられるのが、「日記をつける」という行為です。
本記事では、双極症の特性からくる複雑な感情や思考パターンを日記によって「見える化」し、より安定したメンタルヘルスの基盤を築くまでのプロセスを解説します。
日記がもたらす「自己理解」の深化
1. メタ認知能力の強化と内面世界の整理
日記をつけることは、ただの出来事記録ではなく、自分の内面を客観的に見つめる「メタ認知」を高める手段として有用です。双極症では、躁状態に入ると過剰な自信や大きな計画が膨らみ、抑うつ状態になると強い自己否定や不安が押し寄せます。日記を通じて、こうした思考・感情を文字にすることで、自分と一定の距離を保ちながら観察できるようになります。日々の記録が積み重なれば、「どのようなパターンが繰り返されているのか」「どの時点で危険信号が出ているのか」といった内面世界の地図が明確化し、より全体像をつかみやすくなります。
2. 感情変化のトラッキングと予兆の把握
双極症のマネジメントには、症状が悪化する前に気づき、早めに対策をとる「予防的」な視点が不可欠です。軽躁から本格的な躁状態へ移る前や、抑うつ状態が深まる前には、小さなサインが現れることがあります。たとえば、睡眠時間の変化や、何に対しても関心が持てなくなるといった微妙な兆候です。日記に気分スケール、睡眠時間、その日の行動などを記録し続ければ、後で見返した際に「あのサインが出たら早めに対応すべきだ」という具体的な目安が浮き彫りになります。こうした情報は、主治医やカウンセラーとの相談にも役立ち、治療方針の見直しや生活改善の指針となるでしょう。
3. 極端な思考パターンからの脱却
双極症では、気分エピソード中に考え方が極端に偏りやすく、躁状態では「何でもできる」、抑うつ状態では「何も価値がない」といった極端な認知が生まれがちです。日記を書くプロセスは、これらの極端な思考を一旦外に出し、後から冷静な目で振り返る機会を与えてくれます。定期的に過去の記録を読み返すことで、そのとき抱いていた考えや感情と、後日落ち着いた状態での評価との違いが明確になり、思考の偏りを調整するきっかけとなります。こうして、気分に左右されにくい、柔軟で現実的な思考スタイルを築く土台が整います。
効果的な日記記録のための具体的方法
1. 多角的な情報の記録
「今日の気分=○」といった単純な評価にとどまらず、「睡眠時間」「食事内容」「運動量」「対人関係での特筆すべき出来事」「取り組んだタスク」など、心身両面や生活環境を含めた情報を幅広く記録すると、気分変動との関係性がより明確になります。こうした多面的なデータは、単なる感情の記録以上に、実際の生活改善へ踏み出す有益な材料となります。
2. 気分スケールや感情ラベリングの活用
気分を数値で表したり、「不安」「焦り」「罪悪感」「喜び」「安心」といった具体的な感情ラベルを用いることで、曖昧な不快感をより明確に定義できます。「憂鬱」と書くだけではなく、「未達成の仕事に対する自責が混じった憂鬱」と表現すれば、問題点を特定しやすくなり、対応策(目標設定の見直しや休息の導入)を考えやすくなります。
3. 定期的な振り返りと補足
日記は書きっぱなしではなく、一定の周期で振り返ることで本来の価値を発揮します。週末や月末に読み返し、新たな視点や気づきを追記することで、自己洞察がより深まります。躁と抑うつが繰り返される双極症だからこそ、異なる気分状態で過去を振り返ることは、自分自身を多面的に理解する貴重な機会となるのです。
継続と客観性を保つためのヒント
1. 自分に合ったペースで記録する
毎日長々と書く必要はありません。エネルギーが出ない時期は一言でも、ほんの数行でもOKです。要は、継続して一定期間のデータを蓄積し、比較可能な材料を残すことが重要です。
やっぱり10日間ぐらいが、日記が日記に育っていく最初のタイミングなんだ
2. 観察者としての姿勢を忘れない
「自分はダメだ」と否定的な表現で終わらず、「今日は○○ができなかった」「○○が難しく感じた」という事実ベースの記述を心がけると、自己否定に陥りにくくなります。日記は、自分を裁く場所ではなく、冷静なデータ収集の場と考えると書きやすくなります。
3. 必要に応じて第三者の視点を活用する
主治医やカウンセラー、信頼できる家族や友人に日記の一部を見せてみると、自分では気づかなかったパターンや改善策が浮かび上がることがあります。別の視点が入ることで、日記記録の価値はさらに高まります。
テクノロジー活用と応用の可能性
今では、スマートフォンやパソコンを使った日記アプリやオンラインサービスが数多く登場しています。気分トラッカーや睡眠記録、グラフ表示、リマインダー機能などを備えたツールを使えば、効率的な記録と分析が可能になります。例えばiOSのヘルスケアアプリなどが挙げられます。さらに、たとえばAIを活用した感情分析ツールで、データを蓄積・解析しながら、より精密なセルフマネジメントへと発展させることも今後期待できます。
加えて、同じ悩みを持つ人々が参加するオンラインコミュニティや当事者会で、日記活用のコツやアイデアを共有することも有意義です。社会的な知見や専門家の知識を取り入れることで、日記は単なる個人作業にとどまらず、広がりと深みを獲得できます。
まとめ
双極症の克服や緩和に向けた道のりは、医療的なサポートや薬物療法、心理療法、福祉サービスなど、多面的なアプローチが求められます。その中で「日記をつける」という行為は、生活習慣や気分、行動、感情、思考パターンを総合的に捉える「データベース」として機能し、自己理解を深めるための確かな足場を提供します。
時間をかけて蓄積した記録は、あなた固有の気分変動パターンを明らかにし、再発予防や症状コントロール、日常生活の改善に役立つ「道しるべ」となります。日記を活用することで、双極症との向き合い方は徐々に明確になり、自分らしい安定と豊かさを実感できるようになるでしょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。