イラストエッセイ「私家版パンセ」0047 「自然科学と人文科学の違いについて」 20240902
自然科学と人文科学の違いは、自然科学が継承可能であるのに対して、人文科学、特に文学は継承不可能であることではないでしょうか。
カラーテレビがある今日、白黒テレビを開発する人はいません。カラーテレビの技術を継承し、ハイビジョンが開発されました。
ところが父親が恋に悩んだから、息子はもう悩まなくても良い、ということはないんですね。
父親が人生の意味について答えを見いだしたので、息子はもう人生の意味について考える必要はない、ということもありません。
人文科学、いや人間の人生と言っても良いのですが、これは一人一人がゼロから出発し、自分なりに悩み、考え、答えを出してゆかなければなりません。
自然科学は進歩するかも知れません。でも人間自体が進歩することはないと言っても良いと思います。科学技術の進歩につれて人間自体も進歩すると考えていると、大きな誤りを犯すことになります。
むしろ、科学技術が進歩すればするほど、人間が愚かになり、犯す過ちもより悲惨なものになると言っても良いと思います。
先生をしていた時、よく昔の生徒と今の生徒は変わりましたか?と尋ねられました。
基本的には何も変わっていません。
正解を与えても、自分で失敗を重ねながら学ぶ。教師は忍耐強くそれに付き合う。結局、それしかないのかも知れません。
そもそも教師が与える答えが正しいかどうかだって怪しいのですから。
人文科学や人生には正解はないんです。
それでも人は自分なりの正解を求めて一生頑張るのですけれど。
迷うことの方がやっぱり多いよなー。
私家版パンセとは
ぼくは5年間のサラリーマン生活をした後、キリスト教主義の学校で30年間、英語を教えました。 たくさんの人と出会い、貴重な学びと経験を得ることができました。もちろん、本からも学び続け、考え続けて来ました。 そんな生活の中で、いくつかの言葉が残りました。そんな小さな思考の断片をご紹介したいと思います。 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。