心の中の音楽がフィジカル(体)をコントロールする話
演奏者がフィジカル(肉体的)な側面からの一方的なアプローチでは確実な演奏も素晴らしい音楽も生まれません。
そうしたフィジカル的方法論を演奏において優先してしまう最大の危険性は「音楽的側面」を二の次にしてしまうことです。確かに、トランペットを上手に演奏するために、フィジカル面の要素が必要ではありますが、何事もバランスが大切。練習をする時は必ず
『音楽が奏者の体を動かしている』
と考えるべきです。
フィジカル面の知識や理論、原理というのは、上達を促したり、クオリティの高いものを作り出す際に必要な情報であり、それだけを追求しても音楽を生み出すことはできません。
例えばタンギングは舌を前歯に触れて離せばとりあえず成立しますが、それがクオリティ高いタンギングであるかは別の話。美しいタンギングにするためには何をどうすれば良いのか、ある程度のフィジカル面の理屈があります。破裂音の発生原理、そのための空気圧の準備、舌の機敏で確実な動きと音が出た際の位置や形状。
しかし、どれだけフィジカル面で理解していたとしても、そこに「美しいタンギングのイメージ」「目指すタンギングのイメージ」など「どんな音を出したいのか」という具体的なイメージがなければ、自分が何を求めているのか不明瞭になってしまい、仮にクオリティ高いタンギングができたとしてもそれが自分の目指しているものなのか判断がつきません。
目指すイメージを明確に持つには、情報が必要です。素晴らしい奏者たちの生の演奏をたくさん聴いたり、レッスンで先生の見本を参考にしたり。その中で「自分もこんなタンギングができるようになりたい」と強くイメージして練習に取り組むわけです。その練習の方向性が定まるために、先ほど書いたような原理、理論、フィジカル面の情報が参考になります。
音楽の練習というのは機械仕掛けの設計図を机上で作っているのではありませんから、理論や原理、方法論だけで魅力的な音楽を奏でることも、演奏技術が向上することも決してありません。これは断言できます。
逆に頭の中が理想の音楽で埋め尽くされているような人は、やはり聴く人を魅了させる力が強く、いわゆる「音楽的」な演奏ができます。ただ、その音楽的な演奏のクオリティを高めていくためには、頭の中に音楽が存在するだけではやはり足りなくて、理論やフィジカル面の知識を組み込んだ練習をする必要があります。
楽器の練習をする際、あなたはどちら派でしょうか。理論で何とかしようとあれこれ考えている方は少し情報を減らして、その分を「理想の音楽」を頭や心の中で描いてください。
体も頭も理想の音楽で一杯になっている方は、例えば録音などをして、理想と現実がどうなっているのか冷静に確認してみましょう。そこで必要になるもの、足りないものを理解し、少しの理論や知識で、より理想とする音楽に近づけていく練習を組み込んでください。
音楽を表現する限り、必ず「音楽」という大枠の中の一部に「理論」「原理」「フィジカル」というものが存在している、と考えましょう。
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最後に宣伝になりますが、荻原のレッスンでは今回のお話に出てきた理論や原理、フィジカル面の詳しい解説もしておりますし、一方で音楽的な側面からのレッスンも必ず行っています。レッスンで講師の音を聴いたり、表現方法をいろいろ知ることもとても良い影響があるはずです。
それらをバランス良く持った上での演奏を目指すための一度ツキイチレッスンにいらしてください。
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荻原明(おぎわらあきら)