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ルクセンブルグ・フランがないっっ。だけど頑張った一人旅。 その7

「もうすぐ来ると思う」
 私は強がりを言った。
 どうしておじいさんが疑問を持ったのかは謎だけれど、それだけ待っている時間が長かったのだろう。
 その後また別行動をしている時、やっと琴美ちゃんが来てくれた。いつも笑顔がすてきな彼女だけれど、この時は本当に女神のように見えた。
 助かった。
 本当に心からそう思った。
「車あっちに止めてあるから」
「ちょっと待って」
 私は琴美ちゃんに頼んで、少し待ってもらった。
 それで何をしたかと言うと。
 おじいさんを探したのだ。
「従妹来たから行くね。バイバイ」
 とだけ言うために。
 それは。
 私がウソつきではかったことを証明したかったのかもしれないし、とんでもないアクシデントの時に一緒にそばにいてくれてありがとう、とお礼を言いたかったのかもしれない。
 あれから幾年月。
 私は、この日のお陰でトラブルが襲ってきても、大抵のことは乗り切れるという自信がついた。こんなことは、できることなら経験しない方が良いのかもしれないけれど、体験してしまったのなら、それを逆手にとって人生の経験値を上げていこうではないの。
 そう思うことにしている。
 今でも時々薄紫色に包まれたルクセンブルグ駅構内の風景や匂いを思いだす。
 もちろん、あのおじいさんもことも。
 EUになったら、と心配していたけれど、今やルクセンブルグは世界一お金持ちの国として名を馳せている。
 森と渓谷に囲まれているというのに、GDPは日本の2、6倍もある。
 おじいさんの心配は、杞憂だった。
 そのことを、知っているだろうか。
 この旅をしたのは、もう30年以上も前。その当時70歳だったとしたら、もしかしたらもうこの世にはいない可能性もある。
 じゅうぶん、ありうる。
 けれども、その成長の兆しくらいは見届けているかもしれない。そうであってほしい。
 あのため息まじりの嘆きを思いだす度、そう願わずにはいられない。
 忘れがたき旅の一日。
 私の心のひだにいつまでも。


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