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なぜ私たちはDDG(発達指向型グループ)に近づくことができたのか?
こんにちは。ポテンシャライトの得です!
いつもは「採用ノウハウ系」のブログを書いている私ですが
今回は毛色の異なる「組織開発系」のブログをお届けします。
本ブログでは、組成されたばかりだった弊社の「グループZ」がどのように「発達指向型グループ」(DDG)に近づいたのか、その軌跡を辿る(おそらく)ブログです。
発達指向型組織に関するトピックは国内ではまだ珍しく、ましてや実践的なレポートは皆無に近いので、日本初の内容と言っても過言ではないと思っています。
もし皆様が組織課題に悩み、これまで数多くの手段を試しても解決に至らず、今まさに打開策を模索しているのであれば、本ブログが新たな視点をもたらすかもしれません。
それでは早速始めましょう。
1. 発達指向型組織(DDO)とは
突然ですが、発達指向型組織(DDO)という言葉をご存知でしょうか?
■発達指向型組織とは?
発達指向型組織(Deliberately Developmental Organization 略してDDO)とは、ロバート・キーガン教授(ハーバード大学教育大学院)、リサ・ラスコウレイヒーが提唱する成人発達理論に根差した組織文化を持つ企業形態です。
高収益と超成長文化の両立を果たしている企業を研究対象とし、それらの企業が成人発達理論の原則に適合した形で組織運営がなされていたことから、その特徴を学術的な見地から捉えなおし体系化しています。
研究対象となった企業はいずれも「企業の業績か、個人の成長かという二者択一で捉える」もしくは「どちらかが優先である」という考えがなく、両社は一体のものとして捉える等の際立った特徴を備えていたことから、その必要性と本質的な意味が紐解かれています。
▼DDOの詳細は、こちらのブログをぜひご一読ください
「発達指向型組織(DDO)」を達成している組織は世界でも数社だと言われております。
それも自然発生的で、DDOを目指して達成できた企業は、「まだない」状態です。
現在ポテンシャライトでは、DDOを目指して様々な取り組みをしており、その試みの一環として
2024年10月、私が所属する「グループZ」は「発達指向型グループ(DDG)」という理想の姿を掲げてスタートしました。
当時はその壮大なビジョンに圧倒され、具体的な進むべき道が見えないこともありましたが、
わずか数ヶ月で、DDGとしての片鱗が見える段階にまで成長することができたと感じます。
本ブログではグループZの一員として、私たちが掲げたドリームメッセージ(DM)、ビジョン(V)、バリュー(V)の「DMVV」を基盤に、どのようにして理想と現実のギャップを埋めていったのかを具体的に振り返ります。
2. DMVVの構築
グループが組成されて間もない頃、私たちには「DDGを目指す」こと以外に何の指針もなかったため、まずはグループのミッション・ビジョン・バリューを策定することとしました。
そこで完成したがグループだけのDream Message(DM)、Vision(V)、Value(V)です。
この後Dream Message(DM)の一部をご紹介します。
Vision(V)、Value(V)に関しては、同じグループZの一員である鈴木くんがブログにしているのでぜひご一読ください。
2.1 Dream Message(DM)の意義
Dream Messageは壮大な夢や未来像を示すものであり、現実における目標や戦略というよりも、メンバーが理想的な状態を共有し、それを基盤に行動を起こすための羅針盤のような存在です。
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▼このメッセージには次の4つの主要テーマが含まれています
⑴ 精神的な発達
- いわゆる垂直的成長を指す。人間的な器の成長、心の成長、発達段階のこと。
- ただし、垂直的成長をするためには、水平的成長(=知識やスキルの拡張や習得に焦点を当てた成長)も非常に重要であることを前提として、「精神的な発達」という言葉を使っていることを理解する。
⑵ 人類としての進化
- 私たちHR業界が取り組む「人類としての進化」は、正直ハードルが高いと感じている。現在、地球規模の課題が発生する中で、その解決までの時間は「待ったなし」となっている。
- それを解決するためには「人類の垂直的成長」が必須であると考えており、成人発達を達成した人材が世の中に多く生まれることで、人類が直面している地球規模の課題を解決することができると考えている。そのため、「人類としての進化」という言葉を使っている。
⑶ 日本人だからこそ解決できる
- 前述した「人類としての進化」の要素となる垂直的成長や発達の話においては、日本人の特性を生かしやすいと考えている
