「○○テック? へえー?」とか言ってると、数年後には仕事奪われちゃうかもよ
自戒を込めて。
最近は「tech(テック)」を組み合わせた、言葉がかなり増えてきたように思います。ざっくりと私の解釈は【元々ある事業に、最新技術を導入して、新しい価値を生む動き】と捉えています。総称して「X-tech」「クロステック」とも呼ばれているみたいですね。
記憶が定かではありませんが、10年ほど前に「Fin tech(フィンテック)」で、私の周りは少し盛り上がりました。これが私の、○○テックとの最初の接点だったように思います。
実際に2022年現在では、身近ではキャッシュレス決済、クラウドファンディング、私にとっては少し遠い存在ですが、仮想通貨も事例かと思います。
そして、どんどん「○○テック」が増えていて、ざっとWEBでチェックしても、今では「○○テック」は、20種類以上もあるみたいですね。
10年ほど前の当時は、生活が便利になりそうで『良い良い!』
とだけ思っていましたが、その後「Fashion Tech(ファッションテック)」という言葉を聞き、その思想を持つ人たちと会話をすればするほど、当時、アパレル・ファッション系のコンサルのみを軸にしていた私は、急激に焦りを感じるようになりました。
一応、実体験として書けるのはアパレル事例ですので、アパレルの話を中心に書きますが、他業界に現在お勤めの方でも、「X-tech」「クロステック」でお調べいただき、もし自分の業界に【テックの波】が来ていると感じるのであれば、当てはめて考えていただくきっかけになればなあ、と思っております。
言ってもアパレル業界歴が10年あります。私。
これはコンサルタントになる前のことになりますが、事業会社で普通に、アパレルの販売員や本部・商品部スタッフとして働いてきました。
たった10年じゃん。
そう感じる諸先輩がたくさんいることは承知の上ですが、言いたいことは、10年間それなりに創意工夫をしながら、がむしゃらには頑張っていたつもりと、お伝えしたいだけです。
費用の問題はありますが、当時のシステム導入にも関わり、プライベートでも色々と勉強しにいったりもして、自分としては、アパレルにおける情報技術の先端に近いところは、理解したつもりでいました。
コンサルタントになって、意見を求められる立場にもなり
実際に「テックに明るい方々」。つまりは、情報技術に特化して強いことに加えて、ビジネス思想の土台が確立している方々との接点が増えてきたのが、2015年前後だったと記憶しています。
割と、私のひねくれ・こじらせキャラが面白かったのか、この方々からはよくブレストを依頼されまして、ハッキリ断言出来るのは【この人たちは、当たり前ですが、アパレルの具体的な知見は0に近い】ことです。ただし、いわゆるMBA的な内容や、ビジネスにおける原理原則の理解度は、私よりも遙かに上でした。頭も良いし、よく勉強しているんですよ、この人たち。(これは奮起のきっかけでもあります)
知見が0に近い、を例え話で言うと、
今年のトレンドアイテム、カラー(名前すら)は知らない
アパレルの基礎も知らない(素材、柄、ライン…など)
アイテム名も知らない(キャミソールとタンクトップの違いとか)
ある程度のファッションの歴史や、原価構造なども知らない
ということで、アパレル(というほどのレベルの話でもないけど)のことは、まったく知らない状況です。
ただ、明らかに私が、「このままではヤバい」と思ったのは事実で、その理由や背景を次から述べたいと思います。
暗に「アパレルの人は、みんな頭悪いですね」と言われている気がした
失礼な方々ではありませんので、そういう空気や問答があった訳ではなく、私の感受性&被害妄想から、勝手に来たものです。
一つ目は、私自身も進化をしているつもりではありましたが、彼らからすれば「アパレルは、旧態依然」…昔から何も変わっていない。そう感じていたように思います。
二つ目は、アパレル業界の人間は「世の中、他業界や情報技術に興味がなさ過ぎる」ということ。確かに当時、一部の大企業の方々や経営層を覗いて、アパレルの人間のほとんどは、繊研新聞(アパレル業界紙)、WWD(もうすこしファッショントレンドによったニュースブック)、などは愛読している人間は多かったですが、
