屋上の黒ラベル/240608
夕方の涼しい空気を胸いっぱい吸い込みながら、三軒茶屋へ向かう。
友人たちとの約束まで少し時間があったのでtwililightへ。写真家の大野咲子さんの展示を見る。
人生も写真も選択の連続で、選ばれた過去しか残らない。突きつけられた写真は記憶であり記録であり事実なのだ。
「ここだけの話はこれでおしまい」と人生をかけて取り組んだことにピリオドを打つように撮影されたセルフポートレートに胸を打たれる。
もしもの「if」が写真に残ることはないくせに、そんなこと忘れちゃったよと言い訳ができない。鮮明にいつまでも残るということは写真という表現の残酷さである。
本をゆっくりと眺め、屋上でビールを飲む。冷えて白くなったグラスを差し出され、都会の屋上でグラスでビールが飲めるなんて贅沢な気分だとうっとりする。
四階建てのビルの屋上から見下ろした茶沢通りは街灯が白く光り土日でとても賑わっている。
展示の余韻を感じながらゆっくり日が暮れるのを待つ。
背中から吹く換気扇の風でカーディガンが小さくはためいている。魚の鱗の様なタイルに反射する光が眩しい。
友人たちとの約束の時間になったけれど、店を決めずに集合していることを知っているのでわざと遅れて向かう。
もう少し梅雨入り前の夕暮れに浸っていたい。お酒が身体に染み込んでほんのり気持ち良くなってからの方がするりと喋れるかもしれないしね。
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