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『美容は自尊心の筋トレ』長田杏奈 好きな色のリップを魂に塗れ!【2019年上半期ベスト読書②】

本を開く前、紙の手触りの段階で、「あ、これはすごい」と思った。
詩集のような、ちょっと厚手のざらついた質感。絶対にカラー写真がないと触れただけでわかった。

そんな、写真が1枚もないこの本は、美容雑誌を中心に活躍するライター、「おさ旦那」さんこと長田杏奈さんの初の著作『美容は自尊心の筋トレ』。

「自分を大切にすることを習慣化し、凝り固まって狭くなった美意識をストレッチする『セルフケア』の話がしたい」と前書きにあるように、自分が自分自身を愛するための方法として美容を提案しながら、自尊心の育み方を教えてくれる。

呪いは、気づいてからが本番だ

「女はクリスマスケーキ」
「彼氏が欲しいならスカートくらい履きなよ」
「母親ならヒール履くのやめなよ」

そんな、今までは「常識」あるいは「良識」とされていた容姿へのアドバイスのほとんどが、自分の生き方を縛り付ける「呪い」だったのだと、やっと気づき始めた私たち。

でも呪いは、かけられてると気づいた瞬間から、さら効力を増す。呪われてるとわかってながらも何もできない、そんなしんどい空気が数年蔓延していて、この1〜2年ほどで、やっとその呪いを解くパワーを持つ人やコンテンツが生まれてきたと思う。

そんな「呪い」を打ち砕くひとりが、長田さんだ。

「自分を愛すること」が特別じゃなくなる本

「自分を愛する」という言葉自体は、特段珍しいわけではない。雑誌でもCMでも見かけるし、「あなたはそのままで素晴らしい」なんて歌詞もJ-POPにあふれているけれど、それを100回聞いたって、私たちは自分を好きになれるわけじゃない。

『美容は自尊心の筋トレ』の画期的なところは、無条件に自分を愛していいというメッセージとともに、具体的な「自分の愛し方」のひとつとして美容を提案しているところだと思う。

「美容」という言葉は、高い化粧品や何工程もあるスキンケアを想像させるし、美しい人がもっと美しくなる手段だと捉えられがちだけれど、長田さんは、美容とは「自分を丁重に扱うこと」だと教えてくれる。

手を動かし、自分の顔や体にやさしく触れてみる。テンションの上がる色を唇に塗る。フィジカルな繰り返しでこそ、ちょっとやそっとでは壊れない、どんな自分でも愛せる自尊心が大切に育てられていく。

好きな色のリップを魂に塗れ

この本のもうひとつの魅力は、なんといっても長田さんのユーモアと知性だ。

「眉毛しかかけなかった日は“あえて抜け感をだしている”と思うようにする」
「愚痴を垂れ流しそうになったときは志村けん公式LINEアカウントに言いたいことを送る(“だっふんだ”と自動返信される)」

など、私でもできるじゃん!とマネしたくなる考え方やエピソードがたくさん登場する。

特に印象的だったのは、「赤いリップの女は無理」と男性に言われた翌日の長田さんのとある行動。「リップは、唇だけじゃなく魂にも塗るものなのだ、きっと」という言葉にシビれる。

そんな長田さんの品あるパンク精神と、既存の「呪い」を軽やかに粉砕していく言葉に後押しされ、読み終わるころには虚勢でなく「好きに生きてやろう」と口に出して言いたくなる。ちなみに読んだあと私は赤いマスカラ買った。

一方通行の美にさよなら


「世界も他人も簡単には変わらないけれど、自分の意識は努力で変えることができる。自分を見捨てずに大切にするという小さな一石、自らや他人の多様な美しさを感じるというひそやかな羽ばたきが集まれば、お互いを認め合いゆるやかに助け合えるカラフルでピースフルな世界がきっと叶うのだと、夢見ている。」

「あの子よりは私の方がかわいい」なんて不毛なランクづけも、「綺麗ですね」と言われてとっさにでる自虐も、存在しないほうが絶対ハッピー。だけどなんとなくやめられない空気が世間にはまだある。

そんな見えない縛りは、私たちでほどいてしまおう。黄金律だけを追いかける一方通行の美にさよならをして「あんた最高、私も最高」と言い合える時代にしよう。

そう言うと、たいそうなことに思えて怯んでしまいそうだけど、長田さんの本を読んだ後ならできそうな気がする。

娘ができたら絶対に読ませたいし、男女問わず「美容なんて私とは無縁」と思っている人にこそ読んでもらいたい一冊です。


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あかのさか
人の金で食う焼き肉の味ってものを知りたいので何卒施しのほどよろしくお願いします!

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