プロジェクトマネジメント会社からデザインコンサルティング企業に進化し早20年。トリニティ株式会社のこれまでと私たち(私?)の仕事について。
はじめまして、トリニティ株式会社の篠崎美絵と申します。
今回がnote初投稿になります。よろしくお願いします!
デザインコンサルティングって何をしているの?トリニティなんか知らないという方が多くいらっしゃると思いますので、まずは弊社とわたしたちの仕事についてご紹介させてください!(๑´ڡ`๑)
古株のわたしが語るトリニティの今昔 創業時はプロジェクトマネジメント会社だった!
わたしが勤務するトリニティは、デザインコンサルティング会社です。企業や行政などの組織の様々な活動を「デザイン」の観点からサポートする仕事を行っています。元々は、プロジェクトマネジメントを行う会社で、イタリアのデザイン教育機関と提携し、現地のデザイナーやリサーチャーを起用したデザインプロジェクトを日本の製造業を中心とするクライアント企業にご提供しておりました。
わたしは、インテリアデザイン事務所勤務を経て、ミラノ工科大学で「デザイン戦略」を学びました。修了時に現地で弊社代表の湯浅に出会ったことをきっかけに、帰国後入社することになりました。2003年のことです。帰国したばかりの頃はまだ日本ではデザイン戦略という言葉もその意味も浸透しておらず、デザインをユーザーや市場、社会のニーズから考察し、重要な「経営資源」として捉える必要性を訴えてもなかなか理解してもらえず歯痒い思いをしました。もちろん無意識にそれを実践されている企業もおられたかと思いますが、印象としては、デザイン=機能美、意匠設計という枠に留まっていたような気がします。
デザイン戦略の概念が浸透し、 コンサルティング業務を本格化!
トリニティでは当時からデザインプロジェクトマネジメント業務を通してコンサルテーションも行い始めていたのですが、わたしが入社した翌年頃から徐々に企業内にデザイン戦略部が設立され始め、わたしたちもデザイン戦略立案のお手伝いをさせていただくようになりました。企業のデザイナー職もデザインをする能力だけではなく、「プロデュース能力」も求められるようになった頃です。
最初の頃は、デザイントレンド分析や製品デザイン開発のサポート業務をメインに行なっていました。デザインに精通したメンバーが増え、業種を横断してデザインの動向から時代の価値観を読み解くことができる能力や、創業時からの強みである海外のリサーチャーやデザイナーのネットワークを活かして企業のデザイン活動をご支援してきました。
デザインにもエビデンスが求められ、 定量定性調査を始動!
2000年代後半になると、「エビデンス」という言葉が業界のバズワードとなり、感性的なデザインにおいても数値で表せる客観的なデータで根拠を示すことが求められるようになりました。そこで、新たに定量定性調査のスキルを持つメンバーが加わりました。調査ができる人はたくさんいらっしゃいますが、デザインに関心がある人って希少なのです。幸いデザインに理解の深いリサーチャーが加入したことで、トリニティの仕事の幅が広がりました。
現状把握に帰結しがちな定量的なユーザー調査からも仮説を導き出せるようになり、企業のマーケティング部門からの依頼も増えました。同時にデザイン部門の方々が、他部署の人たちと共有できる情報としてのニーズも生まれました。定量調査以外にもユーザーや有識者へのインタビューによる検証や発想支援も行っています。
人を中心とした設計思想や体験価値へのシフトを背景に、デザイン思考を推進!
2000年代終盤あたりから「モノよりコト」という考えが強まり、体験価値が重んじられるようになりました。この体験価値を提供できる手段がデザインです。この考えが浮上したことによって、デザインの意味が拡張しました。人を中心とした設計思想である「デザイン思考」は、広く浸透する以前から行ってまいりましたが、その対象が形ある製品に限らずサービスやコミュニケーション、ブランディングにまで及ぶようになりました。ソーシャルデザインのニーズを受け、行政のお仕事もさせていただいております。
また、それまではデザイン開発をゴールにした川上から川下までの企業や組織の作業プロセスをサポートしてきましたが、近年は、「人材や知財」といった経営資産を対象とするデザイン思考のワークショップのご依頼もあり、デザインを軸に幅広い活動をさせていただけるようになりました。また、市場や社会動向の変化が加速する中、新規事業開発やUXデザインなどのコンサルテーションも推進しております。労働意識や企業形態の変容に伴い需要が増すインナーブランディングやパーパスに関するご相談をいただく機会も増え、わたしたちもお客様と共に日々勉強をさせていただいています。
トリニティが行ってきたことをこうして振り返ると、時代の要請と共に成長してきたのだなと改めて思います。
メンバーも多様化し、今ではUXデザイナーや金融業界出身者もおりまして、わたしが入った頃に比べてだいぶ頭脳が拡張しました。手前味噌ですが、わたし個人としては、ハードとソフトの双方からデザインを捉えられることが弊社の強みと思っているのですが、メンバーの専門性がこれだけバラけているので、多様な視点やスキルを持っていることが本当の強みなのかもしれません。
これを書いているわたしは何をしているのか!?
