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『自助論』(サミュエル・スマイルズ著)

あなたは勤勉に働き、自分の道を自分で切り開いているだろうか?
150年以上前、大英帝国として活気にあふれたイギリスで出版された本書は、ひとことでいうと、"暑苦しい"。
暑苦しさのなかから、今を生きる私たちにとっても大切だと感じたことを抜粋する。

1.自助の精神

「自助」とは、勤勉に働き自分の道を自分で切り開くことだという。国家の質とは国民の質だ。彼らが自助の精神を持っているか否かで決まる。そして、政治とは国民の考えや行動の結果にすぎない。たとえ専制支配下になろうとも、いち個人がその精神を持つか否かで、最悪の事態に陥るか否かが決まるのだ。それは活力にあふれた強い国家を築くの原動力ともなる。
どのような国家も、先祖たちの思想や活動の蓄積とをへて現存している。この豊かな財産を受け継ぎ、次世代へつなぐ義務が私たちにはある。財産を作るにあたり、より大切なのは学問ではなく現実生活だ。文学ではなく生活であり、学問ではなく行動なのだ。

★感想
"国は人なり"とはよく耳にする言葉だ。人とは私たちひとりひとりのこと。もしも政治批判をするだけでいるのだとしたら、それは自らをいじめているにすぎないのだろう。豊かな財産については、次代に受け継ぎたいのならそうすればいい。私は強要されるのは嫌だ。ただ、自らそうしたいと思えているうちはその信念に従おうと思う。インプットよりアウトプットをしながら、生きてゆく。ナマケモノにはすこしつらいが、そこは仕組みでカバーしよう。

2.忍耐 

★感想
この章は読み飛ばそうとしていた。幼いころから刷り込まれたのか、”忍耐すなわち苦行、辛いもの、ひたむきに耐えろ”というイメージがこびりついているからだ。滝行だとか。しかし、本書の”忍耐”の大前提には、「根気強く待つ間も、快活さを失ってはならない。快活な精神はすぐれた資質であり、それはどんな不幸や失望にもへこたれない力を与えてくれる」という考え方がある。
目を通しておいてよかった。こちらの考え方のほうが断然好きで、健康的だ。

3.時間の知恵 ~「実務能力」のない者に成功者なし~

ビジネスンに不可欠な能力のひとつとして「時間」が挙げられる。時間にルーズだと成功の汽車に乗り遅れる。なぜなら、時間を守るということは、自分だけでなく相手の時間も尊重するということだからだ。時間厳守は、良心の問題でもある。約束とは契約の一種だ。それを破るということは、相手の時間を不当に浪費する不誠実な行為であり、いずれ自らの評判をおとしめることに繋がるのだ。
そして第一級のビジネスマンに不可欠なのが「実務能力」だ。具体的には、鋭い直観力、断固たる意志、如才なさである。例えばウェリントン将軍だ。それは、同じ将軍仲間に「彼の連帯は全軍の模範である」と言わしめるほどだった。彼の正直さも実務能力の1つだ。例として、他の将軍が敵地にて強奪を行うことが慣例となっていたなか、彼とその軍隊は敵地国民から財産保護を頼まれるような人間だった。正直は最良の策なのだ。
確かにいつの時代もペテンや目に余る不正はあとを経たない。しかし、彼らは富を得ようとも、決して楽しむことはできない。正直という人格を捨てた彼らに心の平安が訪れることはなく、それがなければ富に値打ちなどない。品性はそれ自体が財産なのだ。

★感想
時間厳守と正直さ。子どもには何度も言って聞かせるのに、できていない大人も多い。他者の尊重のしかたは色々あるが、あいさつや時間を守ることはハードルが低い。いざというと頼れる人がまわりにいるよう、今後も続けていこう。

4.すばらしい出会い

「人に何かしてもらいたいと望むなら、自分が率先してそれをやるべきです。口先ばかり達者でも何の役にも立ちません」
人は、耳より目を通して学ぶことが多い。言葉よりも行動をみて育つものなのだ。幼少期には特にその傾向が強く、学校で見聞きしたことよりも、家で示される手本のほうが人格形成に大きな影響を及ぼす。子ども部屋が国家を作るといっても過言ではない。
人格形成の成否は、だれを手本にするかで決まる。したがって、良い忠告を与えながら悪い手本を見せるような人は注意深く見極めなければならない。延べを行く旅人に草花の香りがしみつくように、よき友は必ずよい影響をもたらす。快活さは自分だけでなく他人の意欲をも掻き立てるのだ。
後世へ引き継がれている人格形成の手本といえば、伝記だ。スマイルズは詩人ミルトンの言葉を引用して、それは「巨匠の精神に脈打つ血液」なのだという。書を読む場合も友を作る場合も、よいものを選び、最良の部分を見習おう。

★感想
この章には、同意しかない。言葉よりも行動をみて人は育つ。とはいえ言葉を尽くすことも同じくらい大切で、それは私たちが他人同士である限り、永遠にゆるがないと考える。

5.人格は一生通用する宝

自助の精神をふくめ、国民ひとりひとりの人格が国家の質を左右する。産業、文明、法律、安全…それらすべての基盤にあるのは人格だ。
「知は力なり」というが、人格こそが力だ。愛情なき心、行動を伴わぬ知性、やさしさに欠けた才気…これらも確かに力だ。しかし尊敬には値せず、害悪をもたらすだけの場合もありうる。
誰しもがすぐれた人格を得ようと努力すべきだ。たとえ実現できなくとも、得るものがある。政治家ディズレーリは「顔を高く上げようとしない若者は、いつしか足もとばかり眺めて生きるようになるだろう。空高く飛ぼうとしない精神は、地べたをはいつくばる運命をたどるだろう」と言っている。
習慣は、理想の人格に現実を近づけるための方法の一つだ。人は習慣の寄せ木細工なのである。なお、習慣を簡単に身に付けるにはできれば若いうちがよい。年をとると習慣がこり固まりやすいからだ。かつ、古い習慣を根絶やしにするのは苦痛を伴うことが多い。
他者に接する態度をみれば、その人の人格レベルがよくわかる。マナーや礼儀正しさは工夫次第で身に付けられる習慣だ。裕福か貧乏かは関係ない。マナーや礼儀正しさといった人に対する思いやりは、万物に生気を与える日光のように無言の影響力を持っている。むろん、マナーの良し悪しなど気にせず、奥底の人格に目を向ける人もいる。しかし大概は外側のふるまいをみてその人間を好きか嫌いか決めるものなのだ。

★感想(とまとめ)
政治家になろうというわけではないけれど、国民一人一人がこういった精神を持っていたのかと思うと、その国力の高さは当然だと感じた。本書は『学問のすゝめ』と並んで明治時代の日本の若者にも人気だったそうだ。冷たい自己責任論ではなくて、ひとりひとりが自助の精神を持ち、その者同士が助け合える世の中にしていきたい。ただし自助とは、個々のおかれた環境や特性、年齢によっても千差万別だと思う。それは絶対に前提にすえておこう。多様性というやつなのかもしれない。
暑苦しく、今の時代にそぐわないテンションもわりと見受けられたけれども、エッセンスはしかと受け取った。


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