三方の小品【44:風鈴】
風鈴
風鈴 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
一年で一番長い昼間のその日、少女はあるものを探していた。ガサゴソガサゴソ、こっちでもない。ガサゴソガサゴソ、この箱も違う。
丸眼鏡の奥にちょっぴり涙を滲ませながら、幾つか目の箱を開けたその瞬間。
「あった!」ぱあっとその場が明るくなったかのように感じられるほどの満面の笑み。
箱の中から取り出されたのは、これまた四角い小さな無地の箱。両の手に乗っかるほどのその箱は、ちょっぴり軽そうで、ちょっぴりおもたそう。
リビングまで大切に持ってきた箱の蓋にそっと手をかけて、中から取り出したのは白地に青い染料で絵付された和風鈴。
やわらなガーゼで拭いて、軒先にそっと取り付ける。
ちりん……ちりりん…!
小さくも大きな存在感と、爽やかな姿でなんとも涼しげな音を響かせる。
一年で一番長い昼間のお役目を終えた太陽が沈む頃、柔らかな風に揺られてちりりと鳴る風鈴を見上げる少女の顔には特大の笑顔が浮かんでいた。
初出:2022年6月23日
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