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[読書記録]「月の立つ林で」(青山美智子) / 見えないけれど

ネタバレあります、ご注意下さい!

青山美智子さんの最新作を読みました。今回も全体を通してとてもあたたかく、静かな青山美智子さんの世界でした。とても落ち着くので、青山さんのお話は心を整えるのに最適だな、と思います。

毎朝必ず7時にアップされる月にまつわるポッドキャスト「ツキない話」を中心とした、月のお話を中心に物語が繋がって行きます。
私も「ツキない話」を毎朝聞けたらいいのに、と心から思いました。私が聞くならやっぱり夕飯の支度をする時かな、それとも、バタバタを終えたお昼のホッとした時かな、なんて楽しく想像しました。
特に新月のお話の回の「ツキない話」はとてもステキで、新月が目に見えないこと、新月は月の満ち欠けのスタートであり、昔は新月の日が一日ついたちだったこと…、あれこれが心に残ります。

「テレビも映画もなかった大昔の人にとってはさ、月ってすごいエンタメだったんだろうな。電気がなくても光って、毎日姿が変わるんだぜ。そりゃもうみんな見るよね。大人気だよね。月。」

「月の立つ林で」青山美智子より


新月と同じように、見えないけれど、確かにそこにあるものはたくさんあるな、と思います。人の努力、人との関係、望みや悩み、想いや祈り。そして表舞台や日常がうまく回って行くために、誰かの力になりたいという気持ちで支える、たくさんの表に出ない仕事のこと…。二章のレゴリスや四章のウミガメなど、目には見えない思いに心を動かされました。目に見えないことを人との関係の中で認め合えること、それがお互いを尊重するということなのだろうな、と何度も思いました。

それから「新月伐採」のことや、「レゴリスが球体を隅々まで光り輝かせること」をはじめて知りました。私のお月さまへの新しい気持ちがはじまったような気がします。


月は地球の自転に合わせて、少しずつ遠ざかっているのだそうです。月と地球の関係のように、人と人との関係でも、適切な距離で関わり、くっついたり離れたりしながら、立ち位置を変えて思い合っているものだということを思い出しました。

そして私も、月には、願いをかけるのではなくて、ただ、祈るのだろうな、その方がしっくりくるな、と思いました。
そっと、今ここにある自分のままで、どこかにいる誰かのことを思ったりしながら。

結末にはまたやられます。帯にもこうあります。

最後に仕掛けられた驚きの事実と
読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ
心震える傑作小説

「月の立つ林で」帯より

目に見えないこと、私もずっと大切にして行きたいです。

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とり子
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