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[暮らしっ句]焚火[鑑賞]
まずは、焚き火を見つけた! 編
一目散に 子がかけてくる 夕焚火 伊藤月江
昭和の子どもなら、誰しも覚えがあるのではないでしょうか。
焚き火は、それだけでイベント。近づかずにはいられません。その辺に燃やせる物があれば、もちろん放り込む。炎を見て飽きず、物が焼けて変化していくのに見入り、煙を吸い、臭いを嗅ぎ、パチパチという音を聴いて、火の粉が舞ったと云っては歓声を上げる。
いっぺん、焼き芋をしてみたいなあ、とか云いあってた覚えがありますが、いまだ果たせず。
と、思わず子どものほうに感情移入してしまいましたが、句自体は、大人目線ですから、もう一段複雑。
子どもが寄ってくるのをうれしく思いながら、自分にもあんな頃があったなあ……と、ちょっとせつなくなったり、あるいは、むかしの大人たちのことを思い出されたかもしれません。見守られていたんだ、て。
終着の駅に焚き火の匂ひかな 津田このみ
これは一人旅でしょうか。若い女性の一人旅は宿を断られるという話を聞いたことがありますが、しかも終着駅ですからね。これはワケがありそう。
でも、そこに焚き火があった。トンネルの向こうにかすかな光が見えた……、そんな描写かな。思い詰めてる度合いが強いからこそ、小さな光に敏感になれたのかも。
山の辺の道の始めの焚火かな 大崎ナツミ
確かに、晩秋の山の辺の道には、焚き火がよく似合う。実際に見かけたような気もする。紅葉の落ちた冬野。柿の木には木守……
足止めてあたらせて貰ふ焚火かな 能村登四郎
これも良い光景。一汗かいた後は、歩いていても冷えてきますからね。暖をとらせてもらえるのは、とても有り難い。
焚火してをればたちまち五六人 稲畑汀子
こういう行きずりの関係は、いい。つきあいが苦手でも人間嫌いではないので、行きずりに親しくなるのは好き。
割り込んで会話ふくらむ焚火の輪 正木光子
「どちらから?」
「わたしは、○○から」
「へえー そんなに遠くから」
「一度来て見たかったんですよ」
「実際に来てみると、がっかりしたんじゃないですか?」
「思ってた以上でした。きっと、また来ます!」
出典 俳誌のサロン 歳時記 焚火