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20241007 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」028 「ガンジー自伝」

 インド建国の父、ガンジーの自伝です。
 ガンジーと言えば、イギリスからインドを独立させたリーダーです。そしてその手法は、「非暴力主義」そして「非服従」。
 非暴力は暴力よりも強いことを世界に教えました。そしてその考えは、アメリカ黒人の公民権運動の指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師にも大きな影響を与えました。

 ぼくも含めて、ウクライナ戦争やイスラエル紛争を見て、軍備増強と軍事同盟が最大の戦争抑止であると考える人が増えましたね。
 でも、これは同時に果てしない軍拡競争の世界に入るということです。ぼくたちの年代は、米ソの冷戦時代を生きたので、この軍拡競争が最終的には人類滅亡に至る危機につながることを経験しました。

 改めてガンジーを読むと、何だか叱られているような気持になります。
 非暴力の道をそんなに簡単にあきらめてはいけないんだって。

 ガンジーは非暴力主義が有名ですけれど、もう一つの大切な主張があるんです。
 それは、「反近代」の思想です。
 今の世界で、「近代化」に反対を唱えるひとはほとんどありません。経済、技術の進歩は人間に幸福をもたらすと無条件で信じられています。
 でもガンジーは、近代化、すなわち、工業技術に立脚して富と資本を拡大させる資本主義は決して人間を幸福にしないと考えたんですね。なぜなら、資本主義は人間の欲望に立脚しており、欲望には限りがなく、それゆえ決して人間を幸福にしないと考えたからです。

 ガンジーは、粗末な布切れ一枚を身にまとい、自ら糸車を回している写真が有名です。あの写真が彼の反近代の思想を象徴しています。それは自らの手で自ら必要なものを作り、少ないもので満足し、精神性の高さを求めて生きる生き方です。
 イーロン・マスクやビル・ゲイツやジェフ・ペゾスのような現代の億万長者とは全く正反対の生き方です。彼らは技術の進歩と富の拡大こそが善であることを自明のこととして疑っていません。
 しかし行きすぎた資本主義が世界中に格差と分断と貧困と戦争を生んでいるのも事実です。
 意外と知られていないのですが、インドは1980年まで、ガンジーの思想を受けて自由経済ではなく、共産主義国と同じ計画経済を行っていたのです。
 ガンジーと共産主義の大きな違いは、ガンジーが唯物論ではなく精神性(信仰と敬虔)に基礎を置き、豊かさと力ではなく、謙虚と貧しさに価値を置いたところです。結局のところ、共産主義は進歩史観に基づき、進歩を認め、近代を肯定しています。ガンジーはあくまでも反近代なのです。

 欲望は奪い合いであり、奪い合いは持てる者と持たざる者を生みます。
 愛は与え合うことで、与え合えば足りない人は一人もいません。
 AIやロボットに任せず、自分の手で必要なものをつくることは、人間に尊厳を与えます。
 モノの豊かさを求めることは、自分の心と環境を破壊します。
 精神の豊かさを求めることは、自分の心を豊かにし、環境に負荷がかかりません。

 こんな、今では忘れられた価値観をもう一度思い出すためにも、ガンジー自伝は読み継がれるべき名著だと思います。
 ぼくたちがあまりにも資本主義、自由主義経済、科学技術の進歩が良いことだと、無批判に受け入れ過ぎていることに気づくことができると思います。
 そして実はこの価値観があらゆる戦争、紛争の原因でもあるのだとぼくは思います。

オリジナルイラスト ガンジーの肖像

 話は全然変わりますがぼくには尊敬する人物が4人いるんですね。
 イエス・キリストとガンジーとマザーテレサ、そしてギャル曽根です。
 イエス・キリストは、この世の全ての存在が神に愛され、いらないものは一つもないことを教えてくれました。
 ガンジーは非暴力主義と、近代が自明な善ではないことを。
 マザーテレサは、目の前の一人を救うことが世界を救うことより大切であることを。
 そしてギャル曽根は、じぶんの小ささを教えてくれました。(ぼくは大食いを自慢にしていましたが、その傲慢の鼻をへし折ってくれたのが、ギャル曽根だったのです。笑)

オリジナルイラスト ギャル曽根


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