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子どもたちの笑い声は騒音なのか?

仕事で街の中心部へ行ったとき、駐車場に車を停めると、どこからか子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。グルリと辺りを見回すと、ビルとビルの間に保育園らしき建物があり、広いベランダに子どもたちが出て遊んでいた。天気が良く、気温も30度近くある日で、そのベランダには小さなプールが出してあり、子どもたちは水遊びを楽しんでいた。なんとものどかな光景で、子どもたちのはしゃぐ声は一服の清涼剤のようだった。

その日の夜、たまたま手にした冊子に、コロナ禍での子育て事情のようなものが載っていた。東京都心のマンションで暮らす子育て世帯が、保育園が休園になり、リモートワークを余儀なくされたものの、家で子どもの面倒を見ながらの仕事はやはり無理で、さらに追い打ちをかけるように階下の老夫婦から四六時中うるさくて気が狂いそうだと苦情がきてしまい、結局、神奈川県の戸建てに引っ越すことにしたという話だった。世知辛いなぁと思いながら読んでいたが、実際その類の話はあちこちで耳にする。

私はシングルマザーで、小学生の息子と暮らしている。仕事が遅くなることも多々あるため、放課後は民間の学童保育で預かってもらっている。とにかく学童期はいっぱい遊ばせるという方針の学童で、息子には心身ともにたくましく、のびのび育ってほしいと思う私にとってはありがたい場所。庭に秘密基地を作ったり、泥だんごを作ったり、自分たちでゲームを考えたり、昭和時代に小学生だった私にしてみれば、同じような懐かしい遊びをしている。ご近所のお年寄りたちからも、「元気でいいわね」「子どもたちの声を聞くと、元気がもらえるわ」と声をかけられる。ところが、このコロナ禍で、やはり神経質になっている方もいるようで苦情がいくつかきてしまった。要は、マスクを着けて遊んでいないとか、コロナに関わる心配がほとんどだったが、1つだけ、イマイチ納得のいかないものがあった。それは、「公園の木で、木登り遊びをさせるな」というもの。

クレームを寄こした方は、「公園の木は登るものではない。そして、落ちたらどうするんだ」とおっしゃっていたそう。公園によっては、木登り禁止と書かれているところもある。しかし、その公園にはそんな決まりはどこにもない。そして、公園で遊ぶ際は、必ず指導員が一緒にいるので、万が一、木から落ちたとしてもすぐに対応はできる。落ちたらという心配をするなら、すぐそばにあるジャングルジムだって同じだ。ジャングルジムに登るなというのか? いわゆる児童公園は、子どもたちが遊ぶための場所じゃないのだろうか? 

公園で遊ぶ子供の声がうるさいとか、学校や幼稚園から聞こえる声がうるさいという人たちがいると、以前聞いたことを思い出した。一体、子どもたちいはどこで楽しい笑い声を響かせればいいのだろうか? 子どもは遊ぶことも仕事なのに…。子どもたちの声を騒音扱いするなんてどうかしている気もするし、なんだかとても残念に思う。確かに、病気の方たちにしてみれば子どもたちの声が辛く聞こえたりするかもしれない。でも、みんながみんな病気というわけではないはず。自分たちの子どもの頃を思い出してみてほしい。子育て経験のある方は、子育てしていたときのことを思い出してみてほしい。子どもたちの笑い声を聞いて、微笑ましいと思える寛大さがどんどん薄れているような気がしてなんだか切ない。


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