- なぜならば、垂直的成長・成人発達には、相手の立場に立って想像する能力や、慈悲の精神が必要であり、日本人特有の「おもてなし」の精神がこの課題を解決するための大きなアドバンテージになると考えているため
- また日本が高度経済成長を他国よりも早く遂げた結果、人口減少を含む諸問題を他国よりも早く経験していることが挙げられる
- 単純な右肩上がりの経済成長を終えた中で、日本は他国では感じることができない国としての「痛み」を経験せざるを得ない
- そのため私たちが当事者である日本にいること、この課題を解決する世界で唯一の国であることを深く理解することが重要であると考えている
⑷ 地球規模の課題
- SDGsやサステナビリティという言葉がトレンドになっているが、様々な地球規模の「待ったなし」な課題が発生し、下記のような問題が起こりうる
- 「資源」「食糧」の減少による戦争の増加
- 「汚染」増加による深刻な健康被害
- 「エネルギー」の獲得コストの増加による物流の停止
⑸ 当事者意識を持つ世界の創造
- 自分達だけで解決することは難しいと思っている一方で、強い当事者意識を持ち行動し続け、その熱量が世界に伝播することが重要であると考えている
- 井の中の蛙にはならず、そういった熱量が世界に伝播していけば、地球規模の課題は解決できると考えている
3. DDG(発達指向型グループ)に近づくことができた理由
壮大なDream Message(DM)が、全員の方向性を統一する指針となり
「日本人だからこそ解決できる地球規模の課題」を見据えた未来像が、メンバーの行動や意思決定に一貫性をもたらしました。
またVisionとValueの存在がモチベーションの創出と行動レベルの共通認識を生み出したと感じます。
Valueに則って、問題が発生するたびに課題解決型で細かい施策を打ち続け、停滞や慣れを防ぐようにしました。
全員が変化を恐れず新たな取り組みに挑戦し、個人の進化を援助する基盤を構築しました。
さて、ここからはDMVVの策定以外にも、絶対に外せなかったと感じている要素を書き記していきます!
3.1 SOUNDワークによる文脈共創と視座共進化の重要性
DMVV以外にも、グループZがDDGに近づいた大きな要因が、「文脈共創」と「視座共進化」のプロセスでした。
🤔 文脈「共創」?文脈「共有」ではなく?
🤨 視座の「共進化」?なんじゃそりゃ?
↑こうなった方はいらっしゃいますか?
ちなみに私は当初なりました。説明します。
「文脈共創」
・組織や個人が成長するために、互いに共有された「文脈」を創り出し、その中で個人と組織が協働して発展を目指す概念
・この「文脈」とは、特に組織内で共有される価値観、目的、期待、そして成長に必要な環境や土壌のことを表す
「視座共進化」
・個人や組織がそれぞれの視点や価値観を進化させる過程で、互いに影響を与え合いながら共に成長していくプロセスのこと
さらっと説明しましたが、一つ一つ奥深い事項なので、もし興味がありましたら弊社代表のブログを参照ください。
この「文脈共創」と「視座共進化」のプロセスは、例えば
共同経営者同士が企業の方向性やミッション・ビジョン・バリューを構築する際に長時間かけて議論・対話をする中で自然発生的に形成されるようなもので
通常相当な時間的・体力的コストを伴いますが
私たちが取り入れた「SOUNDワーク」は短時間でそれらを形成するのに役立ちました。
当時の状況とワークの進行方法はこちらのブログで紹介しています。
「文脈共創」の最も大きな価値は、「当事者意識」を生み出す点にあります。
ワークの中で様々なイシューに対する意見や価値観を共有し合い、グループの方向性を定めていく中で、全員が「自分がこのプロセスに深く関わっている」という実感と、各々の視野が広がり視座が少しずつ進化していくのを感じました。
自分たちで作り上げた文脈やストーリーには強い手触り感があり、他者から与えられたものと比べると、共感度やモチベーションが格段に高まったと思います。
3.2 全員が同じ学習サイクルを共有
発達指向型グループ(DDG)を実現するために、個人の「水平的成長」と「垂直的成長」双方が非常に重要なのですが
グループ間でそれらを促進するためにchat GPTのオリジナルプロンプトを組んで日次の振り返りを行っていました。
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《補足説明》
・「水平的成長」とは
知識やスキルの拡張や習得に焦点を当てた成長。
新しい知識や技術を学ぶこと。業務に直接役立つスキルの向上(例: プログラミングの習得、新しいマーケティングツールの使い方など)。
多くの場合、トレーニングや資格取得、経験の積み重ねを通じて獲得できる。
・「垂直的成長」とは
視座や考え方そのものを進化させることに焦点を当てた成長。
知識の習得ではなく、「どう考えるか」「どう物事を捉えるか」の質的な変化。個人の内面的な成長や、自分や他者、世界をより深く理解する力の向上。経験や深い内省、他者との対話を通じて進化すると言われている。
