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ある意味では良いか
仕事において「こだわり」を持つことは、
その人の誇りや美意識を示す証だ。
磨かれたこだわりは、完成度や成果に現れ、
それを見た人に深い感動を与えることすらある。
何気ない一言、目に留まらない動作、
小さな選択の積み重ねが、
気づけば大きな違いを生む。
そんな美しいこだわりは、言葉にしなくても伝わる。
手を抜かず、丁寧に向き合い続ける姿勢が、
自然とその場の雰囲気を変えていくのだ。
ただ、どんなに美しいこだわりも、
執着の一線を越えた瞬間にその価値を失う。
「こだわり」と「妄執」は似て非なるもの。
こだわり続けることが自己満足になり、
その目的や意味を見失うと、
いつしか周りを押しのけ、犠牲を強いるものになってしまう。
妄執に囚われた状態では、
本来の目的や理想を達成するどころか、
状況を悪化させることすらある。
本人がそれに気づく頃には、
失った時間や信頼を取り戻すのは困難だ。
もし、その情熱を注ぎ込む先があるなら、
仕事の現場ではなく、芸術や創作活動がいい。
そちらなら、自己満足も許され、
誰にも迷惑をかけることなく、自分だけの世界に浸ることができる。
しかし、仕事という場ではそうはいかない。
仕事はあくまで、多くの人が関わる共同の営みだ。
個々のこだわりが衝突し合う場所でもある。
仕事において、こだわりを持つことは確かに大事だが、
そのこだわりが自己満足の域を超え、
柔軟さや現実対応力を失ってしまったとき、
それはただの障害になる。
なぜなら、仕事の現場は生き物のように動き続けているからだ。
状況は刻一刻と変わり、
昨日までの常識が今日は通用しないこともある。
同じやり方を繰り返すだけでは、
その変化に置いていかれてしまう。
だから、こだわり以上に求められるのは、「取捨選択」だ。
すべてを追い求めるのではなく、
優先すべきものを見極め、
時には未練を断ち切って進む力が必要だ。
それに加えて、重要なのは「先回り」だ。
今起きていることだけでなく、その先を読む。
数手先を予測し、状況をコントロールする視点を持つこと。
そして最後に、「直感」が役立つ場面もある。
直感は、経験や知識の積み重ねから生まれるものだ。
論理だけでは解決できない瞬間、
その場を切り抜けるヒントを与えてくれることがある。
しかし、これらすべての力を発揮するには、
「観察」する姿勢が不可欠だ。
目を逸らさず、耳を傾け、
その場の空気を感じ取ること。
目を離した瞬間に状況は変わる。
一度見逃せば、次の機会はもう訪れないかもしれない。
仕事におけるこだわりは重要だ。
ただ、そのこだわりが執着に変わらないよう、
適切な距離感を保つことも同じくらい大切だ。
こだわりを光らせるためには、
柔軟さを失わず、状況の変化を受け入れる軽やかさが必要だ。
何が大事かを見極め、
ときには大胆に捨て去る覚悟を持つことで、
そのこだわりは一層際立つ。
仕事におけるこだわりとは、
自分の美学を守りつつ、状況に寄り添い、
周りと調和することができて初めて、
本当に価値あるものになるのかもしれない。
だからこそ、こだわりに飲まれることなく、
その先にある景色を見据えて進むことが大事だ。
光るものを追いかけながらも、
心は軽やかでありたい。