最後にわたしは何をしているかと申しますと、デザイントレンド分析や商品デザイン開発のためのシナリオ策定などの業務に日々勤しんでおります。デザインのことを調べたり、そこから生活者の価値観やライフスタイルを洞察したり、市場や社会の動向と関連付けて考えたりするのが好きなので、その趣味を活かしてそれらのお仕事をさせていただいています。
この仕事には「情報力」が必要です。よく人からどうやって調べたり考えたりするのか聞かれます。元々好きでやっていることなので、ロジカルに説明できる方法論があるわけではないのですが、普段心掛けていることはあるので挙げさせていただくと、
① ほぼ一日中情報収集に明け暮れる。
ネット以外にもテレビやラジオのような受動的に情報が入ってくるメディアも欠かせません。通勤時間が長いので、駅や車内、街中で人をウォッチングするのも日課です。
SNSも重要ですね。書籍も有効な情報ツールです。
わたしは、演劇を観るのが好きなのですが、昔の小説を題材にした舞台を観てほほうとなることがあります。今から半世紀も前に書かれたものなのに未来を予言しているのではないか!?と感じることがあるので、過去の名作なども未来考察のヒントが得られて良いですね。
② 徹底的に調べ上げる。
情報を素材のまま扱うと表面的になるので、深堀りして理解を深めます。掘っていくと芋づる式に様々な情報が出てきて関係性が見えるようになります。それが大きくなると人々の価値観や時代の潮流が見えてくるのですね。
近年はデザインとテクノロジーが密接に関係しているのでテクノロジーについても調べます。技術者ではないのでわからないことが多いのですが、ない知恵を絞って理解に努めています。また、嘘があってはいけないので、正しい情報を入手するためにも深く調べることは必要不可欠ですね。
③ 自分の好き嫌いで判断しない。
これ、凄く大事です。どうしても自分の好みや価値観で良し悪しを決めがちですが、わたしはこの仕事に就いてからそれをやめました。例えば、自分とは年の離れたZ世代のトレンドであれば、Z世代の気持ちになって今ウケている事象をポジティブに受け止めます。何故それが好まれるのかも前向きに考えます。先日、SNSで若い人たちが句読点の「。」でチャットの文章を終えるとキツく感じるという話を投稿したところ、それを正すのが大人の責任とのお叱りを受けてしまいました。言葉の感じ方が世代で変わることが面白いと思ったのですが、そうは思わない方も多いのかもしれません。ですが、否定は思考を止めてしまうため、わたしたちの仕事ではご法度です。
④ 興味のないことにも関心を持つ。
難易度が高いですが、これも重要です。そういうわたしもこれができているか定かではありませんが、常に意識しています。偏った情報だけだと、読み解きの結果も偏ってしまいますからね。
⑤ 過去からの変遷で考える。
未来を知りたいというニーズがありますが、未来を予測するのには過去を知ることが最も有効だと考えます。歴史を紐解くと、その延長線上にあるこれからのことが何となくわかってきます。矢印の方向を見極める感じですね。
過去からのを変遷を辿る作業もやり始めると楽しくてのついめり込んでしまいます。
と、こんな感じです。
点と点を結び付けて線にして面にすることで見えてくることがあります。それが見えてくると色んな情報に触れることが楽しくなります。「目が開く」という感じでしょうか。わたしの仕事は、そこに行き着くまでの作業を代行しているような感じです。
今回は、わたしが勤務しているトリニティについてとわたし自身の仕事についてお話しさせていただきました。
トリニティアカウントでのnoteは、わたしと同僚の内藤亜由子とで展開する予定です。彼女はUI/UXデザイン専です。しばらくはこの二人でデザインにまつわる楽しいお話をお届けできればと考えていますので、引き続きご拝読いただけると嬉しいです。
篠崎美絵
トリニティ株式会社 執行役員 デザインコンサルタント・クリエイティブ・ディレクター
インテリアデザイン事務所でファッションブランドのブティックをはじめとする商業空間の内装設計に従事。ミラノ工科大学にてデザイン戦略のマスターコースを取得後、2003年にトリニティに入社。
デザイン、カルチャー、ライフスタイルの観点から消費者価値観や市場の潜在ニーズを洞察し、具体的な商品/デザイン開発のアイデア創出のためのコンセプトシナリオ策定、及びトレンド分析を行うデザインコンサルティング業務を担当。