仙台 31歳 冬
喪失を味わう旅だった。
大切な人との別れは突然訪れる、というのは、昔から繰り返し感じていて。
何回も繰り返して、ようやく対策を打つ気になった。
自分のほうから喪失に備えるんだ、と、かつて少しだけ住んでいた仙台を訪れた。
お世話になった一人が高齢になっていたので、不謹慎ながら会えるうちに会おう、というのが今回の旅の目的。
数年ぶりでも、かつて話したことをお互いよく覚えているし、近況を聞けば様子が目に浮かぶ。楽しい時間。
想像したくはないけれど、この人が亡くなったとしても、私には知る術がないな、と思っていた。
一緒においしい食事を楽しめるうちに、再会できてよかった。
そんなことを満足げに感じていたら、数少ない共通の知り合いが、亡くなっていたと聞く。
ああ、これだ。
やっぱり別れは突然来るんだ。
目の前の、この話を教えてくれた人よりは、若くて、元気で、まだ会うチャンスはあると思っていたのに。
一つ、後悔しない行動ができたのに、全部はうまくいかないな。
恩人と別れ、懐かしい街を歩く。
知っている店がいくつか閉店していて、通りの雰囲気も違って見える。
ずっと、自分の思うままにあり続けるなんて、無理なんだ。
人だって、街だって。
帰り道、車を走らせながら、もう会えなくなった人のことを思う。
昔住んだ街を訪れる理由が、ぽろぽろと消えていく気がした。
結局、喪失に備えることなんて出来ないのかもしれない。
会えた人、会えなかった人。
今でも時々、この日のことを思い出す。