「マンガでやさしくわかる知識創造」で組織にイノベーションを!
こんにちは。製造業で情シスマネージャーをしているまさです。
今回は、2023年12月に発売された書籍「マンガでやさしくわかる知識創造」~西原(廣瀬)文乃さん著 の感想と本書から得た学びと気付きについて書いてみました。
知識創造とは、個人やチームの暗黙知や経験を共有し、新しい知識や価値を生み出すプロセスのことを指し、ナレッジ・マネジメントとは、知識創造を組織的に支援する仕組みや文化のことを指します。
もし、あなたが組織の中で業務改善や組織変革を目指すなら、知識創造やナレッジ・マネジメントを活用することをお勧めします。
でも、具体的にどうやって活用したらいいの?
本当に業務改善や生産性向上につながるの?
昔、流行った時に取り組んだけど続かなかったんだよね
こんな疑問やネガティブな声は当然あることは認識しています。自分自身も昔失敗した経験があります。
本書には、そういった疑問に対する答えがシッカリと提示されています。
なぜなら本書は「実際に大企業で実践されたこと」が描かれているため、単なるナレッジ・マネジメント理論のお勉強でもなく、「こうやったらうまくいくかもよ」なんて言うふわっとした指南本とは一線を画す本だからです。
そして「マンガでやさしくわかる」と書かれている通り、一気に読めてしまいます。しかし中身はとても濃厚で、企業でナレッジ・マネジメントを実践するための手法とノウハウがぎっしり詰まっています。ナレッジマネジメントの勉強になるだけでなく、明日から試したくなる、そんな本です。
本noteでは、本の感想にとどまらず、知識創造をを業務改善や生産性向上にどうつなげるか、そして知識創造活動に継続性を持たせるためにどのような場を作ったら良いか、と言う視点で私なりの考察を盛り込みました。
①本書との出会いと感想
まず、私がこの書籍を購入したきっかけと背景からお話しします。
2024年のお正月。X(旧Twitter)のタイムラインで、情シスの大先輩でありフォロワーの原田さんが本書のレコメンドをしているのを見かけて、「これだ」と感じて、すぐに購入しました。
(内容)
「マンガでやさしくわかる知識創造」には、ある某大手建材メーカーの経理部門で始まった「ナレッジ・マネジメントを軸とした業務改善プロジェクト」をボトムアップで一から立ち上げた推進者である(水上さん)の苦悩や迷い、そしてそれを支える仲間(村雨くん)や上司との人間関係が描かれています。
登場人物のキーマンである水上さんは、地方拠点の経理部門に所属しながら、草の根的に「みんなの図書館」という困りごとのデータベース化をコツコツ推進しています。本書では「プロジェクトの推進役」として熱い想いと抜群の行動力でプロジェクトを引っ張っるメインキャラクターです。
そしてもう一人のキーマンである村雨君は、「水上さんの頭脳となって知識創造のあり方を裏で支える指南役」です。冷静でドライなキャラクターですが、リーダー水上さんの傍でプロジェクトを的確に良い方向に導いてくれるイイ奴です。
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(感想)
本書では、村雨君が「知識創造とSECIモデルそのもの」を語るキャラクター、水上さんが「それを回すための場と回すためのリーダシップ」を体現するキャラクターとして描かれているおり、読者が今の自分に置かれた立場や役割を思い浮かべながら読み進めることができるところが良いと思いました。
そして、内容もナレッジマネジメントや業務改善をはじめて推進する人にとって「簡単すぎず、でも難しすぎない、ちょうど良いレベル感」に仕上がっており、色々な人にお勧めしたくなる一冊です。
②知識創造で組織変革を実現する方法
私が本書「マンガでやさしくわかる知識創造」を読んだ後に、最初に解決したかった疑問がこれです。
知識創造やナレッジ・マネジメントを自社の業務改善や生産性向上にどうつ結びつけたらいいのか?
