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間(ま)や静寂の表現
こんな記事を見ました。
動画を通常よりも速いスピードで見る人が増えている、というのは以前より耳にしていました。
確かにこの高校生が言っているように勉強を効率的に行うための動画教材を見る場合などは良い効果を得られるのかもしれません。
ただ、映画などの表現作品に関しては速い速度で見ることに疑問を感じます。
間や静寂の美しさ
僕はどうしても音楽、芸術の分野を中心軸に置いて物事を考えてしまうので、話が少し変わってしまうのかもしれませんが、間や静寂、呼吸のない表現というのが増えてきているように感じます。
SNSなどのショート動画も声が出ているところだけを切り取り、さらに速度を上げてマシンガンのように喋っているものが少なくありません。確かにそれでも内容は入ってきます。ただし内容だけ。その動画で何をしたのかという事実は伝わります。しかしそれは見る者のに「記録」として植え付けただけにすぎず、心が動かされることはありません。
人間の心を動かすには情報以外の共鳴させる時間が必要なのです。
人の心を共鳴させる時間
「情緒」という言葉があります。物事に触れて心が動かされることを指す言葉ですが、ここに到達する時間を与えられないことが多いので、「ああ、この人は怒ってるんだな」「楽しいことがあったんだな」と客観的に認識したところで終わってしまいます。また、空いての心の中がよく理解できないために、発信者の発言が刺激的だったり、読み手(聞き手)を煽ってくるような挑発的な言葉を使うと、その人の真意など関係なく聴く側が苛立ちを覚えたり、反論したくなります。これが悪い意味でのSNSの炎上につながっていると考えています。
要するに深く考えずに最も表面的な部分だけで物事を把握、理解する習慣がついてしまうのです。
時間をかけて味わう
皆さんは絵画をじっくり見たことはありますか?観光地などでその風景や建築物、仏像などの作品を心に響かせるまで見たことはありますか?
その絵画が作られた経緯やどのような場面(ストーリー)なのかを知る必要もありますが、そうした知識を持った上で絵画を隅々まで見ていると一枚の動かない絵なのに様々なイメージを掻き立てられることがあります。表情や目線、じっくり見ないと気づかない背景に隠された物など、本当に面白い絵画が結構あります。
建造物や仏像など人の手が作り出した物は同じことが言える場合があります。
間(ま)を味わう楽しさ
また、落語や演劇なども面白いこと、興味深いことを言葉で表現するのは当然ですが、ところどころに動かない・喋らない間があることでジワジワと込み上げてくる面白さや興味深さがあります。
そして音楽も同じです。音楽は音符を連続的に発生させることで成立していると思われがちですが、音が鳴り続けていると聴く人はそれが当たり前になってきて音を感じることに疲れ、興味を失います。そこには休符や呼吸、静寂などの間が必要です。一段上の音楽表現を目指すのであれば、音がない時間の表現ができるようになることが必要です。
上質な音楽、演劇、落語、朗読などに存在する間や静寂を感じるためにもぜひ通常の速度でぜひ見ていただきたいです。というかぜひ会場で生の表現を観て、聴いてほしいと願います。
何かと忙しく時間に追われる生活かもしれませんが、時にはゆったりと自分の心を豊かにするための贅沢な時間があっても良いのでは、と思います。
表現者する側はそうした表現ができるよう、心がけてほしいと思います。
荻原明(おぎわらあきら)
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