来春初映画化の原作「身分帳」

昭和60年2月刑期満了で旭川刑務所を出所した山川。殺人の罪で13年収監されて44歳になった男が一般社会でどうやって生きていくのか、生きていけるのか。
純粋で真面目だが直情型の性格は直らない。弁護士、保護司、隣人ら、サポートする人たちの山川との接し方は簡単ではない。その機微が上手く描かれている。

ダイバーシティという言葉など知らなかった30年前のマイノリティの生きづらさと社会、心ある人たちとの交流は、今も変わらないのではないか。
山川の行動にヒヤヒヤさせられながら読み進めていくうち、ふと自分に置き換えて考えてしまうことになる。

文庫の本編に続き「行路病死人ー小説「身分帳」補遺」が収められている。
そこには、著者の佐木隆三が山川のモデルとなった出所直後から密着取材を続けた実在の男のことが書かれている。
この本「ノンフィクション・ノベル」というらしいが、僕は「冷血」を書いたトールマン・カポーティと通じる取材者の苦悩も感じた。

テレビドラマ化や映画化の話があっても実現しないまま著者は5年前に亡くなってしまっている。
そして初映画化は西川美和監督、男を役所広司が演じて来春公開が決まっている。

(講談社 1993年刊)

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