水平的成長・垂直的成長プロンプトを活用した学習サイクルは、単なる日常的な振り返りではなく、実際の成長を支える大きな要因となりました。
また、振り返り内容を定期的に共有し合うことで、グループ全体のレバレッジ効果(少ない努力で大きな影響を生むこと)が生まれました。
個々の学びが集約され、全体の知見が深まることで、結果としてグループ全体の進化を加速させる仕組みが形成されました。
ちなみに主に垂直的成長・水平的成長に関しても山根がアウトプットしております。お時間ある際に覗いてみてください。
3.3 スマホの音声認識とChatGPTを活用した振り返りと記録
日々の振り返りや自己整理を効果的に行うために、スマホの音声認識機能を活用するようにしました。この機能は簡便性と実用性を兼ね備えており、メンバー全員が手軽に利用できることから、振り返りの高い継続率をもたらしたと思います。
通常なら15分〜20分かかってしまう作業も、音声認識であれば最長で10分、短ければ5分程度と圧倒的効率的でした。
また帰宅時間や就寝前といった隙間時間を有効活用できる点で非常に効果的でした。
3.4 システム思考の勉強会とその導入
システム思考は、メンバーが視座を上げ、発達段階を進めるうえで極めて重要な要素となりました。
システム思考とは
物事の全体像を捉え、さまざまな要素とのつながりを把握したうえで、最も効果的な解決法へ向かうアプローチのこと
グループZでは数週に1度「システム思考勉強会」を実施し「自分で決めたテーマへシステム思考的アプローチを思考する試みを行い、システム思考的なものの捉え方を普段の生活へ取り入れるための訓練をしておりました。
システム思考を継続学習することにより、メンバーは物事を大局的に把握する視点を得ただけでなく、合理的な視座に加えて、情理的で垂直的な視座も合わせて獲得できました。
「システム思考」に関してはこちら👇のブログが参考になると思います!
3.5 インテグラル理論を学んだこと
この理論の理解を深めることで、メンバーそれぞれが自身の得意な象限に偏ることなく、広い視野で議論や協働に臨むことが可能になったと感じております。
インテグラル理論とは
- アメリカの現代思想家ケン・ウイルバーによって提唱された統合的・包括的なメタ理論(思想)であり、人間・組織・社会・世界を統合的、包括的にとらえるためのフレームワーク、地図であるといわれている
- この理論の中心には「4象限モデル」があり、これは現象を4つの視点(内面的個人、行動的個人、文化的集合、制度的集合)で捉える考え方である
👇インテグラル理論の4象限モデル
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例えば、日常の会話やSOUNDワークにおいて議論が発生すると、自然と自分が優位に立てる象限や分野で話を進めようとする傾向があります。
あるメンバーは「人の思いや思考」について話し、別のメンバーは「組織の制度や仕組み」などの外面的な要素にフォーカスするため、議論が平行線をたどることも少なくありません。
しかし、インテグラル理論を通じて事象を「内面・外面」「個人・集団」という4つの象限すべてが重要であるという共通認識が芽生え、それらを統合的に観察することで網羅的に事象を捉えることができるようになりました。
各メンバーが自分の視点の偏りを自覚し、相手の視点を理解しようとする努力をするようになった結果、
議論が深まり、分かり合えなさが解消され、相互理解の精度も向上しました。
特に「自分の得意分野に議論を持ち込む」という無意識的な行動が抑制され、対話がより建設的な方向へ進む土壌が整ったのは大きかったです。
そろそろみなさまもお腹一杯かと思いますが
ご紹介した「インテグラル理論」も現代の組織課題においてホットな理論であり、
私自身、物事の捉え方が大きく変わったきっかけになったものなので、下記ブログをご紹介させてください👇
3.6 売り上げ管理・コスト管理
グループのコスト意識を高め、個々人がさらに当事者意識を高めるために週次のミーティングで行った「売り上げ管理・コスト管理」の試みも功を奏しました。
一見企業ならば当たり前の試みにも見えますが、自分が関わったプロジェクトの売り上げ、リソース率を詳細に算出しチーム間で共有することで、日々の業務における具体的な目標が一層鮮明になりました。
この取り組みは、ただ数字を管理するだけでなく、全員が経営視点を持ち、グループの運営状況を主体的に考えるきっかけとなりました。
一方で、この取り組みがDDGの実現に直接結びついているかどうかについては明確な結論は出ていません。しかし、視座の転換という効果をもたらしたことは確かで、この取り組みが間接的にDDGの目標達成をサポートしていると私たちは考えています。
3.7 週次のミーティング