私は情シス部門で自部門や他部門の業務改善の支援や、若手社員を対象にした、デジタルを活用した業務改善のリーダー育成プロジェクトを推進しています。
しかし、そのプロジェクトで議論されるテーマの内容が「見えている業務課題の解決」に偏ってしまっていて「知識やノウハウの活用」や「新たな課題の発見」については議論されていない状態でした。
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しかし、本書に登場する村雨君(24歳)が知識創造とSECIモデルそのものを語り言語化する様子と、水上さん(26歳)が知識創造を回すための場を作りリーダシップを体現する様子を読んで、ひとつめの疑問が解決したのです。
知識創造活動は、
若手中心のボトムアップ型業務改善プロジェクトの
テーマとして取り組むもう
理由は以下の通りです。
知識創造は、どの部門や業務でも適用できるテーマである
知識創造は、業務経験や知識が少ない若手でも推進しやすいテーマである
知識創造は、実現手段が簡単で、コストや特別な仕組みが必要でない
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具体的には、本書に書かれている「みんなの図書館」という名付けられた知識創造活動を参考にして、以下のように進めることができると考えました。
メンバーが経験した「ミスやロス」「工夫した事/効率的な方法」をExcelにまとめて共有する
Excelをもとに、定期的に「知識創造の場」を開催し、知識を共同化→表出化→連結化→内面化するプロセスを回す
そのプロセスで生まれた新しい知識を、業務改善や生産性向上に活かす
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このように、知識創造活動をボトムアップで推進することで、業務改善や組織変革につなげるイメージを思い浮かべることができたのです。もう、あとは実行に移すだけです。
※知識創造やナレッジ・マネジメントについてもっと詳しく知りたい方は、本書のモデルでもある村上修二さんのNoteを読んでみてください。
③知識創造を成功させる3箇条
本書では、知識創造活動を成功させるには、場の存在が重要だと書かれています。場とは、知識を共有し、新しい知識や価値を生み出すための空間や時間、関係性のことです。場がなければ、知識創造は回らないという事です。
では、どうやって場を作るのでしょうか。この本「マンガでやさしくわかる知識創造」では、その方法が具体的に示されています。この本の主人公である水上さんは、経理部門で知識創造活動を始めるにあたり、以下のような工夫をします。
物理的な空間だけでなく、心理的な空間も作る
集まった人たちの間にお互いを受け入れる関係性を作る
参加者の自発性や多様性を尊重する
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これらの工夫は、知識創造の場に必要な要素を満たしています。知識創造の場に必要な要素を「知識創造を成功させる3箇条」としてまとめてみました。
フラットな関係性を保つ
上下関係や役職にとらわれず、平等に意見を交換できる関係性高い心理的安全性を保つ
失敗や批判を恐れず、自由に発言できる雰囲気多様性を受け入れる
異なる部署や業種、経験や知識を持つ人たちが集まり、刺激を与え合う
これらの要素が揃っている場では、知識創造のサイクルである「SECIモデル」がスムーズに回ります。SECIモデルとは、共同化→表出化→連結化→内面化のプロセスで、知識を変換し、創造するモデルです。
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逆に、これらの要素が欠けている場では、知識創造は阻害されます。例えば、以下のような場では、知識創造によるイノベーションは起こらないでしょう。
上司の指示で参加する場になる
やらされ感があり、自発性や創造性が低下する意見に対して否定する場になる
心理的安全性がなく、本音を言えない「形だけの場」同じ価値観や経験を持つ人だけの場になる
多様性がなく、新しい知識や価値が生まれない
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私は本書を読み、改めて学びました。
知識創造の場を作ることは、業務改善や組織変革の第一歩だという事を。
④ワイズ・リーダーシップを高める5つの習慣
本書では、知識創造活動を回すためには、ワイズ・リーダーシップが必要でだと書かれています。ワイズ・リーダーシップとは、実践知を持ち、組織や社会の善い目的に向かって知識創造のサイクルを回すリーダーシップのことです。
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この本「マンガでやさしくわかる知識創造」では、ワイズ・リーダーシップの6つの能力が紹介されており、主人公である水上さんが迷いながらも、このワイズ・リーダーシップを徐々に自分のものにする姿が描かれています。
善い目的をつくる能力
ありのままを見る能力
「場」を創出する能力
物語る能力
影響力をつかい分ける能力(政治力)
組織する能力
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さて、これらの能力はどうやったら高めることができるのでしょうか?簡単ではないですね。本書でもこのことについて言及していますが、ここでは私なりに「ワイズ・リーダーシップを高める5つの習慣」を考えてみました。
実践あるのみ。たくさん失敗しよう!
自らの経験や体験を身に染み込ませて資産化しましょう越境学習でインプットを増やそう!
異なる分野や業界の人との交流と対話を通して視野を広げましょう必ずアウトプットしよう!
インプットしたらアウトプットを必ずセットでやり切りましょうファシリテーションしよう!
問いを立ててナレッジを引き出すファシリテーターになろう次世代のリーダーシップを身につけよう
部下や同僚の成長を支援し、フィードバックを与えるスタイルのリーダーシップを実践しよう
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ワイズ・リーダーシップは、知識創造活動の推進者に不可欠な能力です。以下は私が過去に書いたこのテーマに関連する記事です。参考にしてください。
⑤情シス主導の知識創造へ
この本では、知識創造は経理部から始まり、やがて全社レベルの活動にまで発展します。そして「知識創造アワード」という全社イベントを開催し、水上さんが目指していた組織変革を実現します。
その過程で、水上さんと村雨君の二人は、情報システム部へ異動し、全社知識創造活動の推進と知識活用のためのシステム化を担うことになります。
DXの一環として、今後は情シス部門が主導して知識創造を推進することが求められることでしょう。その際、情シス部門は、IT技術の専門知識と経営視点だけでなく、現場部門やユーザーのニーズや課題を深く探る視点を持って、最適なシステムを提案を行うことが大切だと思います。
私は、本書のモデルとなった大手建材メーカーの情シス部門が、知識創造のリーダーとして、企業の競争力を高めることに挑戦した事に対して、共感を覚えました。
さあ、あなたも一緒に知識創造にチャレンジしませんか?
(2024.3.3)
水上さん村雨君と一緒に焼き鳥屋でつくね食べながら知識創造の話をしたいまさより