日経MJになると購読率が大きく下がり、日経新聞本紙になると、ほとんど購読していないという状況が、20代の頃は見受けられました。
三つ目は、最近ではようやく問題として顕在化されつつありますが、「いっぱい1型あたりの数量を作って原価を下げて、ことある毎に値引きして、余った在庫を廃棄する」という、2010年代前半から半ばくらいまでは比較的皆がやっていた手法を「そんな事しているの、アパレルくらいじゃないの」と、バッサリ切り捨てた所です。
この手法が良くない、とすでに気づいているアパレル企業は当然ありましたが、当時アパレル企業の現場で、自分達の仕事と財務三票(P/L B/S C/F)の関連性を、正しく理解しているメンバーは少なく、ただただ見かけ上の商品粗利額と売上高だけを追っている人間も多かったように思います。
確かに、製造業ではとっくの昔から実現出来ている所も多かったですし、有名な書籍『ザ・ゴール』は2000年頃には、日本語版も有名になったと記憶しています。(本そのものはもっと古いけど、確か著者が、日本語訳をなかなか許可しなかったはず)
ともあれ、自分の出身業界のアパレル(実際に働いていた当時)は顕著だったのですが、狭い世界だけを見るのでは無く、世の中や他の業界に目を向ける必要がある、が私の中に生まれたのは、この方々に対して「自分が確実に劣っている」と痛感させられたのが大きなきっかけでもあります。
(アパレルにおいて)今の仕事は奪われる?
ひとまず、デザインよりの話の部分は、奪われるとしても、もう少しだけ先になると思いますので、純粋にクリエイティブな仕事がテクノロジーに置き換わるというのは、すぐには実現しないと思います。
また「テック」という視点の所で、どうしてもWEBサービス寄り、ECサイト寄り、オンラインで完結することなどが強くなります。例えば実店舗の販売員の仕事がいきなり無くなるかというと、そうでも無いとは思います。しかしながら、ECサイトでの購買比率が上がれば、小売店の必要度が相対的に下がる可能性がありますので、結果的に、仕事が少なくなっていく可能性があります。
「テック」を考える方の思想やアイデアの方向性というのは、私が見ている限り、フィッティング・オーダーメイドをアプリやその他技術で完結させたり、レンタルサービスや、クリーニングや預かりなどの購入後の派生系であったりと、今までの販売プロセスの所には直接行かずにその前後に技術を活かす方向が強いように感じています。
販売プロセスへのテックのアプローチは、人がやっていることを置き換える、というよりも接客提案のサポートをする機能が多いように感じるので、EC売上の増加は、小売店の機会を奪うかも知れませんが、少なくとも小売店での人がやる仕事そのものが無くなるようには、今の所(ここが大事)は思いません。
ただし、在庫コントロール部分は、かなりシステム化が進んできたようですし、すでに既存の顧客になっている方々の感性や嗜好を機械に理解させて、次の計画に活かすなど、徐々に本部職の所にも進出しつつあると思います。
ともあれ、こういったビジネス・新たな価値やマーケットを生み出しているのは、元々アパレル業界だけでずっとやっていた方よりも、テックを知り、アパレルの業界特性を最低限は理解しようとするが、古い業界文化に影響されない方々の賜物だと思っています。
「1+1=2」みたいな仕事は、奪われちゃうかも
「前年実績をたたき台」にしただけの仕事の仕方や、過去の決まった筋道に沿った仕事、ただただ事務的な作業などは、情報技術でやった方が、早くて正確になる可能性があります。
また、相手を見ないで、押しつけがましく「今のトレンド」を提案するような接客手法も、淘汰される可能性も感じます。(売りたいものをひたすらプッシュする売り方 など)
お客様の基礎プロフィールや購買履歴情報等で、似合う服やコーディネート、サイズなどは、雑な販売員の見たてよりも「テック」の方が得意かもしれません。
