性的虐待を受けていた元M女の話①〜20年越しに被虐待を認めた後のトラウマ反応とそこからの回復の日々
※フラッシュバックを起こしそうな方は読むのご注意ください。
※最後に私が参考にした本とサイトを書きました。
どちらもとても励まされる内容のものと思いますが、特に身体的な暴力や性的虐待を受けていた人は一人で取り組まずカウンセラーなどの専門家の助けを借りながら進めることをお勧めしますと注意書きがありました。
ですので、読まれる方はその点ご留意されるといいかなと思います。
※元M女というのは元々SMのM側をしていた女という意味です。今はもうしないことに決めまして一切していませんので、元、です。
小学3年生か4年生の時に実父から性的虐待を受けた。
それからの人生で、その時の光景をたまに思い出してしまうのに、先日まで、それがフラッシュバックで、それが虐待なのだということに気付かなかった。光景を思い出すだけで特段感情を伴わなかったことも気づけなかった理由の一つかもしれない。
初めて他人にその話をしようとした時、私は過呼吸になって、冷や汗が止まらず、目の前がチカチカした。カウンセリングルームの壁が大きくなったり小さく見えたりした。顔を上げていると光がまぶしくてたまらなくて、床の一点を見つめて私は話し出した。
20年以上も抑え込まれていた記憶の蓋が開いたのは、今年の春頃から顕著になった希死念慮が原因だったように思う。
なんとかしたいと藻搔いていた。最近は悪夢を見て冷や汗をびっしょりかいて中途覚醒する日々が続いていた。目覚めると筋肉が痛いほどに全身が強張っていた。特に日常生活に大きな変化があった訳ではなかったから、原因が不明だった。
脳というのは生存に必要な感情を選んで想起させるものらしいので、自分が生き延びる為に今記憶の蓋を開けたのだと思う。
今までは蓋をして心を守っていた方が都合がよかった。でもこの年齢になってようやく、その記憶と対峙しても、生きていける状況や準備が自分の中に整ったから、蓋を開くことができたのではないかと思っている。
そしてこれが、原因不明の不調を突破する第一歩になるのではないかと思っている。
私は先日この話をしたばかりで、話したのはカウンセラーと友人の二人だけだ。
話した後、フラッシュバックに苛まれ、久しぶりに拒食の症状が出た。固形物を食べることを考えただけで吐き気が込み上げてきて、口に入れても飲み込むことへの罪悪感が凄まじく、一旦食べることを諦めてまずは温かいスープなどから摂ることにした。カロリーが低ければ罪悪感はさほどでもなかった。10代後半の頃に拒食になり、体重は30キロ代まで落ちた。その教訓があったから、その後必要なカロリーや栄養素について細々と学び続けている。どんなに食欲がなくても1日に必要なカロリーだけは摂ることにしていて、栄養バランスも考えている。でも今回は流石に食べられなかった。ただ酔うことで気持ちを紛らわしたくて、味は考えずに酒を流し込んでいた。アルコールも飲酒量が増えてエスカレートした時期があり、依存症までには至らなかったけれど、その時期に適正量や依存からの回復について調べた。だから今回も飲みはしても命に危険のある量は飲まなかった。一時的に感情のストッパーを外してくれるので、かなり助かったと思っている。
こんなことは久しぶりで戸惑っていたけれど、今はもう食事については回復に向かっていて、少しほっとしている。
リソース、という考え方があるのを知った。
7年以上、アダルトチルドレンについて調べて回復に取り組んできた。今まで自分がやっていたのは曝露療法という方法で、友人が勧めてくれたものはリソースを作るやり方だったのだと知って、面白いな、と思った。昔から知的好奇心が旺盛なので、面白い、と思うとやる気が出てくる。これもリソースなのだろう。また、コツコツと積み重ねてきた趣味や勉強も私を助けてくれている。
記憶の蓋を開けた直後はやる気など全く出ず、罪悪感や、自分は作り話をしたのではないかという否認の気持ち、自分が今まで汚れた心や手で他人に触れてしまったのかという絶望感、もっと早く知りたかったという悔しさや八方塞がりのような苦しさに圧倒されていた。それがトラウマ反応によるものだと知識でわかるのは、パニックに陥っている最中にあっても自分を助けてくれていると思う。
10代後半頃も似たような状態に陥っていたが、あの頃はまるで何もわからないまま心身の不調に襲われていた。精神科に連れていかれるも、病名が様々に移り変わり、安定しなかった。うつ病、躁鬱病、パニック障害、統合失調症。記憶をなくしたいと話し、頭を壁に打ち付けたりしていたから、妄想を疑われた。リストカット、OD、自殺未遂をして強制入院させられた。あの頃何を忘れたかったのか、今になってわかる。そしてあの時記憶の蓋を開けられなかった理由もまたわかるのだ。
今は一人暮らしの家があり、仕事がある。これも私のリソースになっている。
これらの具体的な行動や状況から入っていくと、自分の体に意識を向けられるようにもなる。体がほぐせそうな時は肩を回したりしてほぐし、いても立ってもいられない気分の休日は夜に自転車で遠くまで走った。
人が怖いという発作も起きていたので、マスクをしたまま、暗い夜道をひたすら突き進んだ。
ちょうど天気が不安定な時期だったらしく、急に雨が降ってきて濡れることが何度かあった。折り畳み傘をさして自転車を引いて歩きながら、雨音が頭の中の雑音を掻き消してくれるのに任せていると、少しずつ汗が引いてきて、理由はわからないが涙が流れた。
そんな日々を繰り返して、段々とフラッシュバックが落ち着いてきたように思う。
つづく
参考
ブラック,クラウディア(2003)『子どもを生きればおとなになれる 「インナーアダルト」の育て方』水澤都加佐監修,武田裕子訳,アスク・ヒューマン・ケア.
フォワード,スーザン(2015)『毒親の棄て方 娘のための自信回復マニュアル』羽田詩津子訳,新潮社.
藤木美奈子(2017)『親に壊された心の治し方 「育ちの傷」を癒す方法がわかる本』講談社.
ハンセン,アンデシュ・ヴェンブラード,マッツ(2024)『メンタル脳』久山葉子訳,新潮社.
佐野佳代子(2023)「心の専門家インタビュー トラウマを持つ方に寄り添う。トラウマ、PTSDの実態と治療、セルフケアや予防のコツ - 臨床心理士 山本貢司先生」https://www.awarefy.com/coglabo/post/yamamotokoji_trauma_ptsd/(参照2024-10-23).