週次ミーティングの最大の効果は、振り返りの重要性を再認識し、これを習慣化できたことです。この振り返りは、掲げたDMVV(ドリームメッセージ、ビジョン、バリュー)に対する進捗確認にとどまらず、水平的・垂直的な学びや、グループメンバーそれぞれの変容についても深く掘り下げる場として機能しました。これにより、メンバー全員が自己の成長やグループの進化を実感しながら行動を振り返ることが可能になりました。
さらに、このミーティング内で、特定の課題や目標に向けたディスカッションを通じて、メンバーの視点が劇的に広がり、個々の認識が次のレベルに進化する瞬間が何度も見られました。
いわゆる「U理論」における「プレゼンシング(過去の経験や現在の状況を基盤に、未来を予見しながら新たな可能性を現実化する状態)」に近い現象だったと理解しています。
幾度となく起こったこの超越的な経験「パラダイムの超越」は、グループZがDDG(発達指向型グループ)に近づく重要な要素だったと確信しています。こちらに関しては詳細を後述します。
3.8 パラダイムの超越
グループZにおける「パラダイムの超越」は、これまでの努力の積み重ねによって生まれた大きな成果の一つです。
SOUNDワークやDMVVの共有をはじめとした一連のアクションが一体となり、その結果としてこの現象が起こり、グループ全体に変革と発達を促しました。
特に、個別のメンバー間で起こったパラダイムの超越は、グループZを語る上で欠かせない事象として位置づけられます。これらの関係性の変化は、単なる個人間の対話を超えて、グループ全体の新しい視座を生み出しました。
重要なのは、こうしたパラダイムの超越が偶然ではなく、事前に整備された文脈の上に築かれたものであるということです。DMVVの明確化、課題解決型施策の短期間実行、SOUNDワークを通じた文脈共創といった8つ以上の要素が複雑に絡み合い、パラダイムの超越が発生する土台を形成していました。
この文脈がなければ、超越は実現できなかったでしょう。この状態を全員が体感し、それを共有できたことは極めて貴重な体験でした。
3.9 凡事徹底
DMVV(ドリームメッセージ、ビジョン、バリュー)という壮大な目標を掲げる中で、それを支える日常の基本的な行動の徹底がグループ全体の課題になった時期がありました。
そこで例えば勤怠時間の確認や全社員向けの提出物の期限など、小さなタスクを確実に遂行することで、グループの基盤を固める重要性が共有されていました。どれほど大きな目標があっても、足元が揺らいでは前進する力を失います。そのため、全員が基本的な行動を継続し、互いに発信し合いながら実行する文化が形成されました。
3.10 リーダーシフト施策
本来固定されていた「リーダー」としての役割を、週次でシャッフルし1メンバークラスも含めた全員が体験してみる、という施策です。
この施策に対するメンバー評価は非常に高く、全員が「やって良かった」と感じていました。
リーダーを経験することで得られる学びや成長の機会はもちろん重要ですが、最大の効能として挙げられるのは「視座の転換」です。従来、リーダーという存在を「客体」として捉える傾向があったメンバーたちが、自らリーダーとしての立場を経験することで、「主体」としてのリーダーシップを深く理解することができました。
リーダーを明確に体験することで、他者の立場や視点を実感し、それを自らの行動や判断に反映させる力が育まれました。
特に、DDGの核心とも言える「ホーム」の構築に大きく寄与した点が注目されます。
3.11 新しいメンバーの参画
12月に新しいメンバーが参画したことも、グループZのシステムに重要な変化をもたらしたと思います。
(ここでは仮に新メンバーを「Aさん」と呼称させていただきます。)
新しいメンバーの参画は、組織のシステムに大きな変化を生じさせるものです。
特に素晴らしかったのは、Aさんの参画後に当人を中心として発生したパラダイムの超越です。「Aさんがいなければ、ZはDDGに近づくことができなかった」と言っても過言ではありません。
この成功の背景には、事前にDMVVの明確化が行われ、リーダーシフトによる視座の転換が進み、グループへの深い愛情が育まれていたことが挙げられます。
下地が整っていたため、参画後もネガティブな影響を最小限に抑えつつ、ポジティブな変化を最大化できたのではと振り返っています。
最後に
いかがだったでしょうか?
(おそらく)日本ではまだどの組織も意識的に辿り着いたことがない
「発達指向型組織」(DDO)へ
私たちポテンシャライトの「グループZ」7名がどのようにして接近したのかを要素毎に説明しました。
現在組織課題を抱えており、どうしても解決に至らず悩んでいる方々のヒントになればとても嬉しく思います。
弊社では発達指向型組織(DDO)はじめとした様々な組織課題の打ち手のヒントとなる情報を発信しています。
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