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タイトルが好きな本

唸る。
好みのものに出会った時、あなたならどう反応しますか?

私は唸る、なぜなら悔しいからだ。
自分の好きな物は全て自分が分かって心の中で管理できている筈なのに、それを顔も知らない他人に突如突き付けられる。
これほどの屈辱はない。散歩をしていて鳩がいるな、と思ってよく見たら自転車のサドルが落ちていた時くらい悔しい。

単純に『タイトルをつけるのが苦手』敗北感と称賛。

くうう、と喉が鳴るほど力が入り、獣みたいに犬歯が剥きでる。

あんた何様?そうやすやすと私の中に入ってこないで!
へぇ・・・そう、やるじゃん。好き。

そう、私はちょろいのだ。

特に私は「言葉」が好きなので、口触りのいい言葉や、耳障りのいい音に軟弱すぎる。もうめろめろになる。
本屋に足繁く通う理由はそこにあるのかもしれない。

作品は「タイトルで決まる」

そんな言葉もちらほら聞く。
だが、小説家やライターは「書き出しの3行」とも言う。
ショートショートの神様 星新一先生も名だたる文豪も言っていた。滑る文は書き出しだ、と。
これは書き手の意見だが、書き手の文が滑れば読み手もつられて一緒に滑り、気付けば富士山の麓にいる。

でもなぁ、そこって名前が売れてたり「秀逸なタイトル」があるからなんよ。
そしてそして、これはこれは、声を大にして言いたい。

「本屋や映画館、CDショップ。然るべき場所に並んでいるからこそ、手に取られて最初の3行のきっかけになる」


これは山やな

なんて寝転んで右手の小指で鼻くそほじりながら、左手で書いたタイトルが並んでいる。
そこがジュンク堂なら「ふむ、肩の力を抜いた優しい関西弁の奥に聳える山の頂の風を感じてみるか」と手に取ってしまう。
もしくは奇抜に感じて思わず中を知りたくなる。
前者の場合は手に取った側の読解力というか、もはや妄想の域に達しているかもしれないが、noteの“おすすめ“にこのタイトルがあって読もうと思う人は少ない。(もしつけてた人いたら謝りと訂正入れるんで通報前にコメントください。通報前に、コメントをください)

もしくは作者が、東野圭吾や宮部みゆき、村上春樹なら買うでしょ?
「これは山やな」買うでしょ?ハルキストは予約するでしょ?制作側もドラマの権利買うでしょ?主人公は福山雅治で決まるでしょ?

初めての田舎暮らしに胸躍らせた軽トラ乗った福山雅治が、パーン車から降りて腰に手をあて眼前の景色に目を細めて一言。
「これは山やな」

ヒットするやんか。
日本アカデミー賞最有力候補「これは山やな」の最高の滑り出しよ。
全米は泣かせれんかもしれんけど、次回作の「いいえ森です」を期待しちゃうでしょ?

「人は見た目が9割」と言うが、これは作品も然りだと思う。

漫画なら画力の高い表紙。
小説なら秀逸なタイトル。
YouTubeならサムネイル。
映画ならCMやポスター。

中身の方が大切!と言う人は最初の3行に重きを置いていてくれているかもしれない。
でもな、手に取らないと最初の3行に行かないでしょ?
本屋で目を瞑って「今日はこれ!」と手に取ってページをめくる人も居なくはないが、少ないと思う。

もう本当に屁理屈ばっかこねてるけど、そうやん。知ってるやん、そうやん。


やっぱタイトルかぁ。

直接「これ」と言っていないのに、そこはかとなく雰囲気が伝わってくるタイトルはかっこいい。

「百瀬、こっちを向いて。」中田永一 著

いい。

心の声や、セリフ部分を切り取り、受け取り手に任せたタイトル本当にかっこいい。
「百瀬、こっちを向いて。」永遠に人が思う秀逸なタイトル。
感想を述べるときに「透明感」って言葉つけてしまいたくなる誘導タイトル第一位。

初恋か、そうでないか?の思春期のセリフでもあり、日常で私達も推しに対して思っている。「こっちを向いての言葉はずるい。


はっきりと現場や現状を書いているのもかっこいい。

「蕭々館日録」久世光彦 著

これもいい。

蕭々館で起きる毎日のことを書いている本。
タイトルはシンプルで響きもよく、縦書きにするとバランスが良い。蕭・館・録の文字の配置かなぁ。
九鬼さん(芥川龍之介がモデル)の色気の描写が好き。久世さんの本は乱歩好きにはたまりませんな。


そのまんまタイトルの賭け。

「キン肉マン」ゆでたまご

さっと出たのがコミックスでなく図鑑だった
皆んな大好きマッスルドッキング

そのまんまのタイトル、そのまんま主人公の名前でもタイトルだけでバトル漫画だと分かり、屈強さも伝わる。
ただ、主人公が転べばみんな一緒に転ぶ、豪胆なタイトル。「ゴジラ」「ドラえもん」も堂々としてかっこいいし、ついつい言いたくなる口触りと覚えやすさに唸る。
小説では難しい。

人生一度は自分の本を平台に並べたい。

要は売れればいいんだよな。簡単じゃないけど、やってみないとわからない。
私の名前が世界に轟き、このnoteを読んだ人が電子書籍もしくは本屋で見つける。

「これは山やな」と続編の「いいえ森です」

その時は躊躇なく手に取ってください。

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