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塚本あおいのショートショート

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塚本あおいの書いた記事の中から、ショートショートだけをまとめました。
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#小説

【小説】シーザの旅路

元薬学者の男シーザは故郷の島を追われて本土の田舎町にある老女ネニコの家を終の住処に決めた…

5

【小説】オリキノ

暗闇の無人ホームに、記憶をなくした少女が一人立ちすくんでいた。 ここがどこかも、自分の名…

2

【小説】コスモス

闇の時間と光の時間が繰り返し訪れる世界。 この世界には太陽がない。代わりに、この世界の上…

1

【二次創作小説】 由真

光の中に黒い渦の回転があった。 彼女は一人、その中から這い出た。 水は回り、闇をゆっくりか…

3

【小説】シーザの心情

赤子の頃から、島に住んでいた。 その島はマンションやオフィスビルや研究所などがあり、割と…

1

【小説】 作詞

歌を求めて長い旅をしてきた。 旅人の少年は絶望していた。 どこを訪ねても、そこにあるのは他…

5

【小説】キリム時計塔

ああ、世界は、滅びた。 終わりを告げたのは、世界の中心に天をつくようにそびえ立つ時計塔の時計の鐘の音だった。 この世界には、時が流れる。 もはや人が一人もいなくなったこの世界にも、幾度となく朝が来て、夜が訪れた。 そしてそれを告げるのは、いつだって世界の中心の時計塔の時計の鐘の音だった。 その時計塔の最上階の部屋には、大きな縦型の織り機が存在した。 誰もいなくなった世界の、時計塔の中の部屋に、なおも機織りを続ける一人の少女がいる。 故郷の村から仕入れた、羊の毛を紡いで作られ

想い出

美術大学に進学して一番よかったことは、ホックと出会えたことだと思う。 最初の全体ガイダン…

4

【小説】ネニコとシーザ(改)

ネニコという名前の老婆が一人、とある国の田舎町の、山の麓にポツンと建つ一軒家で静かに油絵…

3

【小説】『リトル・リト』 美大生活の終わりに

1 あるところに、女がいた。名前をアキソラホホといった。彼女は自分がいつまでもは生きられ…

7

【読み切り小説】ウルビ国の歩み

ウルビ国王は大帝国から脱出した。 薄暗い洞窟を抜けると、緑豊かな土地がある。そこで自らが…

2

【読み切り小説】イーグレカ

夕方で、空は赤かった。血のような太陽が西に沈む。 「今日の収穫はこれだけか」 俺はひとり…

9

赤化世界とデモ・クラッシェ

夕方になっていた。 夕焼けは赤くて素敵だと思った。 ぼくは窓から見ていた。 ぼくの部屋は夕…

5

ぬいぐるみ side K

ある晴れた日の夕方のことだった。 初めてきみを見た時、 一目ですきになった。 だからわたしはきみを買って、 家に連れて帰ってきた。 わたしは部屋を見渡して、ひとまず、この新しいふわふわなぬいぐるみを置くのに良さそうな場所を探した。 ちょうど、ベッドのヘッドボードの上が空いているのに気がつくと、わたしは考えて、その日はきみをクロゼットの中にしまうことにした。 この部屋の中にきみの居場所を作るために、一つ工作をしようと思ったのだ。 わたしは机の横に立てかけてある、