「地球の歩き方」のおかげ
ダイヤモンド・ビッグ社が海外旅行ガイドブック「地球の歩き方」を学研出版に譲渡するというニュースを知った。
今僕の書棚にある一番古いのは「インド」の88年版で、手書きイラストの市街図や読者投稿も、広告でさえ時代を感じさせて面白い。
焼けて茶ばんだ空きスペースに僕の落書き。宿で知り合った人なのか覚えのない外国人の名前の走り書きや、お土産買うリストなどが書かれてある。
検索で見つけた創刊の「79年版ヨーロッパ」の表紙コピーは、「ヨーロッパを1か月以上の期間 1日3000円以内で ホテルなどの予約なしで 鉄道を使って旅する人のための徹底ガイド」。
90年代は大手旅行ガイドは団体旅行でよく行く国のものばかりで、その後どの出版社も扱う国の数はだいぶ増えたけど、それでも「地球の歩き方」にしかない国は多かったし、「アメリカドライブ旅行」「スポーツ観戦」など、ジャンルを絞ったものも出るようになった。
インターネット時代になって。といっても最初は今のように便利なアプリも無かったから旅先での情報誌としては変わらず助かったし、今だって移動中や、何かと多い「待ち時間」にページを捲る。
ネットのニュースには、「若い頃にずいぶんお世話になりました」という懐かしむ声の一方、「スマホの時代、役割を終えた」というようなコメントも並んでいた。
昔は、「ずいぶん古い部屋だけどなんとかエアコンは動いています」という投稿を読んで安宿にチェックインしたら、エアコンがなかったなんてことはかなりあったはずで、バックパッカーたちが「地球の騙し方」と揶揄した所以だ。
でも、そのいい加減さを受け入れ、要するに情報を信用し切らないで旅をしていく感じが楽しい、っていうのがあった。
今もそれと同じような感覚で旅行を楽しんでいる人は多いと思う。
出典の確かなWEB情報だけで計画したり移動していたらつまらないよね。
レビューの数が多くて点数が高いのだけ選んでいたらつまらないよね。
「地球の歩き方」のおかげで、曖昧な情報しかない街をうろつく楽しさを覚えたんだと思っている。