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2024年7月の記事一覧

『公園物語』 その14

『公園物語』 その14

僕も秘密基地を作ろうと思った。

先日の「秘密基地騒動」を経て、ぐるぐると考えが巡った。
しかし、考えても考えても、どうしたらよかったのか、どうすればよいのか、わからなかった。
それならいっそ、僕も渦中に入ろうと思った。

共にいる娘がまだ幼いので、
彼らのように山の斜面に作ることはできない。
しかし、山の中には作りたい。

と、いうことで、フェンスの向こう側の斜面になる直前、少し平らになっている

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『公園物語』 その13

『公園物語』 その13

冬の入り口に立った公園は静かだった。

もう砂場にも、公園にも、あんまり草は生えていない。
砂場で大きめの山を作ってその上に座って空を見る。

その時、フェンスの奥の山の中で、影がサササッと動いた。

「ぬぬ?!」
なんだあれは?
バッと立ち上がって、ダッと駆けていって、ソローっと覗いてみる。

そこには素晴らしい「家」があった。

秘密基地だ、、、!
落ちていた木が丁寧に組み合わされている。

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「天才とホームレス」 第15話 『ロケットえんぴつと教会』

「天才とホームレス」 第15話 『ロケットえんぴつと教会』

僕を除く4人は、水を得た魚のように、売り場を獲得していった。

てっぺいは、あのタバコ屋や、文房具屋にも置いてもらっていた。
スーパーやコンビニなどの、いわゆる「ちゃんとしたところ」には断られたらしい。
挑んだことがすごいと思うけど。

テツ、シュン、ダイチの活躍も凄まじかった。
元々、行動範囲が広く、知っている駄菓子屋も多い。
またポケモンカードネットワークというものが存在し、その範囲は隣町のま

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『公園物語』 その12

『公園物語』 その12

骨組みだけで屋根のない、赤レンガのスペースにあるベンチに、
少女が僕から1.5メートルあけて座る。

いつもは何人かと共に行動をする彼女だが、
皆が早めに帰ったために、夕暮れ時に一人だった。

僕は画材を片付けつつ、彼女に話しかけた。

「よう、一人やん」
「はぁ? うるさいわ!」
そんなふうにツンツンしている彼女である。
僕に対しては、触れるものみな傷つける、といった感じなのだ。

カチャカチャ

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「天才とホームレス」 第14話 『中学とコミュ力』

中学校には小学校の倍の人がいた。

二つの小学校から来るのである。
しかし、半分は小学校から知っている顔だ。
中学受験で減ってはいるが。

『えんぴつけずり』の弟子たちは、
中学でもやかましかった。
すでに自分の家かのようだ。

もう一つの小学校、北小の人たちの中心グループともすでに仲良さそうである。
やはりすごい。

てっぺいは相変わらずマイペースで、相変わらず浮いている。
改めて集団の中で見る

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『公園物語』 その11

『公園物語』 その11

夏を乗り越えて過ごしやすい秋になった。

その頃、僕は長年の夢だった、油絵を始めた。

夏休みの前あたりの僕の誕生日に、母が油絵セットを買ってくれた。
30歳の誕生日である。妻は驚いていた。
まあくれるというのだから、ありがたい。

気温が下がって、蚊がいなくなった頃、
「そうだ、公園で描こう」
と、また閃いてしまった。

馬鹿でかいキャンバスに、油絵を描くのが夢だったんだ。

馬鹿でかいとは言え

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「天才とホームレス」 第13話 『賛辞と始動』

「天才とホームレス」 第13話 『賛辞と始動』

おっちゃんは不労所得が嫌いらしい。

「働いた分、お金をもらう。
 働かんと儲かったらそれは搾取や。友達やない」
鍬を横においてまっすぐな目で言った。

「え、でも、いろいろタダでもらってるやん。
 あれはおっちゃんが助けたからやろ?
 それって報酬じゃないん?」
てっぺいがツッコむ。
「ちゃう。あれに義務はないやろ。
 あれは善意で友情や。
 働いた分の報酬はもうもろとる」
確かにてっぺいも、勝

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『公園物語』 その10

『公園物語』 その10

実は僕は英語ができる。

昔、一年弱、アメリカに行ったのだ。

そのときも、何か立ち止まりたくって急に決めた。
この時から何かを抱えてたのだ。
英語を学びたいというのを口実にして、社会人になる前に一年ぐらい「遊び」の期間を作ろうとした。

決めてから色々と調べて(調べてもらって)、格安で行けることになったのだ。
大学を一年休学して(公立だからタダなのである)、ビザを取得して、大学に申請して、カリフ

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「天才とホームレス」 第12話 『お泊まりとお風呂』

「天才とホームレス」 第12話 『お泊まりとお風呂』

泊まるのに必要なものをすべて与えて、
てっぺいと部屋に入った。

こんなことは初めてだ。
友達も、友達が泊まりに来るのも、
実はてっぺいが初めてなのだ。

ママは張り切って豪勢なご飯を出した。
てっぺいはガツガツと全部たいらげた。
ママは嬉しそうだった。
てっぺいも幸せそうだった。
そうかてっぺいのお母さんは、、、

いやいや、そんなこと、勝手に考えるのは失礼か。
しかし、てっぺいがいつもより甘え

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『公園物語』 その9

『公園物語』 その9

ラジオ体操の終わりの日、BBQをしようと言った。

子どもたち、大歓喜。
嬉しい。

しかし、問題は保護者である。
もちろん怪しい。
一人の保護者の誤解は解けたが、一人がそうということは大多数がそうだということだ。

子どもたちが来たいと思っても、それは難しい。
難しくあるべきだ。

でもBBQはしたい。したいんだ。
だって、一緒に飯を食うって、めっちゃいいやん!素敵やん!
それにこのラジオ体操で

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「天才とホームレス」 第11話 『対等とはと大人』

「天才とホームレス」 第11話 『対等とはと大人』

膨大な量の無駄な文字列を書き上げた後、
「対等になるために、、、」
と、つぶやいて僕は気付いた。

僕もてっぺいも対等でいたかったのだ。
僕らの仲間を客にしたくなかった。
お金を取るとはそういうことだと。

しかしそれは本当に対等か?
ママが言った通り、狩猟を教えたら、解体を教えたりすることは本来、人件費がかかることだ。
僕らはタダでやってもらったけど、一日だけだし、おっちゃんが売った恩からやって

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