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#ミニエッセイ
三方の小品【65:誕生日】
誕生日誕生日 (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
たっぷり吸い込んだ息を吐くと白くなるかならないか、そのくらいの季節。 金木犀の香りがしなくなって、カボチャ大魔王が街から消えて鈴の音が聞こえ始める、そのくらいの季節。過ぎ去りゆく年の戸締まりを始めて、新たな年の足音が聞こえる、そのくらいの季節。
限定のメニューと、特大の感謝の気持ちをこめて幕を開けるその一日。 西洋では、本人が家族や友人
三方の小品【64:プラネタリウム】
プラネタリウムプラネタリウム (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
夜が好きだ。
いつだって夜の帳が下りる中で蝋燭の灯りを灯していられたならば……と、思うけれどもそうもいかない。
しかし、そんな時に合法的に夜の時間を伸ばすことができる、そんな夢の空間がある。
まんまるドーム、薄暗い闇、きらりんと音楽が鳴り始めれば、頭上は満天の星々。さながら自分も星になったかのよう。
大空に抱かれて心地よく
三方の小品【61:オートミール】
オートミールオートミール (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
オートミールをコトコトと、弱火にかけてミルク粥。
憧れの暖炉にお鍋ではないけれど、燻る白い煙は良い香りで。
視界をふわりと白く包み込む。
危ない危ないと首を振ればもう火から下ろすタイミング。
お皿にテキパキと分けるが、なんだかその数が多く見える。
いつもちょっぴり余計に作るのだ。それはもしかしたら、誰か旅の者がお腹を空かせて
三方の小品【59:乾杯】
乾杯乾杯 (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
さあ一緒に乾杯をしましょう それぞれの好きな飲み物持ち寄って
簡単でよければ 挨拶をしましょうか
愛おしいこの瞬間を両手で包み込みながら
今この瞬間に まあるい銀河の中で確かに乾杯をしているという事実が こそばゆく心を躍らせる
大袈裟だなんて笑っていたあなたも 掛け声を言わないあなたも
いつの間にかどこか心躍っているのに 本当はもう気がついて
三方の小品【58:お城】
お城
お城 (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
いつかあんなお城に住めるかしらと考えていたのは、もう遥昔のお話。扉の札を閉店に変える。
無邪気にドレスにティアラに着飾って、いつかそう、森の中から連れ出してもらえるかもと夢見ていたあの日々。
いつしか待ちくたびれて眠ってしまった、あの満月の夜の記憶も薄れ始めている。
コーヒー、ココア、ウイスキーにワイン。数えきれないお気に入りの中から、ち
三方の小品【57:サンセット】
サンセット
サンセット (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
稲村ヶ崎へ急ぎ足。
公園までは歩きで少し時間がかかる。暮れ始めた空を見上げながら、歩を進める。
上がる息を抑えながら、階段を一気に駆け上がる。後もう少し、後もう少し。ぐっと踏み込んだ革靴のラバーソールが砂利を掴む。
上がりきった時は、切なくあたりを照らす陽の光が消えようとする瞬間だった。
大いなる山の冠に吸い込まれていく太陽は
三方の小品【56:温泉】
温泉
温泉 (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
”温泉”と聞いて、何を思い浮かべますか?
日本では古来より”湯治”と言って、湯に浸かることで健康を目指したり身体を休息させたりする習慣がありました。
地中から湧き出でる湯をなんとかして溜め込み、自由に浸かれるようにしたのが温泉施設です。
一口に”湯”と言っても、サラリとしていたり、とろりとしていたり、シュワシュワとしていたり……。
肌に絡
三方の小品【55:スマホ】
スマホ
スマホ (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
薄明かりを放つその向こう側に いつも私は語りかけている
それは手のひらにおさまる小さな板だけれど 単なる板ではないのだ
なんと世界と繋がることのできる 不思議でスペシアルな板なのだから
昔よりちょっぴり技術が発展して この世界には我々の目に見えない蜘蛛の糸が張り巡らされているのだそうだ
その様を想像するとちょっと息苦しいけれど 息苦し
三方の小品【54:季節】
季節
季節 (テキスト版)内容は上の画像と同じです。
カレンダーを、めくる。今月の予定を指でなぞりながら確認していく中、暦の上ではなんとかと特別な名前がつくだけで、なんだかうまく季節を一つ進められたようなそんな気持ちになる。
望もうと望むまいと平等に月日は流れ、季節も流れていくのだけれど。そっとひと掬いの1日に名前をつけて、特別に過ごすだけでより愛おしく感じられるような。
薄紅の満開の花咲き