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[散文写真]sakana kana
かつて魚がいたダムに出かけた
今でこそ十センチにも満たない水深だが、
子供の頃は 溺れるから行くな!
と言われるほどの水量があった
砂で埋まる はるか前のことだ
すっかり景色が変わっていたが
目を閉じると つい昨日のことのようだった
何人で出かけたのだろう
五六人、いや、もっといた
記憶の中の ダム湖はにぎやかで
広さも十倍くらい大きかった
なんといっても水の色が濃い緑で
後ろの森と一体だった
水が減ったのはいい
しかし、魚はどうなったのだと
とりとめのないことを思いながら
写真を数枚撮って帰ってきた
これがその写真である
![](https://assets.st-note.com/img/1656249469227-HeV7P3K1Eb.jpg?width=1200)
わたしにはそれが魚に見えた
思い出がフィルムに焼き付いたのか
それとも、カメラのピントが
過去に合焦してしまったのか……
いずれにせよ
無いものは写りようがないわけで
それが魚なら、
そいつは 今もどこかを泳いでいる……