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「慢性的な心と体の痛み」にも関連するファイト・オア・フライトとアッパーシータ波

ブレスワーク(呼吸法)とは、意図的に呼吸の仕方をコントロールする瞑想の手法です。

ストレス、不安などを軽減し、リラックスと落ち着き、幸福感を促進するために、脳と体の働きに直接影響を与えることが目的となります。

ブレスワーク(呼吸法)は、何千年もの間、人々が研究してきた手法で、紀元前2000年以上もの昔から、ヨガなどで実践されてきました。

呼吸のコントロールにより、脳および身体活動を引き起こし、あらゆるストレスや問題に対する身体的、感情的な反応である「ファイト・オア・フライト反応」を解除するのです。

ファイト・オア・フライト反応

これは、文字通り「戦うか逃げるか反応」と訳すことができます。

生物は恐怖に直面した時に、ストレス反応、防衛反応として、不安や交感神経系の興奮などの心理的、生理的な反応が生じます。

呼吸は体の働きには欠かせないものですが、意図的に呼吸の方法を変えると、心拍数や血圧の変化や、ファイト・オア・フライト反応を担当する交感神経系の不活性化、休息や消化、安らぎなどの反応に関連する副交感神経系を活性化させることができます。

呼吸により身体的状態が良くなると、感情や思考の意識も高まり、脳を含む体全体の状態が改善され、身体的および精神的健康を改善することができるのです。

呼吸が脳と体に与える影響

人間の脳は、体重の約2%を占めていますが、呼吸で摂取する酸素の約20%を消費しています。

身体的および精神的健康のためには、豊富な酸素供給が必要です。

脳は、低酸素供給(浅く急速な呼吸の結果)を「危険」と解釈し、交感神経系を活性化してしまいます。

ファイト・オア・フライト反応は、以下の症状を引き起こします

・心拍数、血圧の上昇
・血流が手足へシフトする
・コルチゾール、アドレナリン、ノルエピネフリンなどのストレスホルモンの増加
・セロトニン、オキシトシン、プロラクチンなどの心地良くなるホルモンの減少
・脳への酸素供給の減少による永続的なファイト・オア・フライト反応

浅く速い呼吸をすると…

酸素レベルが不均衡となり、交感神経系が活性化されたままになります。その結果、慢性的な緊張、不安、怒り、過敏症、恐怖、うつ症状などを感じるのです。

ブレスワーク(呼吸法)の実践により、神経系の動作を意図的に交感神経系から副交感神経系に移行し、自動的なストレス反応をコントロールすることができます。

意識的なゆっくりとした深い呼吸は、自律神経系をリセットし、脳の酸素供給を高め、血液中の二酸化炭素レベルを下げます。

さらに、横隔膜と肋間筋に十分な動きを与えると、筋組織からの信号が脳と体全体に送られ、リラクゼーションと幸福感を誘発するのです。

ブレスワーク(呼吸法)の効果

ブレスワーク(呼吸法)は、以下のような条件の時に効果を発揮します。

・ストレス
・不安
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・うつ症状
・怒り
・動揺
・悲しみ
・気分転換
・パフォーマンス(スポーツ競技や人前で話すなど)
・集中力が必要な時
・慢性的な痛み
・不定愁訴(原因不明の体調不良)

一般的に「リラックスする」と言うと、横になってゴロゴロとするなどをイメージするかもしれませんが、それでは脳と体を完全にリラックスさせることはできません。

本当の意味でのリラックスは、ブレスワーク(呼吸法)などの意図的な動作を通じてもたらされるのです。

ブレスワーク(呼吸法)の練習を続けていくと、一時的な冷静さを得るだけでなく、ストレスの多い状況下でも安定した状態を維持し続けることができます。

さらに、ブレスワーク(呼吸法)の研究により報告されているメリットは以下になります。

・ストレス軽減
・より良い睡眠
・胃腸機能の改善
・運動能力の向上
・集中力の向上
・性生活の改善
・心拍数の安定

慢性的な痛みとの関連性

特に「ゆっくりとした深呼吸」は、脳内のシータ波活動を誘発します。シータ波は、瞑想、睡眠中と白昼夢などに関連する遅いサイクルの脳波です。

デルタ波:1〜3Hz
シータ波:3〜8Hz
アルファ波:8〜14Hz
ベータ波:14〜30Hz
ガンマ波:30〜64Hz

↑の記事ではリラックスしすぎないリラックス状態として「ローアルファ波」に着目していますが、「アッパーシータ波」もそのひとつです。

これらは、「慢性的な痛みの緩和」にも関連しています。

人間は痛みを経験すると、一次呼吸筋(横隔膜と肋間筋)を使用して深く呼吸するのではなく、二次呼吸筋(胸、肩、首など)を使用します。

二次呼吸筋を使用すると、呼吸が浅くなり、交感神経系が活性化され、血液のpHバランスが不安定となり炎症が生じます。

ブレスワーク(呼吸法)を使用して意図的に一次呼吸筋を使用すると、上記のプロセスを逆転させることができ、慢性的な痛みを良い状態に管理することができるのです。

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鈴木一弘
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