komichi@旅のエッセイ

女性、30代。東北在住。 旅先で感じたことを書いています。

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最近の記事

仙台 31歳 冬

喪失を味わう旅だった。 大切な人との別れは突然訪れる、というのは、昔から繰り返し感じていて。 何回も繰り返して、ようやく対策を打つ気になった。 自分のほうから喪失に備えるんだ、と、かつて少しだけ住んでいた仙台を訪れた。 お世話になった一人が高齢になっていたので、不謹慎ながら会えるうちに会おう、というのが今回の旅の目的。 数年ぶりでも、かつて話したことをお互いよく覚えているし、近況を聞けば様子が目に浮かぶ。楽しい時間。 想像したくはないけれど、この人が亡くなったとしても

    • 五所川原 25歳 春

      東北に住むならば、東北は回っておきたい。 そう思うのが遅すぎたのかもしれない。 都会に向いていた目が、年を重ねて少しずつ、自分の身の回りに向いてきた。 学生時代ならもっと時間があったのに、と悔いる気持ちを納得させるように、興味が出てきた今がタイミングなんだ、と思うことにした。 といっても、東京に行くのと青森に行くのでは、東京のほうが正直気軽だった。 東京で大型連休の初日を過ごし、そこから新幹線で一気に北を目指した。 新青森駅でレンタカーを借りて、津軽半島を進んでいく。 初

      • このタイミングで自己紹介

        いくつか思いを記事にして、 誰ひとり読む人はいないだろうと思っていたのに 奇跡的に数名の方に見てもらえたようなので 少し自己紹介をいたします。 誰かの目を意識して書くことは初めてです。 ずっと日記を書いてきました。 恩師の助言で始めた日記は、10年以上、自分のためだけに続けていました。 時々読み返すと、恥ずかしいけど、そのときの一生懸命さがよみがえってくる。 一生懸命の対象は、ほぼ恋愛。ほぼ片思い。ごくたまに、恋愛以外も頑張ってたりする。 そんな風に、日記がほとんど習

        • 京都 29歳 冬

          京都に行くのは気が進まなかった。 そもそも、旅行先に京都を選んだのは私だ。 でも、行きたいと言ってから、実際に行くまでの間に、仕事でも私生活でも慌ただしい日が続いたので、正直、疲れていた。 高校の修学旅行先といえば京都というのが、私の住む地域の定番だ。 きょうだいもそうだったし、隣の高校もそうだった。 でもそれ以来、京都には行ったことがなかった。最初で最後の京都が、高校生のとき。   大人になって、歴史なんか詳しくないのだけれど、和の趣を感じることも素敵かもしれない、と、行

          佐渡 30歳 秋 その2

          「いい旅を」という言葉を、さらりと言う人がとても素敵だった。 予告どおり、新潟県の佐渡市に行ってきた。 前回の記録を書いた6時間後には皆で車に乗って、旅が始まっていた。 初めての佐渡。 初めての日本海への航行。 船酔い対策で速い船を選んだ。それに乗るのも、もちろん初めて。 フェリーより速い「ジェットフォイル」は、最高速度80キロほどの小さな船で、水を噴射することで船体が海面から浮いている、らしい。 自分が乗っているときに見たわけでもなく、乗っている感覚も安定しているので

          佐渡 30歳 秋 その2

          佐渡 30歳 秋

          明日から佐渡に行く。 いつも旅を終えてから書いてばかりだったから、たまには、出発前にも書いてみる。 佐渡には職場の同僚と行く。 強いられて行くわけではなく、気の合う同僚と、楽しい旅だ。 同僚との付き合いが楽しめるようになってきたのは、20代後半になってからだ。 入社したての頃は、職場の人にはプライベートを明かしたくないと思っていた。 休日に職場の人と外出なんて、もってのほかだった。 年に一度の職場旅行が泊まりがけで行われるときには、何日連続で上司と顔を合わせるのか、数え上

          秋田 27歳 夏

          初めての一人旅を敢行した。 例えば、目的地で誰かと待ち合わせをして、そこまでの移動が一人、というのは何度か経験した。 仕事で一人どこかに行くこともあった。 けれど、今回は本当に一人だ。 途中で友人に会うこともなく、何か約束があるわけでもない。 純粋な、一人旅。2泊3日のドライブ。 出不精な家庭に育ったからか(大人になるまでは一般的な家庭と思っていたが、どうやら同世代と比べると旅行の回数が少ないらしい)、東北で生まれ育ったものの秋田は訪れたことが無かった。 男鹿半島を車で一周

          佐世保 29歳 春

          長崎は、その響きだけで、憧れをかきたてる。 港町が好きなのは、盆地育ちの海への憧れと、外国、とくにヨーロッパへの憧れを満たしてくれるからだと思う。 中でも長崎は、かつて熱心に聞いたラジオのパーソナリティが、青年期を過ごした土地。故郷を語る言葉を聞いているだけで、憧れの長崎、がどんどん強まるのだ。 だから、せっかく福岡に来たならば、と、長崎まで足を延ばした。 在来線に揺られながら、佐賀県を通って、長崎へ。 博多駅で買ったお弁当をいつ広げるべきか、今じゃない、今じゃない、と、

          佐世保 29歳 春

          福岡 29歳 春

          九州には行ったことがなかった。 飛行機で移動するなんて、自分の選択肢には無かった。 東北の盆地で育つと、移動手段の第一優先は車だ。 新幹線は未だにテンションがあがる乗り物。在来線の電車は、新幹線に乗るとき、駐車場に困るから乗るだけ。最近は高速バスも便利になって、地元で在来線に乗ることは減ってきた。 飛行機は、これよりさらにドキドキする乗り物だった。 大学は、地元からそれほど遠くない地方都市にあって、西日本の出身の友人もちらほらいた。 その友人から、長期休暇で帰省するときに