先日「数値データ分析だけじゃダメかも」みたいな記事を書きましたが、
この数値データ分析部分は、テックに置き換わるかもしれません。
どうやって自分の「カラー」、言うならば「彩り」を付けた仕事の仕方をするのかが大事な時代が、刻一刻と迫っているような気さえしています。
全体感に戻りまして
ずっとアパレルの話をしてきてすみません。
最後に、もう少し引いた目で書きたいと思います。
「○○テック」は沢山のものがあります。
特に気になっているのは【Retail Tech(リテールテック)】で、セルフレジなどが解りやすい例だとは思いますが、もう慣れ親しみ始めたように感じますし、コンビニなので2~3点の購入であれば、よっぽど早い、と思うようになりました。
早めに進んで欲しいのは、【Gov Tech(ガブテック)】で、自治体サービスのデジタル化などがイメージでしょうか。正直、書類1枚発行してもらうのに、住所と氏名もろもろをわざわざ書いて、待ち時間が1時間かかるのであれば(しかも、受付が基本平日限定ですし…)、スマホ1台で完結できるような時代、デジタルデータで住民票提出が済んじゃう、みたいなのを期待はしたくなります。
もう一つくらい挙げると、部分的ですが【Legal Tech(リーガルテック)】も、気になりますね。その名の通り法律テック、だと思いますが、業務委託契約関連の部分で、書面や押印、製本などが簡素化・一部不要になり、AIにリーガルチェックも同時にしてもらえるのは、大変有り難いことです。フリーランス時代にもなりつつありますしね。
という所で、自分が直接的に仕事を脅かされない所に対しては、どんどん技術が進めば良いと思い、自分の領域を脅かすものには脅威を感じる。これが「テック」なのだと思いますし、そこにリクエストがあるから、ビジネスとして成立してしまうのだとも思います。
でも、上記に挙げた3つが実現し、実用度も問題がないレベルになれば、それこそ仕事を失う人間が生まれます。そして、現実としてすぐそこにあると感じています。
「○○」の後に、「テック」以外のモノを付ける生き方
様々な業種と業界に「テック」が近づいています。
明日にも仕事を脅かされる方もいると思います。
もしも、自分の軸足を「○○」に置き続けたいのであれば、「テック」とは違う付加価値を付けるしかありません。
「ファッション × テック」に負けたくないのであれば、「ファッション × インテリア」かもしれませんし、「ファッション × アニメ」かも知れません。それが、ここ10年のスキルミックスによる差別化だったように思います。
(参考…になるかな?)
でも、私が最近考えていることにはなりますが、やはり「クリエイティブ」は強いですし、「プロダクト」「職人」「匠」「人柄」はもっと強い、ということです。
1979年生まれの私は、何か欲しい商品・製品・モノを手に入れるには、お金を払ってゲットする。が当たり前の思想でした。
そして、同時にその商品がどうやって生み出されたのか、どうやって作っているのか、をリアリティを持って知る機会があまりありませんでした。(社会見学のパン工場、とアパレル工場の一部、その他もろもろ、くらい)
社会人になって、ずっと小売をやってきたため「あるモノをどうやって売るか」「企画したモノを(作ってもらったモノを、買って)どう売るか」ばかりしか考えずに、気づけばアラフォーおじさんになってしまいました。
そもそもの「ものづくり」への学びと理解、そのあたりをもう一度見つめ直す機会が来ているな、と思っています。
あとは「人柄・ひいきにしたくなる人とは?」を、もっと研究したいです。私が、引っ越ししても尚ひいきにしている、歯医者さんと、とある営業さんがいるのですが、勉強させて頂いております。
次回以降は「ものづくりを知らない人間の、ものづくりへの思い」と「ひいきにしたい、お人柄」あたりをテーマに持っていきたいですね。
(ヤバい、また約5,000字になってる)
コジマサトシ/トナリコネクト
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