「6歳までに脳の90%が完成」に潜む大きな嘘。(5min)
今日は僕の専門である脳科学のお話。
教育に関心の高い人なら一度は耳に(目に)したことがある、この記事のタイトルにもなっている言葉。
言い回しは少し違うこともありますが、
・4〜5歳で脳の70〜80%ができる
・6歳までに脳の9割が完成する
こんな感じですね。
これらを謳い文句とした幼児教室や能力開発教室も、数多く目にします。
ただ実は、この言葉には「大きな嘘が潜んでいる」ということをご存知でしたか?
「6歳で9割」の根拠とは?
これらの言葉は、アメリカの医学者・人類学者であるスキャモン(Scammon)の”The measurement of the body in childhood (1930)”という論文が根拠とされています。
論文の中にある上の図は、日本では「スキャモンの発達・発育曲線」という名前で有名です。
この図は「出生時(0歳)を0%、20歳の時を100%としたときに、何歳時点で何%発育しているか?」を表した図です。縦軸が発育度合い(%)、横軸は年齢(歳)になっています。
図の中で英語で”Neural Type(神経系)”と書いてある部分が、脳などの中枢神経の発育を表している部分(真ん中付近のー ー ー ー ー ーの線の部分)です。
一体何が嘘なのか?
この図を見ると、確かに6歳時点では90%に達していますね。
しかし、ここで大事なのは「その発育をスキャモンは何で測定したのか?」という部分です。当時、スキャモンはこの発育を「サイズ(大きさ)や重量(重さ)」で測定しています。
これは"Growth, Maturation, and Physical Activity(P13)"にも書かれており、
これらの組織(脳や神経系など)は出生後の早い段階で急速な成長を経るため、中枢神経系および関連する構造の"サイズ"の合計およそ95%の増加は、約7歳までに達成されています。(和訳は石橋による)
つまり、子どもの中枢神経系のサイズが7歳までに95%に達するということです。
ただ実は、現在の脳科学では、「脳のサイズ(重さや大きさ)は、知能とはほぼ無関係」だということが分かっています。
よく考えてみると、人間より重くて大きな脳を持っている大型動物はたくさんいますよね。しかし「彼らは人間よりも高い知能を持っているんだ」と言う人は少ないでしょう。
ちなみに、天才科学者であるアインシュタインの脳は人間の平均よりも小さかったそうです。
何が知能を決めるのか?
それでは、何が私たちの知能(記憶容量や処理速度・精度)を決めているのでしょうか?
最新の脳科学の研究では、脳の「大脳皮質」という部分にある神経細胞(ニューロン)やグリア細胞、その細胞同士をつなぐシナプス等の"数"が関係していると言われています(論文例)。
またアインシュタインは、頭頂葉という部分のグリア細胞の数が多かったことがわかっています。
そして一説によると、脳の神経細胞(ニューロン)の構造や数は生後1〜2ヶ月で既に大人と同じになっているそうですよ。
人間の脳って、そして赤ちゃんってすごいですね。
まとめ
脳科学的に見ると、6歳までに脳や中枢神経が90%の大きさにまで発育するからと言って、そのことは子どもの知能とは全くの無関係です。
その時期に過度なパターン学習や詰め込みをするのは”完全に無意味”と言わざるを得ません。
【今日のまとめ】
①発達曲線は、大きさや重さを測定したもの。
②脳の大きさも重さも、子どもの知能の発達とはほとんど関係ない。
これからは「◯歳で◯%〜」のような文言を目にしたときには、内容をよく検討して、それがお子さんにとって良いものかそうでないものか、しっかりと判断していただければと思います。
ただ、子どもの頃にやっておくとよい学習があることは確かです。
特に、私の教室で実践している「お絵かき学習」はかなり効果的です。
全ての子どもたちが持っている力を健全に伸ばし、自由な創造的思考力と超高度な学力を手に入れることが出来ます。
このお話についてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
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