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ルクセンブルグ・フランがないっっ。だけど頑張った一人旅。 その6

 けれども市井の人は、こんなふうに思っているのだ。
 これこそが旅の醍醐味、と胸を張って言うには、トラブルに巻きこまれている最中のため、そこまで大きなことは言えない。けれども世界は広く、私は小さいな、と痛感した瞬間だった。

 その2,3日前、宿泊していたガストハウスの一階のバーでビールを飲んだ時にも同じような気持ちになった。母は、お酒を飲まないし、外国人とコミュニケ―ションを取るのも好きではないので、一人で行ったわけだけれど、そうすると色々な人に話しかけられる。
 この時も男の人が寄ってきたけれど、何かあったらガストハウスのオーナーに言えば大丈夫だと思ったので、普通に質問に答えていた。
 日本から来たと言ったら、
「僕はタイとフィリピンに行ったことがある」
 とその男。
 どうして、そんな他の国の話をするのかな? と思った。
 けれども。
 ヨーロッパ人にとっては、タイもフィリピンも日本も同じ。東南アジアの遠い国なのだ。
 それに気づいた時、男のことをあながち笑えないな、と思った。 
 世界には色々な価値観を持つ人がいて、様々な環境で暮らしている。
 彼は、買う物によって国境を越えていると言っていた。たしか煙草を買う時はルクセンブルグに行っていたはず。課税額が安いとか何とか。
 EU以前でも、車なら緩い感じで国をまたいで運転できていたのだ。
 日本からルクセンブルグに到着し、琴美ちゃんの車でドイツに入国したのだけれど、あまりに簡単なので、わざわざブースに行ってスタンプをもらったほど。
 今はたとえ飛行機で入国をしても、ほとんどが自動化されていてスタンプを押してはくれないので、少し寂しい。

 夜のルクセンブルグ駅に戻ろう。
 おじいさんと私はずっとべったり一緒にいたわけではなかった。どちらかがトイレに行ったり、場所を変えたりして、別行動の時間もあった。
 何回目かにまた隣同士に座った時、
「従妹なんか来ないじゃない?」
 と疑われた。
 かれこれ2時間は経っていた。内心私も、
「遅いなぁ」
 とは思っていたけれど夜で暗いので、安全運転で向かっているのかもしれない、と良い方に考えていた。

#わたしの旅行記

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