命日まで一緒? どこまで仲良いの? 寺山さんと唐さん。その2
これも寺山さんらしい、と今では思うけれど、せっかく行ったのに見えない場面があるなんて、ちょっとがっかりしたのを覚えている。
さらに。
すぐ近くの人が叫びだした。
怖い。
お客の中に、役者が混じりこんでいたのだ。本当に、びっくりしたし、あまりの恐怖に途中退場してしまおうか、と思ったくらいだったけれど、生の天井桟敷を観ることができて、本当に良かった、と今では思っている。
演劇の他にも、映像に関するイベントにもお邪魔した。ゲストで寺山さんも来ていたので、
生身の彼を見ることもできた。
ちょうどビデオが普及し始めた頃で、同じ作品をフィルムとビデオで撮って、その違いを見てみようというような企画だったと思う。
寺山さんは、その説明をして、
「では実際に見てみましょう」
と言った後、なんと床にごろんと座ってしまった。
え。
そこは、池袋にあった小さなホールで、椅子席。確かに満席ではあったけれど、床に座っちゃうの? と驚いた。
あのサンダルで・・・。
寺山さんは、いつもデニム生地のけっこうかかとの高いサンダル(昔だったら「ぽっくり」と表現していた)を履いていた。
私は、それをこの目で見ることができて嬉しかったけれど、
「あ、ほんとうにいつも履いてるんだ」
とついついサンダルに目が行ってしまった。
寺山さんの死後、青森県の三沢に記念館が建てられた。訪れたら、そのサンダルが飾られていて(正確には遺品の机の引き出しを開けると、その中に収納されていた)、かえって寺山さんの不在を痛感した。
1983年5月4日。寺山さんは、47歳で短い生涯を閉じる。寺山さんは、どちらかと言うと海外での評価が高かったけれど、逝去のニュースはテレビでも流れたし、ワイドショーでも葬儀の様子はオンエアされていた。