【古典邦画】「宗方姉妹」

デコちゃん(高峰秀子)が出演した1950(昭和25)年の小津安二郎監督作品「宗方姉妹(ムナカタキョウダイ)」(新東宝)。2回目の鑑賞。

デコちゃんは、いつもの鼻にかかった声でハキハキとモノは言うが、おどけたりお茶目だったり、魅力的でカワイイけど、姉役の田中絹代のクズな夫(山村聰)をはじめ、田中絹代の態度も、けっこうイライラさせられる暗めの作品であった。

昔の、どんなにクズな夫だろうと甲斐甲斐しく付き従う保守的な田中絹代演じる姉と、ハッキリと自己主張をする新時代の自由奔放なデコちゃん演じる妹、2人を対比させながらも、徐々に、儚くも変わって行く家族の様子を描いたもの。
原作は大佛次郎の小説。

映画にもよくあるが、この時代の、仕事がない夫といえば、プライドばかりが高くて、妻に稼がせて自分はいつも酒浸り、妻が抗議するとすぐに暴力を振るう、というトンデモないクズに描かれることが多いね。悲しい。

姉は、昔、好きだった男(上原謙)と、夫が急死したことで晴れて一緒になれることになったが、夫の死を背負ったままでは一緒になれないと離れていく。妹が、なぜ前に結婚しなかったのか、と聞くと、自分の気持ちに気付くのが遅かった、という。

どんなに好き合っていても、言葉にしなきゃ伝わらないし、男と女の出会いはタイミングでもあり、それを逃すともう一緒になれないのかもしれない。結婚は契約と打算でもあって、一時の感情だけでは成立しないものだ。結婚は“人生の修道院”に入るようなものだからね。

でも、独りとなった姉は、気楽で清々しい感じがする。

田中絹代(姉)とデコちゃん(高峰秀子)の会話↓
姉「そんなもんじゃないのよ、夫婦って。いつもいい時ばかりあるもんじゃないわ。お互いに我慢しあってこそやっていけんのよ。そういうもんなのよ」
妹「それじゃ夫婦なんてつまんない」
姉「つまんなかないわ。それで良くなんのよ」
妹「そりゃお姉さんの考え方よ。満里子やだわ」
姉「いやだってしょうがないのよ」
妹「きらい!そんな古い考え方」
姉「何が古いのよ」
妹「古いわよ。古い古い。お姉さん古い」
姉「あたしは古くならないことが新しいことだと思うのよ。ほんとに新しいことはいつまでたっても古くならないことだと思ってんのよ」
妹「…だってしょうがないわよ。世の中がそうなってるんだもの。満里子みんなに遅れたくないのよ。育った世の中がそうなんだもの。悪いとは思ってないの」

俺には、デコちゃんが魅力的な作品であった。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。

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