命日まで一緒? どこまで仲良いの? 寺山さんと唐さん。その4
その後唐さんは小説を書いて芥川賞を受賞したりもしたけれど、他の劇団を立ち上げたりして、ずっと演劇にはかかわってきた。それでも、やはり80歳を越えて病気と闘っていたのだと言う。
そして、息を引き取ったのが5月4日。
2人の運命的な何かを感じる。
唐さんは、年齢からしてある意味天寿をまっとうしたと言えるけれど、寺山さん亡き後頑張ってきたと思うから、本当に、
「お疲れ様」
と声をかけたい気分になった。
5月4日は、3日の「憲法記念日」と5日の「こどもの日」に挟まれ、所在なげな日だったけれど、平成元年に「国民の祝日」になり、その後「みどりの日」という名前になった。
その日私はいつも寺山さんのことを思っているけれど、来年からは唐さんのことも偲ぶ日になる。
時代を駆け抜けた2人。
今あちこちの町で町全体を使って謎解きゲームのようなイベントが繰り広げられているけれど、私は、何十年も前に寺山さんが仕掛けた市街劇「ノック」を思い出す。あいにくこのイベントにも間に合ってはいないけれど、町そのものを舞台に同時多発的に演劇が繰り広げられ、時に市井の人を巻きこんで、騒ぎになったりしていたらしい。
とてつもなくリスキーな企画。通報されてしまうかもしれない。でも、それだからこぞ面白味も増していたのだろう。
そう。
そもそも演劇はいかがわしくて、人から後ろ指さされるようなものだったのだ。そして、その魅力に取り憑かれた人は、そう簡単には抜け出せないようになっている。それは、観客も同じこと。
目の前で繰り広げられる役者たちの迫力に圧倒され、現実とは違うところへいざなってくれる。
2人は、この世を去ってしまったけれど、彼らの思いを継ぐいわば生き血を飲んだ人たちは、まだたくさん地上に存在している。それがせめてもの救い。
だからまた劇場に足を運ぶことにしよう。
私にとって5月4日は「寺山・唐記念日」となった。
完