三方の小品【65:誕生日】
誕生日
誕生日 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
たっぷり吸い込んだ息を吐くと白くなるかならないか、そのくらいの季節。 金木犀の香りがしなくなって、カボチャ大魔王が街から消えて鈴の音が聞こえ始める、そのくらいの季節。過ぎ去りゆく年の戸締まりを始めて、新たな年の足音が聞こえる、そのくらいの季節。
限定のメニューと、特大の感謝の気持ちをこめて幕を開けるその一日。 西洋では、本人が家族や友人らに対しておもてなしをするのがこの日の習わしなんだとか。そんな淡い記憶をたどりつつ、しっかりと頭の片隅にいつでも浮かぶのはいつもの顔たちで。
この夜が明けるまで、今日は主人公で王様でお姫様でありたい。 祝福の声に包まれながら想うのは。 次の一年も命を燃やしてこの星で生きようと誓う、小さいけれど確固たる宝石のような想い。ありがとうと嬉しいと幸せの詰まった輝きを胸にしまって、目を伏せて深呼吸をすれば、吐く息はほら真白に。この胸はいっぱいに。
初出:2022年12月15日
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<三方の小品が文庫化しました>
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