見出し画像

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

今月7日に「本屋大賞ノンフィクション本大賞」を受賞した「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ・著)を読了しました。

優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。落涙必至の等身大ノンフィクション。

似たような年頃の子供を持つ親として、非常に興味深く読みました。Kindle版を読んだので、感銘を受けたページを何度もスクリーンショットでメモ代わりに残したり。

実は、我が家も2011年から2015年までイギリスのスコットランドに住んでいたんです。その際、娘は現地の小学校に1年生から2年生まで通いました。なので、ある程度のリアリティを感じながら読み進めました。

けれど私立校だったので、ブレディ家の息子さんたちの学校が水泳大会で対決したような学校だったんです。人種の多様性こそありましたが(ブレディさんの本でも、良い学校のほうが多様性があると書かれていましたね)、家庭の経済状況はほぼ均一。お金に困っている家庭では通えない学校でした。
(我が家は当時は駐在員待遇だったので、会社の補助で通えました。)

ただ、現地の公立校にお子さんを通わせていた方のお話を聞くと、(ブレディさん言うところの)底辺校ではなくても、本で語られている状態とそれほど変わらない状況だったようです。クラスの半分以上が生活保護またはそれに近い状態だったと聞いた記憶があります。

人種差別でいうと、私が住んでいた街は差別はすくなかったと思います。
子供が通っていた学校の保護者達は、実際のところ有色人種にどのような感情を持っていたのかは分かりません。けれど、それを表に出さない教養と社会性がある人達ばかりだったので、特に嫌な思いはしたことがありません。

けれど、小学校に通う前に行っていた保育園では、時々「あーこれは」と思うこともありました。娘がいじめられるようなことは一切なかったのですが、保護者の中に「絶対あいさつを返してくれない人たち」が何人かいたんです。目を合わさず、聞こえなかったふりですれ違っていきます。

どんな人たちが、こういうことすると思います?

なんとね、自分たちも外国にルーツをもつ移民たちがほとんどでした。
東欧系の母親、南米系の母親、アフリカ系のおばあちゃん(この方の娘さん、つまり園児の母親はフレンドリーな方でした)。
なんかね、こういうのちょっと切ないですね。ご自分たちも、異国からイギリスに移住してきて、きっとご苦労があったと思うんですよ。それを別の移民に投げ返すって、ヘイトの申し送りをしているようで。とりあえずそのヘイト申し送りは、私のところでせき止めておきましたが。

ブレディさんの本は印象的なエピソードばかりでしたが、その中でもあえてひとつあげるならば、「いじめが正義感の暴走から起こった」という箇所でしょうか。ブレディさんの息子さんのお友達で、ちょっと「クラスで困った子」扱いの子がいます。親の影響で、差別的な発言をする生徒なんです。その子の考えを糾弾する部外者(クラスメート)たちが、正義感を暴走させていじめに発展させてしまうという流れには寒気を覚えました。確かに感心できない発言が多い子のようですが、それはいじめを享受しなくてはいけないということではありませんよね。集団心理の恐ろしさを見せつけられた気がします。

他にも、自分の娘にFGM(女性器切除)を施術させるのではという疑惑を持たれたアフリカ系の母親とのエピソードなど、深く考えさせられるエピソードばかりでした。
折に触れて、何度も読み返していきたい本です。

==========お知らせ==========

電子書籍出版しました!
(Kindle版)「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間
(紙版)「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

レギュラーで書いている主な執筆媒体のご紹介です。
ぜひ読んでみてください♪

「イエモネ」(NEW!)
https://iemone.jp/article/lifestyle/naoko_kurata_518/

「現代ビジネス」(不定期掲載)
http://gendai.ismedia.jp/list/author/naokokurata

「Glolea!」(プロフィール&執筆記事一覧)
http://www.glolea.com/ambassador/kurata-naoko/profile

「未来住まい方会議」(執筆記事一覧)
http://yadokari.net/author/kurata/

「TABIZINE~人生に旅心を~」(執筆記事一覧)
http://tabizine.jp/author/kuratanaoko/

「ima(今) 海外リポーターが伝える世界の生活情報サイト」 (執筆記事一覧)
http://ima-earth.com/contents/profile.php?userid=kurata


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?