古事記をはじめて学ぶ-08 出雲口伝に接して考える 家族神と母系社会について
1. はじめに
今、ゴタゴタで話題となっているフジテレビが、昨年末に放映した「全領域異常解決室」に古事記ゆかりの神々が登場します。宇迦之御魂神、天宇受売命、興玉神、猿田毘古神、豊玉毘売命など神々の力が異次元なのです。そこで、古事記について学びを始めました。
古事記を分かりやすく解説した本も購入しながら、学びを少しづつ広げ、深めています。
2. 出雲口伝による本を入手
先日、大元出版の出雲王国とヤマト政権:富士林雅樹著を手にしました。早速読んでみました。私のような浅い学びでは少し読み辛いですが、時間をかけて表面的な部分は読み終えました。
3. 出雲族の故郷と信仰および社会制度
出雲王国の皆さんは、渡来系であり、約4,000年以上前にインドのクナ国から移住してきた人々。バイカル湖周辺を経由し、アムール河を経て、樺太、北海道、本州青森の三内丸山遺跡を経て南下。その後、島根県出雲地域に定住したそうです。
クナ国から続く古代出雲は母系家族であり、日本で最初の人格神サイノカミ信仰の一族のようです。サイノカミ信仰では、主神が久那斗の大神。妻神が幸姫命、息子の神はサルタ彦大神です。出雲国に住むすべての祖先神を、このサイノカミと崇め成立した信仰となっているようです。
サイノカミ信仰は、王国の人々の幸福について、暖かな幸せな家族から幸福が生まれ、強き願いとして家族円満、子宝、子孫繁栄を願い、結果的に王国の繁栄へと繋がる信仰であると思われます。人々にとって最も受け入れやすい信仰だと思われ、現在の私たちにも繋がる思想・信仰、そして思い・愛だと感じます。
だからこそ、出雲王国は広大し、繁栄していったのかもしれません。
私の住まい近くの才の神のエリアも、このサイノカミから繋がっていると、強く感じめています。
サルタ彦大神について、猿田彦は後世に当て字としてつけられた名前で、猿とは無縁の神でした。
サイノカミ信仰は母系社会を形成し、包み込む暖かさで人々をまとめ上げていく社会であり、言葉でまとめ、統制された組織体と考えられます。だからこそ、今でも言霊として、私たちの中に埋め込まれているのかもしれません。
母系社会は、身体を最大限に用いる戦争、戦を好みません。現在、世界各地で行われている大きな戦争はサイノカミ信仰によって終えることができないものかと考えてしまいます。おそらく、サイノカミ信仰では、戦いによる死は、否定されていると思います。
その結果、国譲りの物語へと繋がったのでしょうか。
しかし、家族のつながりを崩壊させる暴挙と攻撃を受けたならば、いくらサイノカミ信仰といえど戦う集団と化すと思われ、容易に国譲りの物語を受け入れることは難しいと思われます。
4. 初の統一国家
この本を読みますと、日本の最初の統一国家は出雲国である様子がはっきりと伺えます。その統一国家のエリアは、九州北部から新潟県に至る領域、そして場合によっては関東地方全域や島根県への到達途上であった東北地域も含むのかもしれません。これは、統一国家と呼ぶにふさわしい国家が大和王権前に形成されていたと考えられます。
17代の国王が記されていますので、ザっと300年ほど前に、出雲王国は成立していたと思われます。大和政権は大和朝廷が基礎となり成立していますので、2世紀ごろから大和朝廷の時代となります。この点から考察しますと、出雲王国は紀元前1世紀頃には、誕生していた可能性があります。
私たちは、最初の統一国家は大和王権として学びます。この理由は古事記、日本書記に沿った学びが行われたということになります。
この大和王権は、父系社会です。したがって、古代日本のどこかで、母系社会から父系社会への転換点があったのかもしれません。
その転換点が国譲りなのでしょうか。そして母系社会の出雲王国を父系社会の大和王権が武力で制圧し、国家統一と成したのでしょうか。
5. 記紀に組込まれた筋書き
一方で、記紀に出雲王国は登場しません。黄泉比良坂が出雲国の伊賦夜坂であると記述されておりますので、出雲地域が舞台であることは読み取れます。その後、古事記はヤマタノオロチの話を出雲地域中心に展開します。最終的に古事記上巻を手にした読者は、国譲りの部分を読み、大和王権に地方の出雲族が屈した形になります。
今回の本によれば、出雲王国と大きな戦が行われておりました。記紀では、統一国家形成のため、「出雲族を大和王権が統治して、これで統一国家の誕生となった」との筋書きコンテが作成され、各地の戦争や事件をはめ込んで物語を作り込んだのかもしれません。膨大な記憶量を有した稗田阿礼だからこそ成し得たのでしょうか。筋書きコンテの作者は、藤原不比等でしょうか。
この度、古事記をはじめて学び、古代日本の形成に大きな関心が浮かんできました。信仰、社会制度、武力、経済など含め、多くの興味が沸き始めています。
古事記、日本書記は物語ですので、物語の根元部分は何かの事実や類似事件があり、記紀の中にこれらの事実を変化した形で組み込んで物語化してきたと思われます。
今回の出雲王国とヤマト政権を読みますと、東の富家と西の郷戸家が交互に王となり、17代の遠津山崎帯まで続いています。8代は八千矛(大国主)となっていますので、古事記上巻の多くは出雲王国について記述されていると思われます。
古事記の中巻は神武東征の物語です。ここには渡来人徐福の2回目の渡来が関わっているようです。
6. 今回のまとめ
出雲口伝を基礎にした「出雲王国とヤマト政権」を読み、日本の最初の統一国家は出雲王国である点が見えてきました。しかし、大和王権側の作である記紀にその旨は記されていません。大和王権が神世と直接繋がっている点を明確に伝えるように、出雲王国の内容を古事記上巻に物語として閉じ込めた様子が伺えます。もちろん、出雲口伝は出雲側の視点で構成されていますので、他の一族視点も必要かと思われます。場合によっては、他の一族の口伝には出雲口伝にはない逆説があるのかもしれません。
出雲王国のサイノカミ信仰が家族神であり、出雲王国は故国インドのクナ国から持ち込まれた母系社会でした。武力で勝る父系社会を有する大和王権に倒され、現在の日本の国家が形成された様子が伺えます。
今後、この本を皮切りに、大元出版の本をいくつか読みながら、出雲口伝の全体像の把握を進めてみたいと思います。
登場する人名・地名はドンドン変化していく日本の古代史ですので、上手く追いかけられるように読み込みする必要がありそうです。さらに地域も飛びますので、年代や地域、神社なども押さえながらゆっくりと味わいながら進めて参ります。そして神武天皇から持統天皇までの流れと口伝との対比など整理できるように何度も読んで進めていきたいと思います。