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食の相性は人の相性

大学2年生のときのこと。生まれて初めて自分から付き合いたいと思い、告白して付き合った彼氏がいた。

同級生でバスケのサークルが同じ。サークルの中では中心メンバーの1人で、ちょっとクール(?)で口数が少ないときもあれば、仲間とふざけあったり騒いだりと絶妙なギャップがある男の子。それでいて休みの日はバスケ、空き時間は体育館で自主練、時間がある時はいつもYouTubeでNBAの動画を観るほどバスケ馬鹿だった。イケメンの部類には入り、後輩からも人気だった。

私はそんな彼と一緒にいるのが楽しくて、初めて自分から好きになった相手との恋が実ったことの幸せから付き合った当初浮かれていた。たぶんドラえもんみたいに体も3ミリくらいは浮いていた。

でも彼には、私にとっての唯一の欠点があった。それは野菜が大嫌いで一切食べることができないということ。私は嫌いな食べ物なんて何もない。残りものなんてありえない、という考えをもつ人間だから相性は最悪だ

無類の肉好き&ファストフード好きの彼は、ラーメン屋、牛丼屋によく行き、必ずそこでは「野菜抜きで」とたのむ。マクドナルドではハンバーガーのプレーン(バンズとパティのみのことらしい)を注文。

鍋料理を食べたときはこっちには野菜を入れるな、といった感じで仕切られた鍋でそれぞれが好きなものを入れて食べた。片方は野菜がたくさん入った鮮やかな色の鍋、もう片方は茶一色の肉の海だった。

レストランでは野菜抜きとは言いにくいのか、注文した料理がくると最初にちまちまと野菜を振り分ける。チャーハンに入っているみじん切り玉ねぎさえも。サラダなら食べられると言って、口にしたことがあったけれどめちゃくちゃ不味そうな顔をして食べていた。

食物繊維を摂らないと、と私が心配しても野菜ジュースを飲んでいるから大丈夫の一言。料理作ってあげればいいじゃない!と、周りは言うけれど、自分が作った料理でも野菜は避けられたので克服させることは諦めた。

付き合いはじめて1年10ヶ月経った頃、とことん食の好みが合わない彼に、私は別れを切りだした。その原因は、野菜嫌いのほかにももちろんいろいろあるけれど、その中でもこれは大きかった。

最初からつきあわなきゃよかったのにと思われるかもしれないけれど、正直これほど強者だったとは。どうやら小さい頃から野菜を口に入れると吐いてしまっていたらしい。

それ以来、人と出会うたび食べ物の好き嫌いを気にするようになった。食の相性は人の相性、そんな価値観が生まれた。別れたあとすぐ、彼が大学のミスターコンに出場していたのでイケメンという私の大好物は逃してしまったのだけど。



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