筋肉が足りなかった…介護の経験で気づいた、健康習慣の必要性
あなたが運動習慣を身につけたきっかけは、何でしたか?
自分の体力不足や、健康の大切さに気づいた瞬間がありませんでしたか?
先日ウォーキングをおすすめする話を書いたあと、ふと自分の運動歴を振り返ってみたら、まったく偉そうに言える立場じゃないな! と思いました。
運動は苦手、体力のなさが悩み
思いかえせば、子どもの頃から体育が苦手で、社会人になってからもずっと長い間、運動と無縁の生活をしていて、運動不足には自信がありました。
毎日忙しいし、仕事も趣味も文化系を自称し、運動するのはもともと運動が得意な人でしょ? と思っていました。
そもそも、運動どうこうではなく、体力に自信がありませんでした。
20代の頃から、同じパソコンワークをしていても、仕事仲間のライターさんとは体力の差がありました。
取材や打ち合わせに出かけて、帰ってきたらぐったり疲れていて休養が必要になる。
一日椅子に座っていると、眠くなるよりも前に背中が痛くなってきて、集中力がもたなくなる。
同業者が2〜3日徹夜で原稿を執筆できるのに、自分は寝不足になると進まなくなってしまう。
こんな愚痴を母に言うと、「私も、あんたのおばあちゃんも、買い物から帰ってきたらちょっと横になるほどで、疲れやすくて体力がなかった。遺伝だからしょうがないよ」と言われ、納得せざるをえませんでした。
周りに影響されて30代で「ジムに行くぞ!」と行動しましたが、お試しの初日に、ランニングマシンで早足で30分歩いても汗の一滴も出ず、「私の身体っておかしいんじゃない?」と思いましたよ。
結局、半年ほどで足が向かなくなり、行くのが面倒になってきて、それでも「お金払ってるんだから……」を励みに続けようとしましたが、結局行かずにお金だけ毎月払うのがバカバカしくなり、やめてしまいましたっけ。
そんな私が、どうして「運動しよう。筋肉つけよう」って思ったのか。
考えてみたら、遠ざかっていたことを思い出しました。
運動に対する意識が変わった体験、あなたにもありませんか?
介護がもたらした気づき
6年前、私は母と父と、3人で暮らしていました。
70代後半の父は認知症が出て、少しずつ生活の中でできないことが増えてきており、言葉も通じにくくなってきていました。でも、一人でトイレにも行くし、みんなで同じ食事を食べて、穏やかに過ごしていました。
そんな父が腰を骨折して入院し、退院後は介護生活が始まりました。
朝夕父の体を拭く。介護ベッドで、父の体位を変える。おむつを変える。また転んだりしないように注意しながら、車椅子に移乗してもらう。汚したものを洗う。私や母の食事とは別に、父のお粥やミキサー食を作る。
やることは多いのですが、私と母とで手分けすればできると思っていました。
でも、二人で手分けしても圧倒的に足りなかったのが『体力』でした。
大人の身体って、重いんですよね。
父は私と同じくらいまで体重が軽くなっていました。
でもそんな父を起こすのも転がすのも一苦労でした。一日に何度も、何度も。二人とも腰痛になって、腰痛バンドを買ってきました。介護の素人ですから、コツも技術もありませんでした。
動かされる父もしんどそうでした。
慣れない私たちの世話で、帰宅を喜んでいた父もだんだん顔色が悪くなり、笑わなくなり、そして誤嚥性肺炎で再入院。
くたくただった私たちは、すっかり体調を崩し、その後夏風邪までひいて、長く引きずりました。
頑張ってもどうしようもないこともある。無力感を感じました。
父は自宅で暮らすのが難しくなり、施設でプロの介護を受けることになりました。
介護してくださる方の身体や腕や脚は頼もしく、私や母が難儀していたようなことを楽々とあぶなげなくやってくださいました。一度頑張った身としては、それがとてもすごいことだというのがわかりました。
──あの筋肉が欲しい! 自分にあの筋肉があれば、父はもう少し自宅で暮らせたのでは?
痛切に、そう思いました。
実際は、わかりません。父の衰えが早かったので、難しかったかもしれません。また、筋肉だけではなくスキルの問題もあるでしょう。
でも、「平穏な暮らしに筋肉は大事」という意識が、このとき刷り込まれたのです。
平穏な未来のために、今できること
そんなわけなので、私の「運動しましょう。すべきです。歩きましょう! 平穏に明日も暮らすために」は、50代の自分と80代の母、両方に通じる願いなのです。
自分も元気でいたいし、母にも長く元気でいてほしい。
何より、そう意識することで日々を楽しくしたい。
おもしろいもので、自分が運動を意識しはじめると、母も母でラジオ体操したり歩いたり、運動に興味を持つようになりました。
「健康な老後のために」と、どこか現実感なく思うだけでは、面倒くさがりやはなかなか行動できませんよね。そうですよ、そんなもんです。
でもどこかで痛い思いをして、「自分はダメだった、このままじゃダメだ!」って思ったら、そこが行動の変え時、大きなチャンスなのではないでしょうか。
変えるのはちょっとだけでいいと思うんです。
今、まずは一歩、何かを始めてみること。
それが、将来の大きな変化につながるはずです。
5年後には「ウォーキングが趣味の人」になってるかもしれませんよ。